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準備開始の第3期-なかなかIPOが実現しない裏話

先日、noteに弊社がIPOをする理由を書きましたが、いざ実際に準備を始めるとなってからなかなか実現できない裏話。主に苦労話となりますが、時間の合間に赤裸々に出していこうかと思います。
その一発目として、IPO準備を始めた第3期目。本当に右も左もわからない状態でIPO実現のゴールだけ決めて進み始めた裏話を是非お読みください。
※書いていいのかわかりませんが体験談としてならOKかなという判断で…

IPOやろうか、の甘い考え

前回書いたとおり、弊社でIPOをすると決断したのが2期目。IPOする理由も決めて突き進む事となりました。(詳しくは前回の記事をご覧ください)

まず、IPOに必要なのが、主幹事証券と監査法人です。
主幹事証券は、最初は主に規程など内部統制面のアドバイスや制度構築を一緒にしてくれます。
監査法人は、最初は会計・決算まわりの監査(問題なく会計処理されているか?不正な契約はないか?など)をチェックします。

IPOとは何?状態で、経験もツテも何も無かった我々は色々な人に相談し、某証券と某監査法人の紹介を受け、特に深く考えずに契約しました。
弊社の規模感から考えてしっかり検討すべきだったかもしれない、というのは経験の浅さからだと後で気づくことになりますが、まずはIPO準備スタートを切ったわけです。
で、一番最初にするのがショートレビュー(予備調査)です。

規程といっても就業規則と賃金規程とかしかない中、IPOの事をよく解っていなかったので第3期を直前々期(上場の2期前)に設定しようということで、第3期の期首(会計年度の始まる日)の残高が正しいかとか規程や業務フロー等の課題洗い出しを行うため、弊社では第2期の2016年8月頃にショートレビューを受けました。

何もない...いわゆる無法地帯

今では数十という規程やマニュアルが整備されていますが、その頃の当社にある規程類と言えば、とりあえず会社を設立するのに必要な定款と、助成金を受けるためにとりあえず作っていた就業規則、賃金規程ぐらいしかありませんでした。業務フローも制度も適当。
どんな状態だったかと言うと…
Excel感覚で自由自在に作れる請求書♪
 └ 請求し放題、数字作りたい放題だぜ!
案件で成果出たら電話一本で予算増やして運用運用♪
 └ 受注の契約書は10万円なのに請求500万円みたいな♪
ナイトレジャー産業だろうがお金持ってそうな会社は大得意様♪
 └ ナイト系でも1案件3000万円の制作案件とかサイコー!!
交際費も使いまくり♪
 └ みんな飲んで食って楽しくいこーぜ♪
反社チェック?なにそれ?美味しいの?
 └ 今では考えられないフリーダム♪
社用車はなんとカイエン♪
 └ これは予想外でした。
仕事してて気がづいたら朝の5時でした。なんて毎日毎日♪
 └ これはこれで楽しい、はず。

とまぁ、よくあるベンチャー企業のように自由気ままにしていましたので、業績は伸び続けているのですが内部は謎of謎。
別に法に触れるとか不正をしている、というのではなく、事業拡大を最優先にみんな必死に働いている時期でした。
そこにおカタイ監査法人がショートレビューの名の下、片っ端から調べるんですから、もう課題が出るわ出るわ。

最終的に56ページにも渡るショートレビュー報告書を見て絶望しました。
さらに、証券会社のレビューも始まります。
証券会社は上場適格性を重視してヒアリングや調査をするのですが、こちらもおカタイ証券会社にしらみ潰しに調べられて、もう課題が大豊作。
こちらも68ページに渡る報告書が出てきて思わず手首を切りかけました。

でもまぁ準備は整いました。
いよいよIPOへの道のりがスタート。第3期の直前々期がスタートします。

いよいよIPO準備開始!

各報告書には、今の課題と解決するヒントが書かれています。
報告書にある膨大な指摘事項を1つ1つ潰していく地道な作業が始まりました。
だがしかし!
後で気づくのですが、証券会社との相性はかなり重要。
弊社に最初に来たのは経験は豊富そうですが親父より年上であろう男性。
とにかくマニュアル通り、業種も考えず規程のサンプルをくれて、まずは作れ、と。
未経験ど素人の我々は、まず証券会社の言う事を信じ、頑なに規程類の作成を進めました。その数約100個。
その頃はデジタルマーケティング事業のみのなので在庫とか無いのに「在庫管理規程」とか、製造業でもないのにWeb制作があるからって事で「品質管理規程」とか…聞くととりあえず作れと言われ、疑問に思いつつも証券会社に必要だからと言われたので素直に作って整備しました。

形式が整えば行けるんじゃね?

