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vol.3若手向け越境学習~社会課題解決PBLにおける学びとは~


株式会社ウィル・シードは、大手企業様に対して研修プログラム等を通じた学習体験を提供し、人材育成・グローバル人材育成を支援しています。研修のタイプは座学/体験型、対面/オンライン型、など多様にありますが、今回は社会課題解決PBL(Project-Based-Learning)と呼ばれる研修の概要と、その場で得られる学びについてお伝えします。

vo.2の記事はこちらをご覧ください。

5. なぜ、その「学び」が立ち現れるのか?


 まず、協働・チーム運営に関する学びが生じるのは、PBLの特徴として「短期間で/新しいメンバーと/普段接しないテーマで成果を出さなければならない状況」があるからだと考えられます。

短期間で成果を出さなければならない状況であるからこそ、スピーディな個々の実践が生まれるといえます。短期間での成果が求められているからこそ、途中でとどまっている余裕もなく、前に前に進めようとする動きができる状況がありました。

前述したとおり、3か月で6回の集まりと各チームの活動の中で1つの提案をしなければなりません。期間中はチームの意見がまとまったら、すぐにアンケートを取る、担当者に聞いてみるというアクティブな実践が見受けられました。

加えて、新しいメンバー/普段接しないテーマだからこそ、流動的な個々の実践が生まれるといえます。

終了時の参加者の声の中に「過去の失敗の経験からグループワークに苦手意識があったが、少し払拭された。メンバーに恵まれたことや、テーマに対して知識レベルの差があまり無かったためだと思った」とありました。

図:PBLにおける学びと要因/成果(再掲)

今回のPBLでは、普段の領域とは異なるテーマを推進していくため、誰が一番知識を持っている・経験を持っている、ということがなく、皆がフラットな存在として関わることのできる土台がありました。そのようなフラットな存在―立場や役割が規定されていない状態―からはじまるからこそ、得意・不得意などのメンバーの特性を見極め役割分担を行う必要がでてきたり、率先してチームを引っ張る動きや雰囲気作りを工夫しようとするリーダーシップが生じます。実際、参加者の中には今回自分がチームを率先して引っ張ろうと意識して行動する人がいたり、「いいところは積極的にほめる」ことを意識してチームの雰囲気づくりに一役かっていた人もいました。

このように、短期的に成果を出す土台の上で、流動的な実践を生む環境―個々人の実践に選択の余地がある環境ーが、参加者の行動や思考を促し、協働・チーム活動に関する学びを育む土台となっていたといえます。

 なお、今回の参加者は普段の業務でもチーム・プロジェクト単位で動いている方たちでした。そのような参加者であっても協働・チーム運営に関する学びが多かったのは、なぜでしょうか。

考えられる要因としては、今回のプログラムでは課題設定、解決策の立案を自分たちで考え判断し進めなければならない状況があったことにあるといえます。普段、課題設定はプロジェクトマネジャーなどの上流で行われ、解決策も道筋がついていることが多いです。今回は、ゴール/問題/(無数にある)解決策を自分たちが模索しながら「解」として定めていく必要がありました。このような課題解決型であるからこそ、普段よりもチーム内での対話や動きながら考える、という実践が多く生じるため、それが新たな学びとなっていたといえます。

 次に、2つめの仕事におけるマインドに変化が生じた要因についてです。

大きな要素として、「まったく異なる論理で動いている組織・個人に触れる環境」であったためということができます。前述したように、NPO団体や職員の持っている行動力や仕事への取り組み姿勢に感銘をうけている人が多く見受けられました。NPO団体が取り組んでいる課題は、複雑であるからこそ、組織的にもとにかくアクションを起こして事業を推し進めていくという特徴があります。

今回はNPO職員に対して提案することはもちろんのこと、じっくりと話し、協働関係を築ける状況にあったため、NPO職員たちの想いののった深い対話が可能であり、状況をヒアリングする中で実践のスピード感も感じやすかったと言えます。

実際、スピード感に関しては、あるチームでNPOの担当者含めての話し合いにて創出したアイデアを、その次のセッションにおいて既にNPO職員が実践しているという場面がありました。NPO職員の方は「もうやってみました!」と明るく共有しており、参加者がそのスピード感に驚きを隠せない反応をしている、という場面がありました。

また、参加者がNPO団体の「スピード感」「行動力」「決断力」に刺激を受けていた、ということは、別の切り口で考察するならば、NPO団体の、未来を見据えて次々とチャレンジしていく姿勢が、今の変化の時代の中で大事になってくるということを参加者が感じ取っていたからだといえます。そうでなければ、「今の自分には必要ない」「NPOとうちの組織は違う」といった形で、刺激になっても受け入れることはないでしょう。参加者は20-30代がメインであり、キャリアを考えていく時期でもあるため、今後の働き方を考える上でよい刺激にもなっていたのではないでしょうか。

このように普段は接点のないNPO団体との協働―異なる仕事に対する価値観、ひいては人生観に触れる経験―が新たな仕事観を構築していくきっかけになっていたといえます。

ここまで、PBLにおける学びと学びの生じる要因をを詳しくみてきました。次の記事では、今回の学びがどのように現業に意味あるものになっているのか、本プロジェクトの成果ともいえる部分をみていきます。


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