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今日仕事をしなかったことを後悔しない村(家族移住体験:奈良県下北山村#2)
鳥のさえずりで起きるのはディズニーやジブリの中だけじゃない
朝6時。
ピチチチチ…というちょっとしゃれたショッピングモールなどで流れているような、ヒーリングミュージックのような鳥のさえずりで起きる。
少しゆっくり起きようと思っていたので目覚まし時計はまだ鳴っていない。
普段は何度アラームを設定しても起きられないのに鳥のさえずりで起きるなんて不思議だ。こんなことはディズニーとかジブリの世界だけなのではないかと思っていたのに。
もっと眠らせてくれよ、という思いもなく勢いよく伸びをして肩を痛め、一日が始まった。
いい出会いがあれば仕事をしている場合じゃない
今日は午後から遊びに行く予定なので、午前中はコワーキングスペースBIYORIにて仕事に集中。
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暮らす場所と仕事をする場所がはっきりと分けられているのはやはりメリハリがついていい。何より徒歩20秒と近いことがいいし、一度外に出なきゃいけないっていうのもいい。パジャマで行くわけにはいかないわけだから着替えるし、着替えたら気持ちも切り替わる。
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これまでは着替えずに一日中家着で過ごすことも少なくなかった。メリハリがつくだろうなぁと思いつつも面倒でやらないできたのだ。
フリーランスになって家にいることが増え、仕事も家事もいつでもできると思っていたし実際そうなのだが、なんとなくソワソワと焦りにも似た感情を常に抱いていたのは、どっちに頭をきりかえ切ることもできないまま中途半端に時間だけが過ぎていっていたからかもしれない。
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BIYORIに向かいPCを開いた5分後。
奈良県で起業されている松本梓さんと偶然お会いし、これから村の職員さんたちとミニ下北山村ツアーに行かれるとのことなので私も急遽ご一緒させていただくことに。
こういう突発的なイベントがとても好きだ。
松本さんが代表を務めるチアフル株式会社は、奈良を拠点に地域の農林産品に新しい販路を作り出し、障がい者や高齢者と一緒にものづくりをして発信していく取り組みを続けているとのこと。
先月まで東京藝大のプロジェクトで多様な人々が共生できる社会について学んでいたため、とても興味深く話を伺った。
藝大のプロジェクトが終了して少し寂しく思っていたが、寂しいと思いながらも一歩外に出かけた先にはこういう出会いが待っていて、こういうことがある度にいつも「すごい偶然だなぁ」なんて驚いていたけれど、きっと偶然じゃないんだろう。
何の気なしに色々と選んできたつもりだけど、行く行かないを含めて何かを選択している以上、きっとこの方がいいと心の中で根拠のない確信みたいなものがあるんだろうな。
下北山村ミニツアー
仕事を5分で切り上げたことに対するそれらしい言い訳はこの辺にして、早速ミニツアーに向かう。
下北山村のNPO法人「サポートきなり」で鹿革を触ってそのやわらかさに驚いたり、何に使えるだろうと考えたり、手づくりのカワラケツメイ茶をいただきホッとしたり、雑味がまだあるとか、この雑味が逆に好きだとか話したり。
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その後は池神社(注ぎ込む谷も出てゆく川もないという不思議な池!)でちょっと森林浴をしたり、池原ダムを真上から見て足元がヒュッとなったり(真下から見上げる高さ110メートルの壁も圧巻!)、つり橋を渡ったり、川をながめたり、空き家を見たり、養殖されているアマゴを見たり、ぽこぽん図書館に行ったり、春まな定食をいただいたりなどなど盛沢山だった。
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こんなに盛沢山の内容なのに疲れていないのは、きっとこの村やこの村の人に流れるゆったりした空気のせいだと思う。
スピード感はあるのだけどせかせかしていない。なかなかハードな内容を話している時でも、表情にも会話にも張りつめた感じやピリッとした感じが一切ない。
忘れないうちに家族で復習下北山村ミニツア―
一方、私がミニツアーに行っている間夫とこどもたちは車で40分ほどの距離にある三重県熊野市のスーパーへ買い出しに。(ここが最寄りのスーパーとなる)
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途中海に寄り道したりしてとても気持ちよかったらしい。
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帰ったら3人ともお昼寝していた。
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その間に私は少しBIYORIで仕事を進めて、子どもたちが起きてきたら午前中にツアーで連れていってもらった場所に今度は家族で向かう。午前中に聞いたことを自分の知識としてドヤ顔で家族に説明するも誰一人として聞いていない。
「このダムの壁の高さ何メートルだと思う?」という質問に対して夫は
「え!そうなん?」
などと返してくるし、息子にいたっては
「お母さんはいつからおじさんなの?」
などと神経を逆撫でする逆質問をしてくるありさま。
まぁいい。知りたいと思った時にしか覚えないものだよね。
下北山スポーツ公園のわんぱくランドは大人も心がはしゃいでしまうような場所だ。
木が贅沢に使われていて気持ちがいい。
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ダムで再び足元がひゅっとなったりして気が済むまで遊んだら、家に帰り私は夜のBIYORIでもう一仕事。
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夜のBIYORIはお酒が飲みたくなるような雰囲気で、これまた素敵。
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夜ごはんの後は満天の星を観て今日はおしまい
夫がスーパーで調達したしらすを使ってしらす丼をつくりBIYORIまで持ってきてくれた。(BIYORIにはキッチンもある)
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みんなでそのままいただきますをした後は、また一仕事。
仕事を終えたら、星が綺麗に見えるよ、と教えてもらったスポットへ。
レジャーシートとランプとコーヒーをもって、真っ暗な広場で教えてもらったように仰向けに寝転んでみる。
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これが満天の星というのか、と思った。
星は本当にキラキラしているものなんだな、とも思った。
少し怖いほどだ。
自然の美しさは怖いものなのかもしれない。
胸がいっぱいだ。
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携帯のカメラじゃなくもっといいカメラが欲しいと思ったけれど、わざわざ写真に閉じ込めなくてもいいのかもしれない。
思い出にするにはもったいない。2、3枚撮って、またここに来たいときにこよう。
しばらく寝っ転がっていたら、子どもたちがウトウトしはじめた。
起こすと、家に帰ってあたたかい牛乳を飲みたいと言う。
私も実はコーヒーじゃなくてちょっとお酒が飲みたいと思っていたから帰ることにする。
今日はこれでおしまい。
こんなに小さな村で、特に大きな何かが沢山あるわけではない。
なのになぜこんなに時間が足りないのだろう。
一度でも体験出来て良かった、で終わらないからだろうか。
いつでも何度でも見ていたいからだろうか。
そこまで欲がない生活を送っているつもりだが、ここではつい欲張ってしまう。
多分私は今日すべき仕事を一切しなかったとしても、そのことについて全く後悔しなかったと思う。
下北村山はうつくしい。
つづく
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