弾丸・信州上田行(2)
ー窓閉まらずも蕎麦屋へ
沸き立つ食欲をどうにか抑えつつ、駐車場にクルマを止める。老舗蕎麦屋「刀屋」(長野県上田市)の前には、すでに老若男女10人程度の列ができていて、聞こえてくる会話から、観光客だけでなく地元の人たちにもよく知られた店だと分かる。先んじて奧さんに列に並んでもらい、クルマを止めて急いで列に加わることに。と、そこで異変に気付く。どういうわけか、クルマの右後部座席のパワーウインドウが閉まらない。イヤリングがなくなったどころの騒ぎじゃないぞと、さすがに顔が青くなる。
突然のトラブル
ウィンウィンとパワーウインドウのモーターが苦しそうに悲鳴を上げる。エンジンをかけ直して再びスイッチを入れても状況は変わらない。窓は正常時の半分くらいまでしか上がらず、完全に閉まらない。ヤバい、このままでは車上荒らしのいいカモだ。焦りが募る。
どこかの安西先生が言う通り、ここであきらめると試合終了だ。クルマに詳しい父親にメールを送り、アドバイスを求める。ただ返事は来ない。そういや、この日、病院に行くと言ってたっけ。焦りに苛立ちが加わっていることに気付き、いったん深呼吸。あらためて冷静になろうと言い聞かせた。
このままでは埒があかない。少々荒っぽいが、無理矢理、手で窓をギリギリまで引き上げ、貴重品を持って出るしかない。一見、窓が閉まっているようにすれば、盗難も多少防げるだろう。そう思い、即座に実行。こうして奧さんの待つ列に小走りで向かった。
"開かずの窓"
事の顛末。この日の翌日、ディーラーにクルマを持ち込んで修理を依頼すると、どうも部品が破損していたらしい。ただ、すでに生産を終えた部品で在庫なく、修理できないとのこと。そのため、右後部座席の窓はこの先、ずっと"開かずの窓"として生き長らえていくことになる。責任を感じてやや辛い。救いになったのは「気にするな」という父の言葉。
それに刀屋の蕎麦と天ちらし(天ぷらの盛り合わせ)だった。(続く)
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