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100年前のレシピ本を訳してみます29・C. 野菜とジャガイモの料理 I.野菜①
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100年前のレシピ本を訳してみます29・C. 野菜とジャガイモの料理 I.野菜①

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 やっと3つ目の章(C)に入ります。野菜とジャガイモの料理です。この「野菜」と「じゃがいも」と分けているところがドイツっぽいと思いました。ジャガイモって野菜の一つではありますが、完全に野菜に入りきらないポジションにありますね。現在の野菜などの統計をたまに見ても、ジャガイモは野菜と分けられていることがよくあります。
 今回は1~15までです。

1. 野菜の下ごしらえのルール

 野菜はすべてできるだけ新鮮なものを使い、慎重に選んできれいにし、隅々までよく洗います。その際、栄養となる塩分が浸出しないよう、長く水に浸けるのは避けます。根菜はすべて切る前に丁寧に洗います。水気をきった野菜は常に沸騰したお湯か肉のブイヨンに入れ、お湯がきちんと沸騰するよう、いくつかに分けて入れます。こうすると茹でる野菜を素早く柔らかく茹でることができ、栄養分や香りを失わずに済みます。香りを保つには野菜をゆっくりと、きちんと蓋をした鍋で火を止めずに茹でます。差し水をするのは、ぼこぼこ沸騰させるには必要ではありますが、控えておきます。蒸気で野菜を蒸すには、私はクヴェトリンブルクのアルント社製の野菜鍋を使いますが、良い味と香りを素晴らしく保ってくれます。

クヴェトリンブルクのアルント社ですが、おそらくこちらの会社かなと。金属製の台所用品などを作っていたようです。

 じっくり茹でるのは、辛みとガスを生じる性質を持つキャベツとカブ類だけにします。ただそれによって大切な栄養塩類が失われていくのは隠しようのない事実です。そのため茹でるお湯は少なめにし、短時間でゆで上げます。栄養塩類の損失を埋め合わせたい場合は、Dr.ラーマンの植物性栄養塩エキスを少々加えるとよいでしょう。

Dr.ラーマンとはこの方だと思われます。Johann Heinrich Lahmann (1860年 ブレーメン生まれ~1905年フリードリヒスタール) 医師であり自然治療家でもあったようです。
https://de.wikipedia.org/wiki/Heinrich_Lahmann#Medizinische_Sicht
 この方は植物性ミルクも開発しているのですね。下の画像がそれです。最近日本でも出てきているアーモンドミルクです。乳幼児用らしく、価格もお手頃、母乳や牛乳の代用になると書いてあります。

Wikipedia CC BY-SA 4.0

 ほぼすべての野菜にとって最良の油脂はもちろんバターですが、もはや高価でなかなか買えません。腎臓の脂とバター、植物性バター、キャベツ類のいくつかにはラード、ヘットやベーコンの脂で代用しましょう。代用油脂は野菜を入れる前に茹で湯に加え、最後盛り付ける前に新鮮なバターをひとかけら混ぜ入れ、野菜に上品なバターの風味を付けます。
 とろみをつけるには色の薄いあるいは濃いルーが一番よく、茹でた野菜と一緒にさっと火を通し、卵黄は加熱し過ぎて固まらないよう、野菜を盛り付けてから混ぜ込みます。
 茹でた野菜は味を損なうことなく、盛り付けるまで置いておくことができます。ただ蒸すまたは湯煎にかけて温め直す必要があります。湯煎はしっかり中まで温まるまでかけます。バターひとかけらとリービッヒの肉エキス少々を盛り付ける前に混ぜ入れるのがおすすめです。
 塩ゆでにする野菜はどれも-豆、菜種科の葉など-はまず柔らかく茹で、濾し器の上で沸騰したお湯に入れ、その上でソースと一緒に火を通します。

