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【散文】散歩 2023年11月16日作

散歩

まるで四月のようにやわらかくうららかな陽光の中を歩きながら考えた。大人になることについて。「いらない」と捨てた、今では愛おしく大切な一瞬一瞬について。いつの間にか過ぎていった幼年の日々について。

あゝ、終わったのだ。人生の春が終わってから気づいた。過ぎ去ることをあんなに強く望んだ過去が、届かなくなってからこんなにも大切で尊くなったのだ。今更になって気づいた。戻らない季節に手を伸ばしながらこれから長い長い灰色の時間を生きてゆくのだ。この切なさが、苦さが、大人になるということなのだろう。

没落の過程ほど美しいものはない。紅葉の葉を三枚、瑞々しいものを選って、拾った。自分の失った時間が、水分とともに蒸発していくのをただ眺めている。

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