見出し画像

日常を愛することはできるか? とりわけ、「明日から人生変わる」みたいな書籍や動画を見ても全く人生が変わらなかった人に向けて

本記事の要約

人生のほとんどの時間が日常生活であると考えると、「人生を変える」ためには「日常」を変えることが必要だとわかります。日常生活は、習慣的な思考や行動によって占められています。もし人生を変えたいのであれば、現在の習慣を、自分が望む別の習慣に少しずつ変えていくのがよいのではないかということを筆者は提案します。(要約終わり)

1. 「日常」というものをどのように過ごすか

人生の大半の時間は、様々な雑事に追われながら慌ただしく過ごすうちに消失してしまいます。このように考えると、自らの日常をどのように過ごすかという点が、人間の生活において非常に重要であるということが了解されます。

僕たちは、たまーにディズニーやユニバに行って非日常を味わいたくなるけれど、やはり大部分の時間を占める日常生活こそが人生の意味を大きく規定するものでしょう。

2. 人生を変えたければ、いまの日常を変えるしかない

ところで、よく「明日から人生変わる3つの方法!」みたいな書籍や動画がありますけど、あれ見た人で人生変わった人ってどれくらいいるんでしょうかね。もちろん、そのコンテンツに触れたことによって本当に「人生変わった」人もいるのでしょうが、ほとんどの人は変わっていないと思います(僕も変わってないうちの一人)。

なぜ簡単に人生が変わらないのかと言えば、習慣的な思考や行動に身体が慣れ切っているからです。僕たちは、「普段通り過ごすこと」に馴染みすぎているのです。この、習慣とか、馴染んでいることについて考えてみましょう。

まず、人間が様々な事柄に慣れていることには、あまり考えずともスムーズに生活できるというメリットがあります。例えば、箸を使うことを考えてみましょう。誰もが、幼い頃に箸を使う練習をしたと思います。けれども今は「この指はこうで...」なんて気にせずに箸を用いていると思います。「慣れ」は生きていくうえで必要なのです。出会うものすべてが真新しかったら、生きづら過ぎて仕方ありません。

一方で自分の日常生活が嫌に感じている人からすれば、この「慣れ」が強烈なデメリットとなるのです。「自分を変えたい」という思いは現在の人間関係、仕事、自分の生活それ自体などについて悩んでいるから生じるものだと思います。この「~について悩んでいる」ということは、おそらく一回限りではなく、何回も繰り返してきたことではないでしょうか。

何回も同じことを悩むという思考のクセがついてしまっているのです。このように、何回も同じようなネガティブなことを考えて落ち込んでしまう思考のことを、反芻(はんすう)思考と言います。

ここから僕個人の主張なのですが、その思考は今あなたが身についた習慣、言い換えれば日常生活が、ネガティブに考えさせていると捉えることができるのではないでしょうか。

以上のように考えると、日常を変化させることこそ、人生を変えるために必要なのです。

3. いまの日常から別の日常へ 人生に組み込まれた日常性

前章では、人生を変えたいのであれば慣れ親しんだ日常から脱却しなければならないということを提示しました。本章では、どのように現在の日常を変えていくかということについて考えたいと思います。

結論から言うと、いまの日常を別の日常に置き換えることによって、人生を変えるのです。

「別の日常に置き換える」という表現を用いた理由は、第1章で言及したように、僕たちの人生というものは「日常を過ごすこと」が大部分を占めているからです。いまの日常を抜け出すことは、新しい日常に身を投じることに他ならないのです

自分をネガティブに考えさせる日常から、自分が楽しく感じる日常へ、少なくとも現在の環境よりはマシな日常へと移る。日常を、愛することができるように。

どういうことか、以下の具体例から考えてみましょう。

ある1人の哲学少年W君は、人生生きても意味がないと考え、仕方なしに難しい哲学書に答えを求めて手を伸ばしましたが理解できず、いろいろ悩みすぎて自殺したいと強く思っていました。ところがある日、彼は偶然『ヨーガの哲学』という本に出会いました。ずっと西洋哲学の本を読んでいた彼は、インドの思想がぶっ飛びすぎていて非常に新鮮でした。その本をきっかけにヨガについて調べてみると、どうやら健康にいいらしいと知り、早速実践してみました。しばらく続けた結果、以前の自殺したいという気持ちは少しずつ薄れ、「人生には客観的な意味はないけれど、だからといって自殺しなくてもいいのではないか」と考えるようになりました。自殺したいという思いが消え去ったわけではないけど、「まぁまだもうちょっと生きてみっかなー」くらいのテンションにはなったのでした。

慣れ親しんだ日常で身についたクセ(自殺を考える思考のクセ)を、少しずつ新たな日常で置き換えていくことで(ヨガをする)、彼は日常を愛するまではいかなくとも、受容するくらいには落ち着いたのでした。

僕は「自分が変えやすいところを変え、それを継続する」のがいいと思います。なぜなら、習慣はあなたの身体に強固に刻み込まれてなかなか直らないからです。ちょっとずつ、変えていきましょう。(もちろん一気にライフスタイルを変えてしまっても、副作用がないならそれでもOKです。)


以上、日常という視点から人生の意味を掴んでみてはどうか、という僕からの提案でした~。


思考の材料

参考文献

Heidegger, Martin, Sein und Zeit (1927), Tübingen: Max Niemeyer 2006.(マルティン・ハイデッガー『存在と時間』全四巻、熊野純彦訳、岩波文庫、2013年)

内田和俊『レジリエンス入門』、ちくまプリマー新書、2016年

現代位相研究所編『本当にわかる社会学』、現代位相研究所、2010年

今野雅方『深く「読む」技術 思考を鍛える文章教室』、ちくま学芸文庫、2010年

櫻井武『「こころ」はいかにして生まれるのか』、講談社ブルーバックス、2018年

立川武蔵『ヨーガの哲学』、講談社学術文庫、2013年

メンタリストDaiGo『自分を操る超集中力』、かんき出版、2016年

吉田昌生『マインドフルネス瞑想入門』、WAVE出版、2015年

その他

クリープハイプ 社会の窓


記事をお読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、YouTubeの活動費や書籍の購入代として使わせていただきます。