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人が網目のように繋がり、仕組みは弾力的に変化できる、そんなシナジーが必要

今僕は障がい者支援の分野でお仕事をしていますが、10年前は高齢者福祉、つまり介護保険分野で仕事をしていました。そして介護の世界に入る前、20年ほど前は「子どもの居場所づくり」のボランティアをしていました。福祉業界を転々と渡り歩いてきたわけなんですが、元々僕自身あまり自分の職業自体のこだわりがなく、福祉の世界に身を置く動機は「困っている人の役に立ちたい」というひどく陳腐な理由なので、自分が支える対象の方がどなたであってもそこに対しての凝りは持ち合わせておりません。
福祉業界に入って20年が経とうとしている今でもそこのスタンス自体はあまり変わっていません。
 
 
 
だからなのかどうか分かりませんが、今自分が運営している就労移行支援以外に「住居支援」を始めてみたり、「生活訓練」を始めたり、「婚活支援」をやろうとしたり、落ち着きなくちょこちょこといろんな事をしています。 
 
 
それでも当たり前なんですが僕が手を伸ばせるものって今は全然足りていなくって、物理的にも分野的にも能力的にも及ばないことばかりなので、障害当事者支援という分野にこだわらず、いろんな方と繋がりながらメインの仕事をしつつも、繋がっているお陰で少し違う景色も見させてもらうことが多くなりました。
 
 
 
今更ここで改めて述べるまでもなく対人援助の現場にいらっしゃる方はご存知のように、地域に目をやると制度にまったく乗ることが出来ず、でも確実に生きづらさや困難を抱えていて、どこにもかからず苦しんでいる方や、生きづらさや困難さがあれどもそれが社会の中で認知されず、苦しんでいる方が沢山います。
ちょっと皮肉めいているかも知れませんが、僕らは事業所を構えて訪ねてこられる利用者さんをお受けして支援を行っているわけだけど、本当に困っている人は、そんな支援があることすら知らなかったり、行くことが出来ない事情を持たれていたりするんです。
一番支えないといけない方が支援に繋がっていない、という状況は珍しくありません。
 
 
 
僕らは専門は障害者支援ですが、それ以前に大きな枠で言えば対人援助職です。人を支援する者です。さらにそれよりも大前提にあるのは同じ地域の「市民」です。
誇大解釈かもしれませんが、障害者支援者だから障害当事者しか支援してはいけないことはないですし、同じ「人」を支援することが生業なら、自分達が持っている引き出しから転用できるものは多分結構あって、それを同じ地域の市民として力を用いるのは僕の中では全く道理から外れないので、自分のフィールドが疎かにならない中でできるだけ積極的に参加しようと思うようになりました。 
もう少し言うと、支援が必要な人を「待って」るんじゃなく、自分から動いていかなきゃ届かない、ということです。
 
 
 
  
制度や仕組みというのは体系的に整備されていて、国や自治体レベルになれば、セーフティネットとして最大公約数的なカバーという意味ではとても優れたものだと思っているんですが、それだけよく練られたシステムは、構造上どうしても固定化されやすく、タイムリーな弾力性にかけてしまうのが欠点です。
あらゆる課題を制度とか既存の仕組みに乗せるのは難しい。
 
 
だからこそ、分野や距離を横断して、いろんな人や社会資源が網目のように繋がりながら、弾力的にその制度の隙間を埋めていくことが大事なんだと思うんですが、これはこれでまだまだ課題はあります。
弾力性があると同時に流動的でまだまだ粗い網目で、網羅をするには少しまだ手が足りないというこれもある種欠点です。
 

じゃあそれらをうまくかけ合わせることが出来るのか?というのが、実はどの分野の福祉にとっても詰まるところの大きな課題だと思います。
 
 
僕ら障がい者支援の分野だって、突き詰めたときには制度の狭間の問題や、繋がる社会資源の不足、それによって妥協案的な支援しか出来ない状況が必ず生まれてきます。
いち事業所で完結できる支援なんて多分なくて、当然ひとつの分野で完結できる支援もそうそうありません。
ちょっと安易な表現ですが、地域で支援ができる環境があるに越したことはないわけですから、みんな同じ課題を本当は背負っているんじゃないかと思うんです。
 
 
人や社会資源同士が網目のように繋がり(形式的なものじゃなく実態的に)、弾力的に変化できる仕組みをある程度自分達で生み出せる、そんなシナジーを生み出していかなきゃ、特に毎日のようにルールが書き換わり、ほんの少し前までの正解が不正解になるようなこんな時代には、どんどん生きづらさを抱える人を取りこぼしていくような気がしてなりません。
 
 
何が出来るのか、っていう具体的な結論はない話なんですが、多分あちこち足掻いていかないと見えないんだろうな、と思い、また明日からも足掻きながら模索していこうと思います、いろんな方と繋がりながら。

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