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Major Arcana(大アルカナについての断片的観想)

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タロットカードの中心部である大アルナカカードについての観想をまとめてあります。
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#タロット

The World:世界

The World:世界

ひとまず21枚目まできました。そのカードの名前は「世界」です。

世界そのものを解説というよりも、ここに出てくる4名の福音書記者たち(を象徴するもの)が重要かな、と。

左上:男性は「マタイ福音書」

右上:鷲は「ヨハネ福音書」

右下:獅子は「マルコ福音書」

左下:牛は「ルカ福音書」

をそれぞれ表しています。

なぜそうであるか、というのは、その原因を色々なところに求めているので、必ずしもこ

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Judgement:審判

Judgement:審判

「審判」。「最後の審判」なんて言い方もありますけれど、また、このカードのイメージは新約聖書の最後の「ヨハネの黙示録」にイメージを合わせている感じですね。すなわちラッパ、すなわち裁き。

この世の終わりに人類全てが裁かれるというのが「最後の審判」です。

しかし、このカードは、どちらかというと復活に近いイメージですね。天からのラッパで人々が蘇ってゆくイメージ。それを考えてか、モノクロームなイメージの

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The Sun:太陽

The Sun:太陽

そろそろこのシリーズも大詰めです。

そして、ここで登場するは太陽。無垢さ自然さ、おおらかさがこのカードに集中して現れている印象です。

意外とここで知っておきたいのが、ひまわりの花言葉でしょうか。

「憧れ」というような意味もあるのですが、中には「偽りの愛」「にせ金持ち」といったものもあります。

太陽は、確かに恵みですが、ときとしてはその暑さにやられてしまうこともあります(日本に住んでいると、

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The Moon:月

The Moon:月

月は眩しい。本当に暗い時に、月に光でさえ眩しく感じることもあります。

それゆえに、ここで描かれているような月の大きさは、イメージとしては決して間違ってはいないのでないと思っています。

そして、それに集うオオカミでしょうか、少なくとも「人」の集う場面ではありません。人の姿も見えない。この状況は、非常に興味深い。

今でこそ夜の時間に人が活動することは不思議でも何でもありませんけれど、日の出と共に

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The Star:星

The Star:星

星はなかなか見えない。空には存在していることは間違い無いのだけれど、現実問題としては、見えないことも多い。にもかかわらず、驚くほど夜空に輝いています。でもそれが見えないだけ。

そこで問われているのは、私たちは、人口の光の向こうに、雲の向こうに、満天の星があることを想像できるか?

想像とは、創造であり、この二つは、日本語ではたまたま同じ音を持つけれど、その一致も偶然では無いようにも思えてくる。

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The Tower:塔

The Tower:塔

見た感じ随分恐ろしげなカードです。背景は黒。そしてそこに描かれているのは、落雷、火災、人々の墜落、王冠の崩壊。

いずれも避けたいものですが、あくまで主役は「塔」です。災難が続くというべきか、それでも立っているというべきか。

冠を落としそうなところは、この権威が失われることも意味していましょう。いえ、正確には「失われようとしているかもしれない」というべきしょう。完全に落ちてしまっているわけではな

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The Devil:悪魔

The Devil:悪魔

ところで、このカードは「悪魔」とあるのだが、一体誰が悪魔なのだろうか。そこから考えてみよう。

いやいや、当然この中心の恐ろしげな生き物ではないのか、という。それはそうだろう。そこに描かれているのは私たちが容易に思いつく悪魔なのであるといってもいい。しかし、それは正しいのか。見た目だけで判断するのは、本当に正しいのだろうか。

下に描かれている男女は何者なのか。そんなことも考えると、この三人が悪魔

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Temperance:節制

Temperance:節制

まずは言葉の意味から。

temperance(行動、行為などが)「控えめ、穏健、節度、自制」といった意味があります。諺としても、Temperance is the best medicine「節制こそ最上の薬」というのがありますね。

「禁酒運動」なんて時も、このtemperanceを使います。

元々はtemper「気分」といった意味から。「調整する、穏やかにする、抑える」といった意味もありま

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Death:死

Death:死

死は、誰もに訪れる。死なない人は、誰一人としていないのである。
単純な話ではあるけれど、これこそが最大の問題と言ってもいいかもしれない。

それゆえに、もっとも平等な機会でもある。

しかし、その誰にも訪れる「死」を正面から意識する人は少なく、かつ、意識する時間も多くはない。中世のヨーロッパでmemento mori「死を思いだせ」がある種の標語であったことは、まさしく忘れるべきではない。

また

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The Hanged Man:吊られた男

The Hanged Man:吊られた男

このカードの存在そのものが興味深い。ひょっとすると、0番の「愚者」と並んで、もっともタロットをタロットたらしめているカードではないかと思う。

そもそも、彼は誰かによって吊られたのか、それとも、ある程度自分の意思で「吊られる状態」になったのか。吊られる状態に関心がいっても、なぜ彼は吊られたのかを考えると、読みに深みが増すのではないか。自分で自らこの状態になったとするのと、なんらかの事情でこの状態に

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Justice:正義

Justice:正義

この「正義」という字を見て人名と思った方は、ある意味鋭い、と思ってもいい。もちろん「正しい」ということでもあるけれど、Justiceという語は人名としても使われている。

Justinといえば、多くの人が用いるファーストネームであるのは周知の通りだし、ドイツはフランクフルトのレーマー(Römer)にある女神の像は、まさにこの「正義」を表すユースティティアの像である。正義の女神ともいう。

ところで

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Wheel of Fortune:運命の輪

Wheel of Fortune:運命の輪

まずはFortuneを考えてみよう。fortuneは、ラテン語のfors「偶然」をその語源とする。そして、Fortunaというと、古代ローマの運命の女神である。他にも、辞書を探せば、「富、財産、資金」といったような意味も出てくる。

雑誌にもFortuneとあるけれど、これは占いの本ではなく、経済誌である(Bloomberg Businessweek, Forbesとともにアメリカの三大経済誌とし

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The Hermit:隠者

The Hermit:隠者

Hermitというと、自動的にロシアの美術館を思い出す。エルミタージュ美術館だ。これは隠れ家という意味を持つ。

隠れる者、そんな意味合いだろうか。西洋の文化の中にも、もちろん日本の文化の中にも、いわば世捨て人のような施設も人物もいる。古今東西、といって差し支えないかもしれない。そういう意味では、「隠者」とは極めてユニバーサルな、どこにでもいる(つまりあなたのなかにもいる)存在なのだろう。それゆえ

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Strength:力

Strength:力

力を意味する「Strength」力というとPowerというのを思い出す人が多いと思う。しかし、この二つは英語においては違う意味になる。後者がどちらかというと、「仕事・活動する能力」であるのに対し、前者は「力を発揮し、耐え忍び、抵抗することができる生来の能力」となる。元々の能力、と言い換えてもいいかもしれない。

確かにそのような視点から見ると、獅子を手なづけるような能力は、Powerとは違う印象だ

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