K-POPアイドルたちは海外歌手(アイドルグループ)から影響を受けてきた
K-POPアイドルは日本のジャニーズから影響を受けていると言われている。
日本のアイドルを参考にし、韓国流にアレンジメントして実際のビジネスとして作り上げ、日本独特のアイドルシステムや企画などのスタイルが韓国の若者に人気となってK-POPのアイドルが誕生したとされているが、これは誤りである。K-POP及び韓国のアイドルたちが影響を受けたのはアメリカのモータウンや海外のボーイ・バンド、ガール・グループである。
■韓国アイドルのトレーニングシステム
K-POPのアイドルたちがデビューする前に行う数年間のトレーニングシステムについてもジャニーズの練習生制度「ジャニーズjr.」を参考にしたとされているが、こちらも間違いだ。K-POPアイドルにおいてのトレーニングは、1980年代にデビューしたキム・ワンソンの存在とアメリカのボーイ・バンドの育成システムから影響を受けたものである。まずキム・ワンソンは女性歌手、イン・スニのマネージャーだったハン・ベクヒ(叔母)を通じて1983年に"イン・スニとリズムタッチ"のバックダンサーとして芸能界入りをする。その後、3年間のトレーニング期間を設けて歌やダンスなどの特訓をし、1986年に歌手デビューするとアイドル的な人気を獲得する。
キム・ワンソンが1986年にデビューした後、歌手や司会者などで活躍していたイ・スマンが1989年にSMエンタテインメント(当時はSM企画)を設立する。その際に以前から親交があり、キム・ワンソンのマネージャーを務めていたハン・ベクヒから「歌手を育てるんだったら、ちゃんとトレーニングさせた方が良い」と助言を受けた。これをきっかけにイ・スマンは自分の会社に所属している練習生たちをトレーニングさせるようになる。
イ・スマンが最初に手本としたのは1980年代後半だった当時、アメリカで人気を得ていた男性歌手のボビー・ブラウン。イ・スマンがアメリカに留学していたときに音楽専門チャンネル「MTV」でMichael JacksonやNew Editionなどのミュージックビデオが流れているのを見て「韓国にもダンス系(ヒップホップ系)の歌手が活躍できるのかもしれない」と影響を受けた。そしてそのNew Editionに在籍していたメンバーの1人がボビー・ブラウンだった。1987年に梨泰院のナイトクラブなどでB-boyとして活動していたヒョン・ジニョンをスカウトし、2年間のトレーニングを経てデビューさせた。ヒョン・ジニョンはダンスの実力は完璧だったが、歌を歌いながら踊ることは全く別問題で歌とダンスの両方をこなさなければならないため、イ・スマンのトレーニング方法は想像を超越するほど体系的で過酷だったという。
キム・ワンソンのトレーニング方法を取り入れ、ヒョン・ジニョンとワワを売り出した後、SMエンタテインメントはアメリカのボーイ・バンドの育成方法を導入します。1993年、イ・スマンはBobby Brownが在籍していたNew Editionの後輩グループであるNew Kids On The Blockをベンチマークして5人組のアイドルグループ「H.O.T」を売り出すことにします。New Kids On The Blockは1984年にNynukという名前で結成され、2年間の練習生期間を費やして1986年にデビューした。
H.O.Tは、1993年に最初のメンバーであるカンタが練習生に入り、1995年にムン・ヒジュン、イ・ジェウォン、チャン・ウヒョク、1996年にトニー・アンが合流。練習生時代は、「今日も迷惑な日だね」という曲でレッスンをしていた。1993年～1996年まで約3年間のトレーニング期間をかけてデビューした。このH.O.Tが登場すると社会現象を巻き起こし、爆発的な人気を獲得する。以後、DSPメディア、JYPエンターテインメント、YGエンターテインメントなど他の芸能会社もSMエンタテイメント及びH.O.Tのやり方を応用し、練習生に数年間のトレーニング期間を設け、アイドルとしてデビューさせるK-POPアイドル特有のトレーニングシステムが定着した。
ちなみにNew Editionのメンバーのうち、リッキー・ベル、マイケル・ビヴィンス、ロニー・デヴォーの3人は1989年、ニュー・エディションの活動休止期間中、プロデューサーの提案により新しい3人組のグループを結成した。
SMエンタテイメントのH.O.Tもこれと似たような例があり、チャン・ウヒョク、イ・ジェウォン、トニー・アンの3人がH.O.T解散後、2001年に「JTL」というグループを結成し、2003年まで活動した。以後、2010年には東方神起のメンバー(ジェジュン・ユチュン・ジュンス)3人のユニット「JYJ」がこれに続くことになる。
※海外の歌手グループから影響を受けた韓国アイドル
■アイドル誕生以前の時代
●キム・シスターズ
「韓国のThe Supremes」
1950年代～1960年代にかけて人気を博した女性ボーカルグループ。
メンバーは、3人の姉妹から構成され1953年に結成した。1960年代に米国市場で成功を収めた韓国初のガールズグループであるが、彼女たちはアイドルではなく音楽グループと呼ばれる。エド・サリヴァン・ショーに20回以上、出演したことでも知られている。ダイアナ・ロスが在籍していたアメリカの「ザ・シュープリームス」に影響を受けたグループだった。
