見出し画像

離ればなれ

友人との約束で、久しぶりに都心の方へ行く。
目的地周辺に駐車場がなさそうだったので、電車で向かうことになった。
せっかくなのでいつもより服装を意識して、何年ぶりかに革靴を履いて家を出た。いつもサンダルがスニーカーばかりだったから、足の窮屈さが少し落ち着かない。けれど、歩くたびに見える艶々とした爪先に胸が躍った。

最寄駅に到着して階段を登っていたとき、不意に片足が軽くなった。不思議に思いながらもとりあえず登り切り、靴を見てみた。
靴紐が解けた様子もなかったので足裏を見ると、見事に靴底が取れて薄い布が剥き出しになっていた。
エッと驚きどこで取れたのか探してみると、まるでシンデレラのガラスの靴のように階段途中に落ちていた。
慌てて取りに戻ったものの、拾った靴底をどうしようかバッグの中を見てみると、偶然にも空のレジ袋があったのでそれに入れておくことにした。
足は少し違和感があるけれど歩けないわけではないので、このままでいいかと改札を通った。
ホームを歩いていたら、また足が軽くなった。振り返ると、もう片方の靴底も取れていた。
これならこれでいっそ清々しいから、このままでいいかと考えたけれど、夕方から雨の予報だったことに気がついて、目的地周辺で靴を買うことにした。

空調のせいか、いつもより足裏が涼しい気がした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?