みほに屋

最近鍋にはまっています。

みほに屋

最近鍋にはまっています。

最近の記事

時雨ASMR

バラバラと大きな音が響いた。 引っ越してから気づいたけれど、この家は雨音が大きく聞こえる。 夜中に強い雨が降ると、暗い部屋にドラムロールのように雨音が鳴り響いて、昔のパニック映画のワンシーンのようだった。 引っ越して一月が過ぎ、最近は雨上がりによく鈴虫が鳴いている。リーリーとよく響いて聴き心地がいい。 季節の移り変わりを、音で感じる暮らし。そう考えたら、大きな雨音も少しは趣深くなるだろうか。 虫の音がピタリと静かになった。

    • おかたづけ

      断捨離をしようとタンスから服を引っ張り出した。 あまり服は買わないけれど、捨てもしないので少しずつ溜まっていった。 型崩れしていないけれど、ほとんど着ていないものがあったり、お気に入りだけどすっかり草臥れたものもある。 処分することを考えると少し胸が痛んで、寝ている間にすっかり新品のものになってないかなと逃避してしまう。 考えていても減るものではないので、今後着るか分からないものは悩まず袋に入れていくことにした。 断捨離が済んで、タンスの中もクローゼットもスッキリとした。

      • 侵入者

        久しぶりに風邪をひいた。前日からやけに肩が凝ると思っていたら、ひき始めだったらしい。発作のように出てくる咳で、夜中に目が覚める悪循環がたまらない。 ここ数年はほとんど体調を崩すことがなかったので、風邪のときはどうしたら良いのかをすっかり忘れてしまってした。 病院へ行くと、お医者さんはウイルスを見ることができるのではないかというくらい、力強い目で診察をしてくれた。 帰ってすぐ薬を飲んだ。心なしか体が楽になった気がする。きっと熱はすぐに下がるだろう。ほっとした気持ちで横になっ

        • 金盞花

          秋頃から育てていた花が次々と咲いた。 橙色が緑に映えて、ベランダが一気に彩り豊かになった。 せっかく咲いた花を、何かの形に残したいと思って調べてみると、ハーブティーにもなることがわかった。 ならばと早速、花を積んで飲んでみることにした。 ボールに水を張って優しく虫や土埃を落とす。ポットに入れる前に、香りを出すために花を揉み込む。 お湯を入れて5分ほど蒸らせば、ハーブティーの完成。 コップに注ぐと、優しい香りがした。口にしてみるとなんとなく甘みがあって飲みやすく、美味しか

          こねこね

          以前から気になっていた、パン作りを始めた。 小麦粉を捏ねたり、発酵させて生地を膨らませる工程が、時間がかかるけれど楽しそうだったから。 いざ作ってみると、思った以上に力作業だった。 捏ねる作業も、テレビなどで見ていると粘土のようで楽しそうだけど、生地がまとまるまで辛抱強さが必要だった。 けれど、発酵して大きくなった生地や、焼き上がってこんがりふっくらとした姿はとても可愛らしい。 パンが焼き上がった香りが部屋中に広がり、パン屋さんのような空気の香りになった。 食欲をそそる幸

          小さなお年玉

          お年玉年賀はがきの当選番号が発表されたとニュースでやっていた。 面白そうなので予備のハガキと、もらった年賀状を確認してみることにした。 1枚だけ、切手シートが当選していた。 当たったのは、両親からもらった年賀状だった。 家族、友人くらいしか年賀状のやりとりをしていないので、確率もそんなに無い。 そんな中の当たりなので、ちょっとラッキーな気持ちになった。 切手シートがどんなものか調べてみると、新年らしい縁起物のデザインだった。 もし使うなら何に使おう。書類提出などで使ってしまう

          小さなお年玉

          買い物納め

          牛乳を切らしてしまったので、散歩ついでにスーパーへ行くことにした。 比較的人が少ない時間なのに、カゴいっぱいに買い物をする人で溢れている。 みんな、年末年始の買い物をしているようだった。 スーパーも売り納めなのか、割引商品が目に付いた。 割引になっているものを見つけるたび、つい足を止めてしまう。 お買い得商品に足を止めながら、なんとなくお酒のコーナーへ足を運んだ。 大容量ワインが破格の値段で売られていたので、迷わずカゴに入れた。 年末年始は楽しく飲めそうだ。 目当ての牛乳

          買い物納め

          魚石

          日を追うごとに冷たくなっていく風に、そろそろ釣り納めにしよう。 小春日和の週末、川へと車を走らせた。 まるで貸し切りみたいに人がいなかった。紅葉を眺めながら竿を出す。 ここ数日の中では温かい日だけど、水辺はひんやりする。 何度か粘っていたら、一度だけ当たりが来た。 グッと引っ張られる感覚にゆっくりリールを巻いていく。そろそろタモ網を出そうというタイミングで魚は逃げてしまった。 一瞬見えた姿は白く綺麗な魚だった。 気がつくと夕暮れ。 川も山も赤く染まり、肌寒さも厳しくなって