●キム・ワンソン
「韓国のMadonna」
1980年代中盤～1990年代初頭にかけて活躍した女性ソロ歌手。アメリカの女性歌手・Madonnaから影響を受け、セクシーなダンスとカリスマ的なステージでアイドル的人気を得た。韓国で逸早くトレーニングシステムを導入し、華麗なダンススキルと歌唱をする少女歌手として登場、海外市場の開拓に先駆けた点などではBoAをはじめ現在のK-POPアイドルのシステムの典型として見る事もできる。
●パク・ナムジョン
「韓国のMichael Jackson」
1980年代後半に活躍した男性ソロ歌手で上品なルックスとダンスでアイドル的な人気を博し、合唱団出身という事もあって歌唱力の実力もある。当時、世界的に大人気だったアメリカのアイドル歌手、マイケル・ジャクソンから多くの影響を受けた歌手の1人である。実際に1996年にはマイケル・ジャクソの"Dangerous"をオマージュした「遠くなる君」という曲で活動した。
●ヒョン・ジニョンとワワ
「韓国のBobby Brown」
1990年代前半、ソテジワアイドゥルやDEUXと共に現在のK-POPと呼ばれるアイドル中心のダンス音楽を開拓した先駆者の一人でもあり、その中でも一番最初に登場した歌手である。SMエンターテインメントの創設者であるイ・スマンがアメリカで留学していたときに見ていた音楽専門チャンネル「MTV」から影響を受け、韓国に戻り、梨泰院のナイトクラブなどでB-boyとして活発に活動していたヒョン・ジニョンをスカウトした。ボーイ・バンド"New Edition"のメンバーだったBobby Brownをベンチマークして、ボーカル＋ダンサーという構成で売り出され、人気を博した。
■アイドル誕生以降の時代
●IDOL
「韓国のKris Kross」
DSPメディアからデビューし、SMエンターテインメントがアイドルグループを売り出す前に登場した10代のアイドルでグループ名もそのまま「アイドル」である。アメリカの中学生黒人デュオのKris Krossをベンチマークした。当時の韓国では芸能活動や放送コードに検閲・規制が多かった中で中学生という低年齢メンバーでの活躍はタブー破りに近いと見られていたが、デビューすると同時に若年層のファンを獲得した。韓国アイドルの低年齢化の先鞭をつけたと評価された。女性歌手のチャン・ナラが芸能界に入る前にIDOL(チェ・ヒョクジュン)のファンだったと明かしたことがある。
●H.O.T
「韓国のNew Kids On The Block」
アメリカのボーイ・バンドであるNew Kids On The Blockが5人組だったので、H.O.Tも5人組で結成された。1996年、韓国音楽界にラップとダンスを浸透させ、10代に圧倒的な人気を誇りながらも突如として解散したソテジワアイドゥルと入れ替わるようにデビューした。1990年代後半～2000年代初頭にかけて韓国で圧倒的な人気を誇り、韓国アイドル界の歴史を変えたとも言われている。
●Baby V.O.X
「韓国のSpice Girls」
第1世代アイドルの中で最も長く活動したアイドルグループでセクシーコンセプトを掲げ他の女性グループと差別化を図り、韓国のみならず中華圏や東南アジアでも大きな人気を集めた。当時、世界的に人気を得ていたイギリスのガール・グループ、Spice Girlsをベンチマークし、所属事務所のDRミュージック(当時：ドラゴン企画)も最初から「韓国版のスパイスガールズを売り出す」として作られたチームだった。
●S.E.S
「韓国のTLC」
アメリカのガール・グループで同じ3人組のTLCをベンチマークした。
彼女たちの登場以前にもセトレ、APPLE、S.O.Sなどアイドル的なコンセプトで活躍する女性グループは存在したが、それらのグループはアイドルの過渡期的な存在であり、ブレイク出来なかった。そのため、事実上、S.E.Sが韓国初の女性アイドルグループであり、最初のK-POPガールズグループとして、K-POPとガールズグループの歴史に大きな影響力を及ぼした。韓国の大多数の業界関係者、海外のK-POP専門家、ファンたちも今のような現代的なK-POPガールズグループの始まりはS.E.Sだと評価している。
●YG Family
「韓国のWu-Tang Clan」
アメリカのヒップホップグループ、Wu-Tang Clanから影響を受けたものでラップができるメンバーやヤン・ヒョンソク本人も参加し、1999年に結成。YG FamilyはYGエンターテインメント所属のアーティスト、俳優、スタッフを総称した名前で常に乱戦状態でラップが飛び交う緊張感持続の楽曲などを発表し、人気を集めた。
●東方神起
「韓国のBackstreet Boys」
アメリカの5人組ボーイ・バンド、Backstreet Boysをお手本にしたグループで2003年に5人組グループとしてデビュー。メンバーはコーラス、アカペラ、ダンスをこなし、全員がメインボーカルを担当できる形式を採り、卓越したパフォーマンスとビジュアルで人気を席巻した。2011年からは2人組で活動している。
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