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国防力強化にひた走る北朝鮮 日米韓は打開策を示せるか|【WEDGE OPINION】

日朝平壌宣言から20年を迎えたが、日朝交渉は思うような進展を見せていない。ロシア・ウクライナ戦争下でミサイル発射を繰り返す北朝鮮を前に、日米韓協力の再構築が急務だ。

文・平岩俊司(Shunji Hiraiwa)
南山大学総合政策学部 教授
東京外国語大学朝鮮語学科卒業。2001年、慶應義塾大学大学院法学研究科博士取得。静岡県立大学国際関係学研究科教授、関西学院大学国際学部教授などを経て現職。著書に『北朝鮮はいま、何を考えているのか』(NHK出版新書)。


 9月17日、日朝平壌宣言(以下、宣言)が発表されてから20年を迎えた。宣言は、2002年に小泉純一郎首相(当時)が電撃的に訪朝し、金正日総書記(当時)と会談。北朝鮮が、①核問題など国際社会との間に抱える問題、②拉致問題をはじめとする日朝二国間に存在する問題、を解決した後に、日本と北朝鮮は国交を正常化することで合意した。

 重要だったのは国交正常化の後に日本が行うのが、「賠償」ではなく「経済協力」とされたことである。日韓国交正常化の際に韓国に対して行われた経済協力方式が明記されたのだ。それまで北朝鮮は「賠償」にこだわる姿勢を見せていたが、韓国併合を国際法違反ではなかったとする日本としては絶対に譲れない一線であった。それを北朝鮮に受け入れさせ、宣言で明確化したことの意義は大きい。

 宣言は、事後の展開次第では北朝鮮問題で日本が大きな役割を担う土台となる合意であったと言ってよい。

 だが、拉致問題については、5人の拉致被害者とその家族が帰国し、一定の進展は見られたものの、それ以後は進展せず、日本側の満足できる結果とは言えない状態が続いている。

 また、核問題については、北朝鮮は核実験を繰り返し、その運搬手段としての弾道ミサイルの開発に余念がなく、ついに米国全土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を手に入れたと主張している。最近では兵器の近代化を進め、国際社会は北朝鮮との緊張を高めている。

北朝鮮のミサイル発射を傍観しているだけでは前に進まない (TOMOHIRO OHSUMI/GETTYIMAGES)

 この間、北朝鮮が考える交渉の手順と日米が考える交渉の核心にズレがあったことを指摘しなければならない。日本は拉致問題の解決を最重要課題としてきたが、……

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