傷の下に、大事なものがある
気がついた時には、自分の家が、自分の家族が普通じゃないと感じていた。
普通なんて何かもわからなかったけれど。
友達のあの子の家みたいに、父親と母親で出かけることなんてない。
他の友達のあの子の家みたいに、相談しあっているところは見たことがない。
他の友達のあの子の家みたいに、父親や母親と笑い合えたことが、ない。
私の家では、どうしていつも、父親は怒鳴っているのだろうか。
どうしていつも、母親は悲しそうなのだろうか。
どうしていつも、2人とも苦しそうなのだろうか。
お金がないから、苦しくて、悲しくて、怒っているのだろうか。
母親が、怒らせるようなことをしたのだろうか。
父親が、一方的に怒っているのだろうか。
わたしが、何をすれば、どうやっていれば、2人は笑ってくれるのだろうか。
わたしが、何をすれば、どうやっていれば、2人は私の混乱に、悲しみに、不安に、気づいてくれるんだろうか。
2人が笑ってくれていないと、幸せでいてくれないと、ずっと不安で、ずっと寂しくて、ずっと落ち着かなくて。
こんな状態では、何も楽しくなくて、笑えなくて。
わたしは、どうやったら、心から笑えるのか、わからなかった。
笑ってくれないなら、せめて、怒らないように。
せめて、悲しまないように。
注意を逸らそうと思った。
小6でピアスを開けてもダメだった。
中1で万引きをしても、酒を飲んでも、タバコを吸っても、ダメだった。
素行の悪い先輩や友達と付き合っても、ダメだった。
学校に行かなくなってもダメだった。
怪我をしても、体調を崩してもダメだった。
成績を良くしてもダメだった。
真面目に部活に取り組んでもダメだった。
もう、諦めて、高校を少しだけ楽しみだしたら、母親は出ていって、家族はバラバラになった。
知らぬ間に出ていった母親を探しもしないで、愚痴を吐き続ける父親が残されただけだった。
社会人になって、限界が来て、摂食障害になってもダメだった。
社会人になって、お金に困ってもダメだった。
社会人になって、人に迷惑をかけてしまっても、ダメだった。
彼らの目に、私が映ることはなかった。
彼らを、大人の私が自分の目で見ることも、できていなかった。
無理なんだ、2人とも。無理なのに、押し付けていた。
現実は、2人が「無理」と言うことを示していて、
現実は、私がなんとか生き延びたことを示していて。
生き延びるより、笑い合いたかった。
生き延びるより、幸せになりたかった。
生き延びるより、喜ばせたかった。
私は、ずっと間違えていた。
思い出さなきゃいけないことが、たくさんある。
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