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月刊「読んでみましたアジア本」

日本で出版されたアジア関連書籍の感想。時には映画などの書籍以外の表現方法を取り上げます。わたし自身の中華圏での経験も折り込んでご紹介。2018年までメルマガ「ぶんぶくちゃいな」(…
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#ケンリュウ

【読んでみましたアジア本】自粛生活の窓の外に広がる風景を楽しむために/ケン・リュウ(編)『月の光 現代中国SFアンソロジー』(早川書房)

「SF小説よりも現実は奇なり」を地で行く非常事態下のみなさま、いかがお過ごしですか?

「三密」とか「ソーシャル・ディスタンシング」(「ディスタンス」は間違い)とか「医療崩壊」とか、もう聞き飽きたーーーーーー!という人が増えている。一応、頭では理解して通知を守り、それなりに運動もしているけれど、はっきり言って自粛生活に耐えきれなくなっている人は多いはず。

そこにゴールデンウィークと言われても、実

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【読んでみましたアジア本】出自と記憶、知識とイマジネーションを駆使して自由で多面的なSF世界:ケン・リュウ『生まれ変わり』

今年から、もっとアジア全体のことを知りたくて、この書評号も「読んでみましたアジア本」とタイトルまで変えたのに、どうもパンチのあるアジア本がなくて困っている。

一般の理解につながるものを、という主旨なので、研究者が書く堅苦しい学術書は基本的に手に取るつもりはなく、もちろん旅行観光本もさすがに「読んでみました」といえるものではないので除外。あと、極端な感情をほとぼらせ、読者もそのムードに巻き込むこと

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【読んでみました中国本】2019年を前に読んでおきたい中国本

2018年の「読んでみました」でご紹介した中から、これから読むならおススメの5冊を選んでご紹介します。

個人的には今年選んだ本は基本的に一定レベルを抑えた本ばかりだったと思います。必ずしも新刊本ばかり意識しているつもりはなく、今年は思い切って1992年に日本で翻訳出版された民主活動家、故・劉暁波氏の『現代中国人批判』を取り上げたりもしました。

原稿自体は30年前に書かれたものですが、今読んでも

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【読んでみました中国本】 「政治的分析はお控えください」――でもやっぱり比較してしまう面白さ:ケン・リュウ(編)「折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー」(早川書房)

◎ケン・リュウ(編)「折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー」(早川書房)

正直な話、この本を読むまで中国作家のSF作品がこんなに面白いとはこれまでまったく知らなかった。

この「読んでみました中国本」で何度も書いてきたとおり、わたしは大人になってからほとんど小説を読まなくなった。なので大人になってから暮らすようになった香港や中国でも、あまり当地の小説には関心を払ってこなかった。

だいたい、

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