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mizuki | 目端に映る短編小説
2022年8月13日 02:25
熱海にあるヴィラには、テラスがあって、海が一望できる。そこには外付けの小さなバスタブとシャワーがあったが、部屋の中から丸見えだった。女子が好きそうな場所に思えたけど、四人とも使わなかった。使ったのは五人の男子のうちのふたりで、カーテンを完全に閉めて使った。同期九人、もう一ヶ月後には社会人となる歳だったが、ひとりだけ院進ということで他のみんなとの話題についていけなかった。私だけは、文学をやりたいと親
2022年8月16日 23:59
ドーナツ屋に入ると、すぐにその子供は僕を見つけた。母親の膝の上に立って僕の方を見て、笑いかけてくる。思わず何度かウインクして、レジに向かった。コーヒーとドーナツを受け取ってから席に着くと、ちょうど隣にその子がいた。母親は、友人とおしゃべり中で反対の方を向いていたので、僕とその子は、お互い睨めっこするみたいに見合っていた。母親が気がついて、嬉しそうにしながらもその子を向こう側に向けて座らせた。