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1000億円企業の経営者から言われたアドバイスは、「組織図を見よ」


「Build on your strength.(強みの上に築け)」


マネジメントの父と呼ばれる、ピーター・ドラッカー
©DIAMOND,Inc. 

マネジメントの父、ピーター・ドラッカーの思想の大前提ともいえる、名言の1つですね。人が幸せになるために成果を上げるには、個々の強みを活かさなければならない。弱みからは何も生まれないから、という。

そんなドラッカーのマネジメント理論を、少しずつWithGreenで実践できるようになったのは、起業して5年ほど経ってからでした。

スタートアップでは珍しくないでしょうが、創業から数年間は、売上に直接的に関係しないところに投資する余裕はないんです。経理や総務から、店長やパートナーの採用や育成などの人事も、私と副社長である弟が兼務してなんとかする、といった具合でした。

展開する店舗やパートナーも増えてくると次第に回らなくなり、チームや体制づくりについて切実に考えるようになりました。

今日は、兄弟のWithGreenからチームのWithGreenへと、組織として強くなるためにした「人の配置」について。私も含め、中小企業の経営者は悩みが尽きない「人」について、考えます。

創業者同士でのミーティングの様子

1000億円企業の経営者から言われた「まず組織図を見る」

ある程度大きな規模の企業や団体になると、独自の「組織図」がありますよね。

あの図って実は、奥深いんです。起業して数年間は私も、その必要性にまったくピンときていませんでしたが、1000億円企業の経営者から「中小企業でも、まず組織図を見る」と助言をもらい、その重要さを理解するようになりました。

良い組織図をつくり活用すれば、会社として必要な役割が明確になり、その後の成長が期待できます。

組織図とは、自分たちの存在意義を達成するための、具体的な体制を表すもの。現状の組織として、どういう機能や役割が必要で、指示系統はどうなっているのかを整理し、それぞれの役割を担う社員を配置していきました。

その作業の過程で、チームを構造化することになります。内部構造を具体的に可視化することで、理想や目的(パーパス)に対して足りない機能や役割も浮き彫りにもなります。

私や弟が兼務でしているものの、得意ではないゆえにパフォーマンスを出せていないところも一目瞭然でした。自分たちのウィークポイントとして明快になった1つが、「ヒトのマネジメント領域」でした。

具体的には、「ヒト・モノ・カネ」における、カネ=資金面を私が担っていて、弟が「モノ」=商品開発を担っていました。ヒトは会社の最も大切なところですが、パートナーの育成を促したり、パートナーの強みを活かして結果を出すことができるメンバーがなかなかいなかったんです。

10店舗を超えると必要な「本部機能」と、30店舗を目指すための「エリアマネージャー」

多店舗展開のノウハウとして、「1と3のつく店舗で、大きな壁が立ちはだかる」といわれています。1店舗、2店舗なら創業者だけでも目が行き届いていたのが、3店舗めでは立ち行かなくなり、10店舗めにはアルバイトパートナーも含めるとも200人以上になるため、「本部」と呼ばれる管理部門が必要になります。

WithGreenでは5店舗を超えてきた段階で、まずは簡易的ながらも本部機能をつくりました。

さらに30店舗以上になると、複数の店舗を統括する中間管理職の立場の人に入ってもらわないと、立ち行かなくなります。そこで役職として要になってくるのが、担当地域ごとに管理するエリアマネージャー(中間管理職)の存在です。

WithGreenは、創業時から国内に50店舗~100店舗を展開すると見据えていましたから、エリアマネージャーという役職をつくることは必須でした。自分たちにはノウハウもなかったので、スターバックスで経験があるメンバーに参画してもらい、アドバイスをもらいながら組織と役割を作っていきました。

本音を言うと、経営者としては、本部機能やエリアマネージャーという役割づくりは、かなり後回しになりがちです。どちらも間接部門なので、直接的な稼ぎは出さないところですからね。

