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息子2人を“プロ選手に育てていない” 風間八宏が説く、親の夢を子供に託してはいけない理由|サッカーパパ・ママが知るべき最先端理論

6月22日・23日に開催された「WHITE BOARD CONFERENCE」では、「親が変われば、子供の未来が変わる」をテーマに、日本トップクラスの講師陣が登壇。世界で戦う選手の育成に必要なメソッドやマインドを余すことなく伝えた。

6月22日のセッション2に登壇したのは、風間八宏だ。川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任し、現在は関東1部を戦う南葛SCを率いて、選手の技術を極限まで高める指導を継続している。日本屈指の智将は、2人のプロサッカー選手の親でもある。いったい、どのようなアプローチで育成したのか?ここでは「監督として」ではなく「父親として」の顔に迫った──。


子供に「あれしろ」と言ったことがない

会場が薄暗くなり、プロジェクターの光が壁一面を照らす。そこに映るのは、風間八宏だ。2013年7月に川崎フロンターレの監督に就任すると、5シーズンにわたって指揮を執り、選手の技術を飛躍的に高めると、その後の5年間で4度のJ1優勝を成し遂げるチームの礎を築いた。名古屋グランパスを率いた後、現在はセレッソ大阪の技術委員長、関東1部に所属する南葛SCの監督とテクニカルダイレクターを兼任している。現場に立ち、あらゆるカテゴリーで技術の核心を追求し続けてきた風間は、風間宏希(兄/ザスパ群馬)、風間宏矢(弟/ジェフユナイテッド千葉)の父でもある。風間は、2人の息子をどのようにプロサッカー選手に導いたのか。

本セッションは事前に収録された主催者・北健一郎との対談が放映された。

テーマは「30秒で子供の未来を変える、風間流コーチング」。スクリーンに映し出された風間が話し始めると、普段は見ることのできない“親”の顔に直面した参加者は映像に食い入る様子だった。

最初の論点は、どんな親の関わり方が子供をいい形で成長させるのか。そう問われると、風間は「子供のやりたいことや夢を親が“とらない”」と答えた。

成長に必要な情報を親がキャッチアップし、子供に提供して成長に導く。そこに親が描く理想的な成長像が乗っかっているものが、一般的なアプローチで正攻法だと考える人は少なくないだろう。

しかし、風間は違った。

「もちろん親なので我が子には期待しますが、親自身の欲や夢が介入すると成立しなくなります」

実際に宏希と宏矢をプロサッカー選手に育てたのは「妻です」と言う。

「自分は子供のやりたいことを応援するだけでした。子供自身の夢を追いかけてもらいたい。その時は子供だけども、いずれは大人になる。自分の道を歩んでほしいので、『あれしろ』『こうしろ』と言ったことはありません。1人の人間として子供と接していました」

風間は選手としてJリーグで活躍し、日の丸を付けて世界と戦い、ドイツでもプレーした。指導者と選手の両方の目線からの経験や知見は豊富で、それを積極的に伝えることで子供の成長を促してきたと想像してしまうが、サッカーに対する要求はしてこなかったようだ。

「一緒にボールを蹴って遊ぶことはありましたが、ずっと2人のプレーを見てきたわけではありません。子供から『教えてほしい』『シュート練習をしたいからクロスを上げて』と言われれば応じますけども、親の自分がなにかをやらせることはありませんでした」

子供自身の「やりたい」という意欲を尊重する。親が導くのではない。一番近くでサポートし、応援するという向き合い方の重要性を説いた。

「なぜやる気がないのか」はNG

子供の意欲を尊重するためには、我が子が自発的でないと難しい。では、どうやってやる気を引き出すか。そういう思考になるのが当然な流れだと思うが、「やる気がなければ他のことをすればいい。親が強制する必要はなく、なぜやる気がないのかという考えはNG。他に向いているものがあるはずです」と風間は述べた。

目の前にあるサッカーがすべてではない。子供が楽しんで取り組むことが一番大切であり、サッカー以外のスポーツや音楽など、いろんな選択肢や可能性をもちながら接することが大事なのだと言う。

風間自身が子供の頃も“やらされた”経験はなかったようだ。

「とにかく丸いボールがおもしろくて、一番の友達でした。やればやるだけ自分の言うことを聞いてくれるけど、完全には言うことを聞いてくれない。自分の思い通りになるし、思い通りにならないところが楽しくてのめり込んでいました」

サッカーに夢中だった。目の前にあるボールをひたすら蹴り続け、ある意味では無意識で技術を習得してサッカー選手になった。そんな原体験が、親としての接し方にも影響しているのだろう。

その後、本セッションでは、出身の清水商業高校から風間だけではなく名波浩や小野伸二を筆頭にクリエイティブな選手が生まれる理由、映像があふれる現代で創造性を養うためのアプローチ、同好会レベルの桐蔭横浜大学を強豪校に導いた指導方法などが、余すことなく語られた。最後に“パパコーチ”へのアドバイスとして大切な3つの要素を伝授すると、45分の講義が幕を閉じた。

会場が明転すると、参加者から割れんばかりの拍手が送られた。そのリアクションを見れば、風間の言葉がどれほど有益だったかは言うまでもなかった。

【冒頭4分公開 #02】
風間八宏「30秒で子供の未来を変える風間流コーチング」

【アーカイブ映像販売開始】


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