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墓場珈琲店。

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現代社会における『死』をテーマとした、フィクションの短編集です。抵抗のある方はご遠慮ください。
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2020年10月の記事一覧

墓場珈琲店。

墓場珈琲店。

霜のように張り詰めた空気。
降り積もる雪。
悴む手。

長靴が雪を踏みつける感触を確かに感じながら、俺は歩いていた。

今日はクリスマス。
まるで光の粒子があたり一面に飛び散ったみたいに、
町は煌びやかに輝いている。

そんな中、無論、俺の心も弾んでいた。

クリスマスで心が弾む、と聞けば、考えられるのは一つだけだろう。
そう、俺は今日、とある女に告白をするのだ。

アルバイトで忙しげな学生、

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墓場珈琲店2。

墓場珈琲店2。

俺の人生を一言で評価しろと言われたら、俺は間違いなく『最悪』の一言だけで説明を終わらせるだろう。

俺はそう思って、空を見上げた。

クソみたいな曇天が広がっている。
降りゆく雪が俺の眉毛や唇に当たり、積もってゆく。

こんな寒い日なのに、町は活気づいていて、楽しげだった。
積もった雪で遊ぶ子供やそれをよそに雪かきに勤しむ大人たちは、みんなマフラーと手袋をつけている。

今日は12月31日。
言わ

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