代理自動販売機

散歩の帰り道、喉が渇いたので飲み物を買おうと自販機を探した。
通り道にいくつかあったのを覚えていたなので、探しながら歩いた。
いくつか見つけたものの、めぼしい飲み物が見当たらなかったので買うのを断念して帰ることにした。

家まであと5分も無いところで、古びた自販機をみつけた。公園近くにあるせいか、二人の子供が目を輝かせながら自販機を見上げていた。
なんとなく何が売っているのか気になったので少し離れたところで商品を見てみると、
自販機を見上げていた少年がこちらに気づいて「買う?」と聞いてきた。
なにがあるのか見てるだけだよと伝えたら、「お金入れたけどおせない」と言われた。
もうひとりの子が「いちばん上の炭酸飲みたいけど、とどかない。」と事情を話してくれた。
確かに、商品ボタンは少年たちの背では届かない高さだった。

「あのグレープの炭酸のボタンおして!」
「あそこ!あそこのやつ!」
そう頼まれてしまったら断るわけにもいかない。商品を指差してこれで良いのか確認すると、「そうそう!」と元気のいい返事がかえってきた。
代わりに自販機の購入ボタンを押すなんて初めてだったので、なんとなく緊張してしまう。間違えないようグレープの下のボタンを心の中で何度も確認してから押した。
ガチャンと音を立てて、商品が落ちてきた。
お釣りがジャラジャラ出るのを見て、わぁっと嬉しそうに声を上げる少年たちに、暑いからちゃんと水分とってねと言ってその場を後にした。

公園を見ると、いろんな子たちが歓声をあげて遊んでいた。
木々は新緑、夏は近づいている。

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