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カミュ『異邦人』を原文で読む(8)

Bonjour ! クリスマスもいよいよ近づいて来ましたね。そしてあと半月もすれば、お正月 ( Nouvel an )。私も年賀状 ( carte de nouvel an ) を用意して、日ごろお世話になっている人、遠方にいてなかなか会えない恩人に書いて送ろうと考えています。ただ、中には喪中 ( en deuil )で出せない相手の人もいますが・・

母の遺体の傍でカフェオレ ( le café au lait ) を飲んだり、煙草を吸ったり ( fumer ) しながらくつろいでいると、門番が「これはしきたりだから ( C'est la coutume. )」と、母の友人たち ( les amis ) が霊安室にくることを告げます。それを聞いたムルソーは椅子 ( la chaise ) に座りながら眠りにつきますが、物音がして目が覚めると予告通りに母の友人たちが入って来るのを見ます。

C'est à ce moment que les amis de maman sont entrés. Ils étaient en tout une dizaine, et ils glissaient en silence dans cette lumière aveuglante.

(直訳)母の友人たちが入って来たのはその時だった。彼らは全部で10人(ぐらい)いて、静かにこの目を射るように眩しい光の中に忍びこんで来た。

(筆者翻訳)母の友人だという人たちが入って来たのは、その時だった。全部で10人(ぐらい)いただろうか、彼らは何も言わず、このまばゆい部屋の中へ忍び込むようにやって来た。

文頭の C'est~que..という構文は「・・は~である」という意味で、que以下の内容が起きた時間や場所、またはそれが指すものを特定するのに用います。つまり上の文章で言いたいのは、母の友人が霊安室に入って来たのは、ムルソーが目を覚ましたその時だったということですね。なお、C'est A qui (動詞)だと、「~する(した)のはAだ」という意味になります。その他文中の une dizaine は、大雑把に「10(ぐらい)」とまとめて人数を言う場合に使います。また、「20(ぐらい)」と言いたいときは une vigntaine、「30(ぐらい)」だと une trentaine となります。

ところが、最後の別れをしに来たこの友人たちに対し、ムルソーはある強い違和感を覚えます。

J'ai eu un moment l'impression ridicule qu'ils étaient là pour me juger.

(直訳)私は一瞬、彼らが私を裁くためにその場にいたというような奇妙な印象を抱いた。

(筆者翻訳)ふと、この人たちが自分を裁きにここにいるのではないかと、馬鹿げた考えが頭をよぎった。

いったいムルソーの眼に、母の友人だという人たちはどんな風に映ったのか、新しい年が明けた後でじっくり書こうと考えています。それまでに、皆様にはこれまでに書いた記事をもう一度じっくりと読み直し、復習をしていただければと思います。


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