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私とアーカイブとの出会い

歴史はビジネス上役に立つ学問なのか!?

私のアーカイブ事業における原点は「歴史学は世の中に役立つ学問なのか」という問いにあります。私は大学では歴史学を専攻しており、歴史学を用いた仕事をしたいと日々考えていました。

きっかけは鉄道検査資料の整理

私とアーカイブの出会いは、私が某鉄道会社に出向することから始まります。出向先では、親会社の検査部門内に保管されている土木構造物検査資料の整理について関わる機会がありました。鉄道における土木構造物は多種多様に存在しますし、検査担当者は本業の検査業務にほぼ毎日追われているため、検査資料を整理する時間を確保できず、その間にも検査資料が蓄積されていくという現状がありました。さらに、検査担当者は定期異動で随時変わっていくため、資料未整理の状態が続くとどんどん資料の所在が分からなくなってしまうので、どこかで一度整理をしないと資料が探せなくなってしまうという課題があり、我々に整理をアウトソーシングしたという経緯でした。

業務の内容としては各種土木構造物の検査資料を、構造物ごとに仕分けた後、検査年度順に配架し、資料の配架場所をリスト化(目録作成)するという業務でした。これを定期的(半年に1回実施)に実施することで、常に検査資料の所在を把握できるようにしました。
検査担当者からは、資料整理を実施したことにより、前回検査資料の捜索が容易となり、検査後実施後の整理も後でしっかりやってくれるので、気分的にも余裕ができ、本業に集中できるようになったという評価をいただきました。

専門知識が活かせると思った

初めて資料整理業務を経験した私は、なかなか資料の整理というのは自分だけでやろうとすると後回しになりがちになってしまうという、家の片付けのような問題が企業でもあることを知りました。また、資料整理業務は、まるで図書館の図書整理のようで、大学で学んだ知識(司書資格=図書館職員のための資格を大学時代に取得していました)も活かせるのではないかと考えるようになり、強く興味を持ちました。

そして、出向先から戻った後も資料整理業務のニーズがないか、色々な企業へ訪問するようになった結果、出会うことになるのがアーカイブ業務です。

鉄道検査資料の整理をはじめ、初期の資料整理業務は文書資料の配架場所をリスト化(目録作成)するというような業務が中心でしたが、様々な業界業種の資料の整理を進めていくうちに、アーカイブ業務の原型となる業務に出会うことになりました。

資料を調査せよ

某繊維機械企業から、業界関係者から古い織物の生地片(裂)を寄贈されたものの、いつの時代のものでどの地方の織物かわからないので、作成年代と、作成地方を調査推定して資料の受入れ台帳を作ってほしいという依頼業務です。

前述の鉄道検査資料の整理業務などは基本的に、検査資料の表紙を見れば、構造物名も作成年も分かる資料が多くありました。しかし、この時寄贈された資料は生地片だけで説明書きなどは一切ありません。この業務を通して、資料とは紙に書かれた文書資料だけではなく、色々な状態や形態があることを知りました。企業資料には文書資料以外にも、立体物資料(製品や道具など)や写真など、テキスト情報にするのが難しい資料も多いため、どのように情報を取得(資料調査)するかが重要になってくるのです。
この業務では織物を研究している先生の協力を得ながら、生地模様の特徴から資料を推定、分類することで台帳化することができました。どのように資料情報を取得するかを検討した上で(手順書化)、資料内容を自ら調査して、分類したという点で、歴史学の知見を活かしつつ、アーカイブ業務のベースとなる経験を得られた業務として大変思い出深い案件です。

企業は資料を残している

 以上2件の業務が私とアーカイブの出会いを語るうえで欠かせない事例となるのですが、色々な企業の資料整理をしてきたことで、改めて気づいたことがあります。それは、企業は色々な資料を残しているということです。しかもそれは検査資料のような業務に関わる資料の他に、歴史的資料も意外に多く残しているという気づきです。ここでいう歴史的資料とは、企業の創業時に関わる資料や、過去に発表した製品に関わる資料、かつて開催されたイベントや行事に関する資料など多種にわたりますが、要するに「会社がどんなことをやってきたかが分かる資料」のことです。

企業が自社の歴史的資料を残しているということは、(意識、無意識に関わらず)歴史的資料を残す必要性があると各企業が感じているということです。一方で歴史的資料が整理できていない、あるいは活用できていないという実状も各企業のヒアリングから見えてきました。

企業資料の整理と活用を仕事に

この実状を知るにつれて、私はこの歴史的資料の整理、活用方法を提案することができれば、継続的な事業にできるかもしれないと考えて始めたアーカイブ業務ですが、実績を積んでいくうちに相談をいただく内容もより高度に、より多様となり、現在は組織で対応する事業にまで発展させることができました。 そして、当初からの目標であった、歴史学の知見を活用することで、これからも日々新しいアーカイブ業務に取り組んでいます。

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