2.ほうれん草

 きれいにしたほうれん草を深い器に入れ、3~4度十分な水で洗います。そしてきれいな色を保つよう、5分だけ塩を入れ沸騰したお湯で蓋をせず茹でます。すぐに冷水にとってザルで水気を切り、穴杓子で強く押して水気を絞り、細かくみじん切りにします。植物性バターを少々熱し、粉あるいはパンくずを入れてしばらく炒め、ほうれん草とナツメグ、新鮮なバター少々を入れて、よく混ぜながら必要であれば塩を振って、肉のブイヨンか水を少々加えてよく火を通します。
 男性の多くにはやや軟弱な味に感じられがちなほうれん草ですが、セイヨウアサツキ(チャイブ)、マギー調味料、あるいはバターで炒めた玉ねぎを加えて味を引き締めることができます。
 ほうれん草にはいろいろな物を添えることができます。最も簡単なのはパンを三角形に切ってトーストしたものやプルーンくらいに柔らかく茹でた卵を4等分にしたものがあります。
 オムレツ、あばら肉、流行のクルステン(D.肉料理)、牛モモのマル、ソーセージ、焼いたり燻製したりした牛タン、魚のクラプフェン、魚団子、焼いたタラのしっぽ、腎臓のスライス、豚のソーセージ、ハムのファルスのプリンゼ、焼いたレバーがよい付け合せとなります。

「牛モモのマル」がこちらです。
Frikandeausというドイツ語(元はフランス語から)にあたる部位が位置的にこれかなと。

3.ヴィ―ル風ほうれん草

 よく選びきれいにしたほうれん草を、水分は一切加えずに適度な鍋に、できるだめ密に押し込みます。熱いコンロのそばに置き、自らの十分な水分が出てきたら、弱火にかけて蒸します。そして細かく切り、溶かしバター、リービッヒの肉エキス少々、カイエンペッパー少々、塩を加えて火を通しながら混ぜ合わせ、すぐに卵と白パンのトーストを添えて盛り付けます。-このように調理すれば、茹でると失われるほうれん草の栄養塩類が完全に保持できます。

この「ヴィ―ル」が謎で、この料理名で検索しても何も見つかりませんし、ヴィ―ル(Wiel)で探しても地名としてはオーストリアの小さな村くらいしかなく、当時はあった場所のことなのか、それとも人名なのか。
この時代にいた人で胃病を専門としたWielという医師が見つかりました。胃の弱い人のための食事について本を書いているようなので、もしかしたらこの人がこのレシピの考案者なのかも?著書が見れればいいのですが

4.フランス風ほうれん草

 ほうれん草をルール3に沿って茹で、細かく刻みます。バターをふんわり攪拌し、固ゆで卵の黄身を濾して加え、ナツメグと塩少々を入れ、ほうれん草をこれらと一緒に合わせて火にかけます。茶色の肉汁ソースを大さじ何杯か加えるとしっかりした味がつきます。上品な料理ではこのほうれん草を、焼いた子牛の胸腺に付け合せます。

ルール3がどれか分かりません。上の3番目のレシピのことなのかな・・

5.ほうれん草と米

 250gの米を水で何度か湯がいたあと、牛乳か薄い肉のブイヨンで芯が残る程度に柔らかく茹で、3個分の溶き卵とサワークリーム大さじ数杯を合わせて混ぜ合わせます。先の通りにほうれん草を4リットル分茹でて刻み、溶かしバターでしんなり炒め、上質なコショウとおろしたチーズで味付けし、おろした丸パンを大さじ数杯加えて混ぜ込みます。米とほうれん草を、バターを塗った型に交互に敷き詰めて30分焼き、型から出して茶色の肉汁ソースをかけ、焼いたチキンまたは子牛のあばら骨に添えます。

グラタンやドリアみたいな料理でしょうか

6.残ったほうれん草の型蒸し
 
 調理したほうれん草の残りに卵黄2個、白い基本のソース大さじ数杯、おろした丸パン、刻んで炒めたキノコと混ぜ合わせ、バターを塗った小さなカップ煮詰めて、30分湯煎にかけたらカップから出し、ローストポテトと焼いたハムに添えます。

7.ほうれん草の茎

 ほうれん草が花から種になり、料理に使えなくなってしまったら、皮をむいてアブラナのように細かく切ったほうれん草の茎は美味しい野菜となります。柔らかく茹でて水に取り、しっかり水気を絞ってカリフラワーのように(42番参照)蒸し煮します。
 調理時間は1時間です。