          オータムフェア

          近くの自然公園を散歩すると、そこかしこにどんぐりが落ちていた。 帽子をかぶっているどんぐりを見つけると、つい拾ってしまう。 指でツンツンつついて遊んだ。 しばらく歩いてみると、黄色い葉っぱをみつけた。 虫食いの穴から空を覗いた。 赤い実を見つけた。コロコロと手の中で転がして遊んだ。 味わいのある渋い色味の枯れ葉も見つけた。 よく知らない茶色い木の実も見つけた。 これまで見つけたものを全部、切り株に乗せてみる。 開店準備が整った。

          オータムフェア

          向日葵

          春の終わり頃にミニひまわりを植えた。袋に10粒ほど入っていた種を全部植えて、芽が出たのは半分ほど。 どれも最初は順調に育ち、夏に花を咲かせてくれるのを楽しみにしていた。 けれど、虫にやられてしまい半分が枯れてしまった。 虫は退治したものの、栄養を奪われたひまわりたちはしょんぼりと項垂れていた。なるべく日当たりの良い場所に場所を移動させたり、土を足してみたりと試行錯誤して、彼らは元気を取り戻していった。 夏には小さな蕾ができて、いよいよ蕾から黄色い花びらが見えてきた。 しかし

          避暑

          渓流は木々が日差しを遮り、水も冷んやりとしていて夏はさわやかに釣りを楽しめる。 今回は雨の後の水量も濁りもちょうど良く、おかげでいつもより魚と遊ぶことができた。 退渓すると、強い日差しがアスファルトに照り返し、先程までの涼しさが嘘のように暑かった。 茹だるような暑さに麦茶を飲みながら車で帰り道を走る。 クーラーがあまり効かないので窓を全開にしてみるも、熱風が体力を奪っていった。 これはいけない。どうしたものかと外を見ていたら、コンビニが目に飛び込んだ。 そうだ、アイスを食

          風物詩

          晩酌をしていたら、ドォンと大きな音がした。 驚いて外を見ると、遠くの空に花火が上がっていた。 どこかで花火大会をやっているようだった。 これはいい肴になると、カーテンを全開にして部屋の照明を少し落とした。 ドォン、ドォンと色とりどりの花火が咲き乱れる。 とりわけ大きな花火が咲いたとき、思わず「たまやぁ!」と叫んでいた。 連続して花火が上がったら、パチパチと拍手をする。 ゆったり飲むつもりが、騒がしくも楽しい時間に変わっていった。 思いがけずに夏を満喫した夜だった。

          はじめての冒険

          「貴方がお腹の中にいた時、へその緒が首に絡まってたのよ。」 子供の頃、母がそう教えてくれた。 幸い、へその緒は自然と解けたらしく、難産にならず無事出産したらしい。 時々、小さい子は生まれたときの記憶が残っていることがあると聞く。また、生まれる前の記憶がある子もいるらしい。 残念ながらそのどちらでもない幼少時代だったけれど、おかげで母の出産話をまるで冒険譚を聞くかのようにワクワクしながら新鮮な気持ちで聞くことができた。 それは人生初の冒険だった。 時々経験のないことをしてみ

          はじめての冒険

          離ればなれ

          友人との約束で、久しぶりに都心の方へ行く。 目的地周辺に駐車場がなさそうだったので、電車で向かうことになった。 せっかくなのでいつもより服装を意識して、何年ぶりかに革靴を履いて家を出た。いつもサンダルがスニーカーばかりだったから、足の窮屈さが少し落ち着かない。けれど、歩くたびに見える艶々とした爪先に胸が躍った。 最寄駅に到着して階段を登っていたとき、不意に片足が軽くなった。不思議に思いながらもとりあえず登り切り、靴を見てみた。 靴紐が解けた様子もなかったので足裏を見ると、見

          離ればなれ

          ひとりあるき

          今年1月に、こちらに書き留めたものたちをKindleで電子書籍として販売したのですが、今日から5月7日の5日間、無料でお読みいただけます。 ゴールデンウィーク、旅の移動中の暇つぶし、昼寝のお供に。 よかったら覗いてみてください。 https://amzn.asia/d/fo8DcQ1

          ひとりあるき

          代理自動販売機

          散歩の帰り道、喉が渇いたので飲み物を買おうと自販機を探した。 通り道にいくつかあったのを覚えていたなので、探しながら歩いた。 いくつか見つけたものの、めぼしい飲み物が見当たらなかったので買うのを断念して帰ることにした。 家まであと5分も無いところで、古びた自販機をみつけた。公園近くにあるせいか、二人の子供が目を輝かせながら自販機を見上げていた。 なんとなく何が売っているのか気になったので少し離れたところで商品を見てみると、 自販機を見上げていた少年がこちらに気づいて「買う?

          代理自動販売機