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私が工業について思うこと

新卒で会社に入社してから、工業界で働いてきた中で感じたことを書きたいと思います。

1. 日本の工業

現在、日本には輸出できる資源がありません。そして国土も狭く、食料品の大量生産にも不向きです。日本は輸出額の約80%を工業製品の輸出に頼っています。この状況は2000年あたりから変わりありません。工業製品の輸出は外貨獲得の大きな手段であり続けました。

しかし、そんな日本にも産業構造のシフトは起こり、近年では日本のGDPの約20%にとどまります。このたった20%で輸出を支えているわけです。

中韓などの新興国の台頭が著しい昨今、日本の工業の立場は危うくなるばかりです。実際、重厚長大産業、家電製品は価格競争に敗れ、衰退著しい状態です。

今後20~30年でハイテク産業・IT産業も敗北の道をたどる可能性が高いと考えられます。30年後の老後生活は、工業の頑張りによって変化する可能性があるわけです。

2. 終身雇用の崩壊

2020年、ついにトヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用は難しい」と発言したことは産業界に衝撃を与えました。

働かない50代問題として語られることが多いですが、果たして自分が50歳になったときに意欲的にバリバリ働けるかは疑問です。20、30代は「働かないおじさんは辞めろ」というが、自分がおじさんになったとき問答無用で解雇される可能性があることは恐怖ではないのでしょうか。1.の通り、日本の工業界は尻すぼむ可能性が高いわけですし。

「数十年鍛えた技術が無用のものになり、挙句解雇、もちろん業界が衰退しているので転職先もない」なんてことが起こりうるはずです。理系に限った話で申し訳ないが、理系は特に業界に依存したスキルであるケースが高いため、汎用性が低いと思っています。

既に他国に負けが込んでいる重厚長大産業は、過去の資産を食いつぶして生きています。土地資産を売ったり、競合と統合したり、手を変え品を変え、なんとか食いつないでいる状態と見受けられます。

自分たちが定年になったときまであなたの業界は耐えられるのでしょうか。

3. Job型の雇用制度

最近になってよく言われるJob型の雇用体系ですが、これは旧態依然とした工業界では遅々として進まないと思います。IT業界におけるプログラマーは先行している印象ですが、工業界では個人のスキル単体で出来ることが小さい分、雇用体系の変化は難しいと考えています。

※ちなみにJob型とは、欧米などの働き方、反対はMenbership型と呼ばれます。何でも屋さんとして育てられるイメージです。リンク参照。

https://en-gage.net/content/job-type-employment

しかし、世の中の流れはJob型に進んでいます。労働者の意識が先んじてJob型になっていると思っています。特に若手は「自分の成長が自分の仕事を守る」という考え方が主流になりつつあり、成長できると言われるベンチャーやコンサル業界を志望する学生が増えているようです。

この先もMenbership型雇用を続け、Job型雇用に移行できない工業界は優秀な人材を確保できず、また、獲得しても生かせないままつぶしてしまう可能性があります。

4. おじさん化した工業界

世の中の移り変わりが組織の意志変化より圧倒的に早くなった現代で、工業界は通用していくのでしょうか。「サービス残業上等」「給与は低いが福利厚生が充実」「薄給だが安定雇用」というイメージが残る業界に有望な人材は飛び込んでくるでしょうか。飛び込んでも内部の「慣習・慣例」に潰されやしないでしょうか。

(働かない?)おじさん化した工業界を変える方法はないのでしょうか。

私はスマホを使えないおじさんがスマホを使い始める例を見てきました。子や孫の影響です。あれほど、わからないと言っていたおじさんが変わるものだなと思いました。

今の工業界も同じで、外からの働きかけによってイマ風のおじさんになってもらえないのでしょうか。

堅物のおじさん(工業界)はもっと自分を公開し、広く世の中にさらされることで、変化することを期待しています。

5. 最後に

私は工業界に入ったことを後悔していません。むしろ良い経験ができたと思っています。しかし、「このままではだめだ」と考える若手と「ゆっくり変わればいい」というおじさんの間には想像を絶する隔たりを感じてなりません。「若手にもっと活躍の場を」という口だけの言葉はもう聞き飽きました。あと何年同じことを言い続けるのでしょうか。

「なにを若造が」「もっと経験積むまで頑張れよ」という言葉は甘んじて受け入れます。

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