8.キャラウェイとキャベツ

 キャラウェイの若芽をよく洗い、水と重炭酸ソーダで煮たらザルに取って水をかけ、穴杓子で押すようにして水気を絞ります。クーネロールを熱し、粉を入れて黄色く炒めて熱湯を注いでとろみのあるルーを作り、塩とナツメグを加え、キャベツを入れてしんなり炒め、バターをひとかけら入れて混ぜます。ローストポテトを加えます。合わせるのはどんな肉でもよいです。
 キャラウェイキャベツにはベーコンを入れてもよいです。しばらく火にかけ、茹でていないキャベツを燕麦と塩を振りながら重ねていき、手短に柔らかくなるまで火を通します。

 キャラウェイの芽を食べるというのは初めて見ました。キャラウェイのあの香りはあるのでしょうか・・市販のキャラウェイを撒いたら芽が出ますでしょうか。ちょっとやってみたいですね。
 クーネロールはヤシ油のブランドです。1912年の広告がこちらです。

Wikipedia

9.緑または茶色の冬キャベツ(ケール)の芽

 冬キャベツ(ケール)を(春に)きれいにして洗い、束ねて塩を入れた少々のお湯で茹で、ザルに取ります。繊維を取り除いて熱い器に盛り、細かく潰したラスクとナツメグを振りかけ、酸味のある卵ソースを添えます。このキャベツは芽キャベツのように調理してもよく、またブレーメンのブラウンキャベツのように、柔らかいため短時間で茹でてもよいです。調理時間は15分です。
 燻製肉、フリカンデル、グリルソーセージ、詰め物をした子牛の胸肉、レバー、腎臓、卵焼き、スクランブルエッグ、パンケーキ、プリンゼが合います。

 フリカンデルはオランダの挽肉を棒状にしたものです。
日本語の解説サイトがあります。こちらです
 プリンゼ(Plinse)はドイツのパンケーキの一種です。

10. ホップ

 地上に出ている部分がまだ白い、ホップのごく若い芽をきれいにして束ね、塩を入れた少なめの湯で茹でてザルに取り、繊維を取り除きます。ホップの芽はアミガサタケを入れたオランダ風ソースに入れて火を通す、または溶かしバターに入れて和え、コショウを振っていただきます。
 付け合せには焼いた魚、あばら肉、燻製肉、スクランブルエッグ、肉の残りを入れたオムレツ、焼いた鳩が挙げられます。

ホップの若芽を食べるのは、今でもホップを栽培する地域では行われています。こちらにいい画像があります。

11.ハマアカザ(ヤマホウレンソウ)

 この植物の葉はほうれん草のように下ごしらえし、しばしばほうれん草と同じ分量で合わせて使われますが、これは特におすすめです。
 ハマアカザは茹でたあと、卵ソース(R章)で和え、ローストポテトを添えます。
 ほうれん草やスイバと同じような付け合せを選ぶとよいです。

ハマアカザ(ヤマホウレンソウ)って日本では馴染みのない植物ですよね。こんな草です。いろんな種類があるそうです。

12.セイヨウノダイコン
 
 セイヨウノダイコンは春に雑草として庭や畑に育つ草です。若草をほうれん草のように調理するのをぜひお薦めします。セイヨウノダイコン同様、チコリやタンポポ(蒲公英)の若い葉-そして驚くなかれ、セイヨウイラクサの最初の芽でさえも-ほうれん草のように調理すると美味しい野菜です。どんな付け合せも合います。
 調理時間は15分~30分です。