体制が整ったことで50店舗までの道は見えた

でも、全国20店舗まで展開するいま(23年7月時点)振り返ると、早くからこの体制づくりに取り組んでおいてよかった。

たとえば、店で水漏れが起きたとか破損があった、アルバイト同士で揉めごとが起きたなど、現場の店舗では日々いろんなことが起こります。

そんなイレギュラーな場面に直面したとき、いきなり現場代表の副社長には相談しにくい。いつもなんだか忙しそうだし。

ですが、エリアマネージャーというポジションができて、エリアマネージャーに相談し、指示を仰げることは店舗で働くパートナーの安全安心にかかわります。それこそが、組織の厚みや強み、ロイヤリティの向上に今後はつながっていくとも思っています。

同時に、エリアマネージャーを育てる人が必要です。ポジションがあって任命されても、何をするべきか初めてだとわからないのが当たり前ですから。そこで今年からは、エリアマネージャーたちを育成・教育する、セールスマネージャー(店舗営業部長)にも参画してもらいました。

この運営体制が、チームワークも含めてどんどんよくなっていると感じています。WithGreenがこのまま30店舗、50店舗と増えても怖くありません。

得意に振り切りたいけど実情は

と、うまくいっているマネジメントの例を紹介しましたが、うまくいかないことのほうもたくさん経験しています。

人は得意なことをすると結果が出る、とは実感を込めてその通りで、ドラッカーの理論が言い得ているのは間違いありません。とはいえ、マネジメントとは、人と人がかかわること。会社のリソースは有限ですから、不得意なことはやらなくていいよと採用するのは、現実的ではありません。

むしろ、「好きや得意なことだけをしていいよ」という組織のほうが珍しいでしょう。

私の場合なら、小さなミスが命取りとなる経理や事務業務が不得意ながら、創業から2年間は、社員の給与計算や入金、社会保険や年末調整などをやっていました。社長が動けば人件費は抑えられますからね。仕事の仕方を自分の得意な方向に寄せて、工夫しながらやっていました。

とはいえ、そもそもの資質として苦手なことを精一杯がんばってやっていますから、年末調整時期にめちゃくちゃ焦る、ということはありました(笑)。

弟の場合は現在も、メニュー開発という得意領域のトップであると同時に、経験を積んだことで慣れてはきた様子の食品衛生管理、地方出店の際に必要となる物流のしくみづくりも一手に引き受けてくれています。

得意とは本人にとって楽にできること

自身の「得意・不得意」を、まず本人がどこまで緻密に自己理解できているのかという点もあるでしょう。得意とは、本人にとって当たり前で楽にできることですから、自分一人で気づくのは難しい。他人との比較や、仲間からのフィードバックが必要になります。

あるいは、自分で不得意だと自覚できてはいても、上長や社長からの期待されたら、「その期待に応えてがんばりたい」という、自然な感情もあるでしょう。

そうなると、自分の得手不得手からは離れてしまいます。

個々の得意が発揮され合う組織を目指す

でもやっぱり。1億円以上を失った、ディナー業態の大失敗。「得意を自覚すること」の難しさ|では、サービスやブランドとしての得意領域に注力することの重要性を書きましたが、人の得意不得意も大事にしなければならないと感じています。

もちろん、求められ期待されることで成功体験を積み重ねて、得意に押し上げていくことは可能です。一方で、ほんとうの高みを目指すならば、できる人ができることに集中し、できないことは組織として補完するチームがベストだと日々実感しています。

弟の例でいうと、商品開発のトップとして注力してもらったら(2021年~)、季節限定のサラダボウルのクオリティが上がって売上げが急激に伸びました。さらに、キユーピーと期間限定でサラダボウルのメニュー開発企画が決まるなど、はっきりと結果が出ています。

キユーピーとのコラボの季節限定メニュー:
スパイシーチリマヨチキンとパクチーのサラダ

ドラッカーが定義するマネジメントとは、人の強みを活かし、組織の成果につなげること。

それこそが、人の幸せにつながると説いています。

最高のパフォーマンスを出し続ける企業として、お客さんも農家さんも働くパートナーも幸せになる。その輪を広げていくために、きちんと「組織図」を作り、「強みの上に築く」を今後も大切にしていくつもりです。

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編集協力/コルクラボギルド
(文・平山ゆりの、編集・頼母木俊輔)

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