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小説・「塔とパイン」

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作:よわ🔎 概要:45歳、片田舎の洋菓子店のパティシエが、紆余曲折、海を渡ってドイツでバームクーヘンを焼き始めた。 ※毎週日曜日更新(予定) ※作品は全てフィクションです。著…
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#テレビ

小説・「塔とパイン」 #24

小説・「塔とパイン」 #24

18歳で製菓学校に通うため上京した僕。当時は20世紀末。なんとなく閉塞感がありながらも、周囲の雰囲気を噛みしめながら過ごしていたころだ。

上京して、やっぱりというかなんというか「東京」に圧倒された。見るものすべて、今まで自分が経験したことのない世界がそこに広がっていた。

「うわぁ~」「すげー」

喜びとも、驚きともつかない一言が、口の端から漏れた。東京って言ったら、テレビの中の世界がそうなのか

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小説・「塔とパイン」 #19

小説・「塔とパイン」 #19

帰宅すると夕餉の時間が始まる。とはいえ1人で住んでいるから、仕度は自分でやることになる。自炊はできないので、スーパーで買ってきた、パンやサラダを食べ、チーズをかじる。

ドイツだからビールを飲めばいいだろうけれど、あいにくお酒に弱いし、ビールの味も好きじゃないから、ほとんど飲まない。ワインなら味はまだマシと感じる。

部屋の照明が弱いので、IKEAで購入したデスクライトで手元を照らしながら、ぼーっ

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