セイヨウノダイコンも聞きなれない言葉ですね。大根のような太い根っこができるわけではなく、花もちょっと菜種に似てます。

13.スイバ

 
大きめの新鮮な葉を茎から切り取り、茎は除去します。砂っぽいものが付いているため、たっぷりの水で葉を数回洗います。水に入れて火にかけ、柔らかくなりすぎないよう、沸騰前に火から下ろしてザルにあけます。酸味が水に浸出し、ザルの上で穴杓子で水分を押し出したら、バターを熱して小麦粉を炒め、卵黄1~2個、塩、ナツメグを加えたクリームか牛乳をカップ2杯注ぎ入れ火を通します。水っぽくならずまとまった質感になるようにします。バターでローストした白パンの細切りを表面に敷き詰めます。
 スイバは茹でた後、薄い色のルーに肉ブイヨン、コショウ、玉ねぎのすりおろし少々を加えて作ったソースに入れて温めてもよいです。
 調理時間は30分です。
 付け合せ:あばら肉、舌、燻製肉、加熱ハム、レバー、腎臓、残り肉のオムレツ、焼いたり煮たりした羊

スイバは蓚、酸い葉と書きます。酸味のある葉っぱで、私の田舎ではスカンポと呼ばれ、子供の頃は茎をかじったりしていました。
ドイツではSauerampfer(sauer=酸っぱい、Ampfer=スイバ属)といい、いろいろな料理に使われます。私はジャガイモと一緒にサワークリームで和えるサラダを作ったことがあります。フランクフルトの名物「Frankfurter Grünen Soße(フランクフルト風グリーンソース)」というハーブソースにも使われます。

14.スイバのピューレ

 丁寧に選り分けて洗ったスイバを熱湯で茹でてザルに取り、冷水をかけてしっかり水気を絞り、濾し器にかけます。できたピューレを適した鍋に入れ、粉を振りかけ新鮮なバターひとかけらとしっかりした味付けの肉ブイヨンを大さじ数杯、塩、ナツメグ、砂糖一つまみを混ぜ入れ、かき混ぜながら弱火で火を通します。ほうれん草と半分ずつで作ってもよいです。

15.カブの葉

 
カブの葉を茎から切り外し(とても若い葉の場合は茎がついたままでも大丈夫です)、洗って葉の隆起を細かく切り、軽く塩を入れたお湯で柔らかく茹でます。水気をきったら茎を細かく刻み粉をふってバターで炒め、牛乳か塩漬け肉のブイヨンを加えて煮ます。カブの葉を入れて火を通し、ナツメグで味付けします。あらかじめ浸透装置で塩抜きをせずに塩漬け肉のブイヨンを使う場合は、塩を入れる必要はありません。
 付け合わせにはあばら肉、シュニッツェル、フリカンデル、加熱または生ハム、腎臓です。
 簡単に調理するには、カブの葉を肉やジャガイモと一緒に煮込みます。燻製ベーコンまたは脂身の多い豚肉を1時間先に煮ておき、皮を剥いたジャガイモとあらかじめ柔らかく茹でておいたカブの葉を加え、すべてをじっくり柔らかく煮込みます。肉は器の真ん中に盛り付け、野菜は生のジャガイモ1~3個のすりおろしを加えてとろみを付けたあと、肉のまわりに盛り付けます。ベーコンはスライスしてきつね色に焼き、出た脂は野菜用のソースを作るのに使い、ベーコンは塩ゆでジャガイモに添えます。

ドイツ語でRübstielやStielmusといい、アブラナ科の植物です。カブの若い葉や茎を指すことが多い、とドイツ版ウィキペディアには書いてあります。それに似た仲間のブラッシカ・ラパのことも指すようです。
日本でも菜種の葉やつぼみを食べたりしますので、なんか似ていますよね。

もう一つ興味深かったのは「シュニッツェル」で、原文には「Schnitzel」ではなく「Eskalope」とありました。フランス語の「escalope」をドイツ語風に綴った言葉ですが、フランス語風に言うのが流行っていたのか普通だったのか、どうなんでしょうね。
ちなみにこの本の肉料理のところでは、ウィーン風シュニッツェルのレシピが出て来ます。

今回はここまで。この章も長いので先がまだ長いですががんばります。

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ドイツの食に関わる仕事です。共訳『ビア・マーグスービールに魅せられた修道士』、著書『ドイツパン大全』(グルマン世界料理本大賞 パン部門優勝)、『ドイツ菓子図鑑』、『フォトエッセイとイラストで楽しむちいさなカタコト*ドイツ語ノート』