その頃は形式が整っていればIPO出来るという浅はかな気持ちで準備をしていました。準備をすればいける、と。
規程を作って会社のルールを整え、業務フローを作ってフロー通りに業務を進め、きちんと正しい会計処理をして決算をする。
それでいいと思っていました。
それが大間違い。

規程は作ったが運用できない

 └ 業務の実態に合っていない。合わせるのが難しい
職務権限表を作って稟議書出してって言っても漏れる
 └ そもそも現場に落とし込むのが大変
契約書ってなぁに?状態
 └ 申込書(個別契約書)があれば取引していいと本気で思ってました

第3期も半分過ぎた頃に一通り形式上は揃ってきたけど結局はハリボテ状態。
とにかく現場に落とし込む大変さ、運用する大変さ、そして一番大変だったのは実際の業務に合わせるのが難しいという事でした。
その頃、弊社では「水田は会社に住んでる」と噂が流れるほど土日祝も休み無く、朝から晩まで通常業務やIPO準備などフルパワーでやってました。
正直、思い出すだけでもゾっとする光景です。
まぁ楽しかったですけどね!!!
その頃まだ30人足らずでしたが、経験したことがないIPOに向け、慣れない中で決められたルールを守り、皆で必死に業績を上げ「直前々期」というステージを突き進みました。

いよいよIPO準備初年度の監査開始

第3期も期末が近づき、監査法人による初めての決算監査スタートです。
色々ゴタゴタしてまして期中の監査が思うように進まず、期末監査メインとなっていました。
来年は直前期という気持ちで決算を進めたわけですが、まぁ見事なぐらいにボロボロ。会計処理が間違っているとか、会社がむちゃくちゃ、というのでは無く、そもそも上場企業の基準には程遠いレベルでした。

今ではあたりまえの「稟議」が無い

今では外注や経費を使う時に当たり前のように皆が起案する「稟議書」や「申請書」ですが、その頃は足りないほうが多いぐらいに不足しまくり。
私自身も稟議の重要性や意味を本当に理解できていませんでした。
監査では、支出に対して「どういう理由」で「誰が決裁したのか?」というのが重要で、然るべき決裁を経て会社のお金を使っているというのが重要です。
今では普通ですが「誰でも好き勝手にお金を使える環境」は上場企業としてはあり得ないですよね。

第3期は稟議規程やワークフローも導入されていますが形式を整えただけで運用できていないという典型的な例のように、ただ申請されているだけ、内容はスッカラカンな状態でした。第三者が見ると理解できる状態じゃない。

もちろん会計監査は進みません。
監査法人にサンプリングで資料提出を求められるも、支払に関しては「請求書」のみ。売上に関しても「請求書」のみ。
毎日のように「この請求書の根拠資料は?」と詰められ、無いと言うとため息。そんな監査が続きました。
※当時の監査法人の担当者さん、本当にご苦労おかけしました…

結論「来期直前期は無理っしょ」

なんとか会計監査も無事?終わり、決算も終わった後に監査報告会がありました。
監査報告会では今の課題や問題について期限を決めて改善していきましょうリストが出されます。
ショートレビューで出された課題も残ったまま、新たに会計周りの指摘も入って小学生の夏休みの宿題より多い課題が出されました。
で、監査法人より「まぁ来期に直前期は難しいので、もう1年直前々期で整えましょう」という結論が言い渡されました。

このときの大きな問題点は
・予実のブレと予算策定の甘さ
 └ まぁ予算組んだの初めてですし...組み方もわからずでしたし
・内部統制の不備(稟議などが足り無さすぎ問題)
 └ まだまだ稟議の重要性が理解できてなかったし
・契約周りの整備が必要
 └ 申込書あればいいんじゃないの?基本契約書ってなぁに?状態
・網羅的な案件管理が出来ていない
 └ 会社で動いている案件を網羅的に確認できないヤバさ
ざっくり言うとこのレベル。
自分自身もこりゃ直前期なんて無理と思いました。
で結局、IPO準備初年度は「直前々期」どころか「準備開始」のレベルで終わりました。

初年度で学んだこと

第3期は結局「直前々期」としてはダメでしたが、IPO準備を始めてわかった事があります。
一番の間違いは、契約書や稟議書、規程運用をするのは「IPOをするのに必要だから」という思いで皆に周知してしまっていた事。
今では会社を守る上で必要なもの、という事は皆も理解していますが、当時はIPOするために必要なんだという低レベルの意識で準備し、本質を理解してなかったのです。
各種契約書は、相手とモメた時に対抗するための武器となります。
各種規定類は、不正など何か問題が発生しないための牽制機能で会社を守る鎧となります。
予算や目標は、1年間の会社の業績の予定であり、資金繰りを含めて先を見据える目となります。
各種稟議書は、誰が何のために何をするのか?をしっかり検討して事業が暴走しないためのブレーキとなります。

真っ裸でライオンの檻の中で寝転がっているレベルの会社が上場出来るはずがない。このように色々と装備をしないと、株式市場というバトルロードで勝ち残れません。
気持ち新たに、直前々期をもう一度チャレンジしよう。そう素直に思いました。

IPO準備といえど、やっている事に意味があります。
色々面倒で大変な部分もありますが、会社が大きくなればなるほど手続きが必要になりますが、それはより会社を大きくするために、会社を守るために、攻めるために必要なことだという本質を理解しました。

で、迎えた第4期。

2回目の直前々期。IPO N-2 2nd Season です。
規程類も揃って予算もしっかり組んで、万全の体制で挑みました。
が、しかし...この先にさらなる壁が立ちはだかったのです。
続きは、第4期に苦悩しまくった話をお待ち下さい。

長くなりましたが最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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