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小説的なテクスト

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#読書の秋2022

冬の朝が到来して・レモンジャムがない日のこと・政治

冬の朝が到来して・レモンジャムがない日のこと・政治

いつものことだ。いつものこと? いつも……そこで湧き起こるさまざまの逡巡は本当にいつもなのだろうか。何かを忘れているような気持ちで、薄ピンクに染まった夢の中を歩く。片付けかけのテーブル、とうに冷め切った紅茶、責め立ててやまない締切、各種の書類、関係項のなかで生きる自分、賞味期限の迫った山型食パン、マーマレード、冷えた足の指先、目が覚める。冬の朝らしい弱い陽光に輪郭を浮かび上がらせるテーブル。羽毛布

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朝日の代わりにレモンを、夢の後始末

朝日の代わりにレモンを、夢の後始末

意を決して何かを書き始めているうちに、必要に迫られてさまざまの節々、襞の折り目、カーテンの隙間などを探すことになって、いつのまにか膝下までを水に浸していることに気付いたりする。そのときの水温はいつも、たとえば寝付けないときの自分の体温に似ていたりして、妙にぞわぞわする生温さを称えていたりするのだった。それでいてあくまでも透明で、どこまでも覗き込めそうなほど、眼球にぴったりと当てはまっていく。踏み込

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