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月刊「ぶんぶくちゃいなノオト」

メルマガ「「§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな」(祭日を除く第1、2,4土曜日配信、なお第2,4土曜日が祝日の月は第3土曜日に追加配信/月ほぼ3回/年始年末は配信お…
中華圏の現地でどのような注目の話題があるのか。必ずしも日本とは関係のない、また日本では話題にならな…
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#香港

【ぶんぶくちゃいな】パリ五輪を通じて見えてきた、 両岸三地それぞれの「生態」系

7月26日に開幕したパリ五輪も本稿執筆時においてそろそろ終幕。2週間前には予想もしていなかったドラマやヒーローが次々に生まれ、新しいスポーツの話題や課題をもたらした。

そこで起きた出来事に口から泡を飛ばして激論した人もいたことだろうが、考えてみるとオリンピックとは政治的な表明は認められていないけれども、4年に1度のタイミングでこうして世相や課題を目の当たりにさせ、少なくともそこで提起された出来事

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【ぶんぶくちゃいな】崩れ去る価値観、なにが香港を支えていくのか

6月に香港を訪れ、その際に気づいた香港の変化、それもあまり好ましくない変化について「香港の『劣化』とそこに生きる人たち」でまとめた。

考えてみると、2019年のデモから今年でまるまる5年。この夏は「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)の施行からさらに4年が過ぎた。この2つの出来事をきっかけにまず選挙や議会制度、そして社会団体やメディアなど、目に見える社会事象の変化が起きた。さらにその後、そん

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【ぶんぶくちゃいな】香港最新見聞:香港の「劣化」とそこに生きる人たち

【ぶんぶくちゃいな】香港最新見聞:香港の「劣化」とそこに生きる人たち

ちょっとバタバタが続いている中でスキを見つけて、香港に行ってきた。昨年もちょうどこの時期にあるメディアの現地取材のお手伝いで香港入りしていたので、約1年ぶりの現地入りとなった。

行ってみての正直な感想は、「香港が劣化している」ということ。この「劣化」というのはそこで暮らす人たち自身が望んだものではなく、とにかく全体が「いろんなことに手が回らなくなっている」という印象を受けた。

まず、今回は近頃

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240617 ポリタスTV配信「香港大規模デモから5年 そこに至る過程と香港の現在」

今年の6月9日は奇しくも5年前と同じ日曜日。5年前のこの日、香港では「逃亡犯条例」の改定を巡って100万人を超える市民が反対の声を上げてデモ行進しました。そう、香港の運命を大きく変えるきっかけになった2019年デモの「幕開け」ともいえる大行動が起きた日でした。

5年後のこの日、広島のブックカフェ「ハチドリ舎」で、津田大介さん、そして元朝日新聞記者の宮崎園子さんと香港の話をしました。

宮崎さんと

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【ぶんぶくちゃいな】大規模デモから5年、変わり行く香港の政治システム

今年6月4日は1989年の天安門事件発生から35周年にあたった。

その翌年の1990年から毎年この日、事件の犠牲者追悼と血なまぐさい鎮圧に抗議する集会が香港で開かれてきた。長年のうちに出席者の数も毎年かなり増減しつつも、20年、25年、30年などの節目には必ず目立ってその数が増え、人々が決して「忘れていない」ことを示してきた。そして毎年の出席者数の増減は市民の香港及び中国政府に対する不満のありよ

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【ぶんぶくちゃいな】前代未聞! 香港スパイ事件

とうとう、香港でも中国国内並みにVPN(Virtual Private Network)を利用しなければ、「自由なインターネット」を楽しむことができなくなってきた。

「週刊中国ニュースクリップ(2024/5/12-18)」でも取り上げたが、5月15日、YouTubeが2019年の反政府デモの「テーマソング」と呼ばれてきた「願栄光帰香港」(香港に栄光あれ)を使った動画32本への香港からのアクセスを

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【ぶんぶくちゃいな】「歌う王族」香港政府を魅了する中東王子

3月末から4月初めの週にかけて、香港と中国はそれぞれ、前者がイースター連休(3月29日から4月1日)、後者は清明節連休(4月4日から6日)と連休続き。メディアもそれに合わせて休日配信体制に入ってしまい、ニュースチェックの感覚がちょっと狂ってしまった。

おかげで大変なニュースをうっかり見落としてしまっていた。

そのニュースとは、イースター休み明けの4月2日、香港株式取引所では3月末までに2023

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240326 【現代ビジネス】寄稿:“ソフトパワー戦争”でも「中国の苦しい立場」が浮き彫りに...東南アジアをかき回した「テイラー・スウィフト争奪戦」

日頃から英語(系)メディアを読んでいる方はさんざん目にしたはずの話題なんですが、日本語メディアにほとんど真剣に取り上げられている様子がなかったので、書きました。たぶん、日本のマスメディアには、記事中の香港議員たちと同じように薄ら笑いして「エンタメ話題」程度としか思われていなかったんだろうな……

実は、テイラー・スウィフトのシンガポール公演がアジアに与えた衝撃はすごかったんですよ。もちろん、その動

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【ぶんぶくちゃいな】国家安全条例施行、国際金融都市・香港はいったいどこへ行く?

2024年3月23日、香港の憲法と呼ばれる「香港基本法」第23条に基づき制定された、「国家安全維持条例」(以下、国安条例)が施行された。

同23条の条文にはもともとこう書かれていた(翻訳は筆者)。

今回制定された国安条例とは、この条文で触れられている行為を禁止することを目的に制定された香港独自の法令で、2020年6月に中国人民代表大会で可決された「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)とは別

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【ぶんぶくちゃいな】「Hong Kong is over」がもたらした激震

「Hong Kong is over.」(香港は終わった)と書かれた記事が香港で大激論を巻き起こしている。

記事を書いたのはスティーブン・ローチ氏、元モルガン・スタンレーのアジア地区主席アナリストで、現在は米エール大学の教授を務めている。2007年から12年まで香港を拠点としてアジアの経済分析を担当し、中国に対してどちらかというと楽観的、好意的な論を展開する中国経済専門家としてその名前を知られて

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【ぶんぶくちゃいな】「メッシ欠場は海外組織の陰謀」論が傷つけた香港ビジネス環境

【ぶんぶくちゃいな】「メッシ欠場は海外組織の陰謀」論が傷つけた香港ビジネス環境

すでに日本のメディアも多く取り上げて報道しているが、2月4日に香港大球場で行われたサッカー親善試合の「インテル・マイアミCF(以下、「インテル・マイアミ」)対香港選抜チーム」が大変な騒ぎに発展している。

きっかけになったのは、今サッカー界で人気絶頂のリオネル・メッシ選手とルイス・スアレス選手がベンチに座ったまま出場しなかったことだ。試合は4対1でインテル・マイアミ側の勝利で終わったが、超人気選手

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240210 【ダイヤモンド・オンライン】寄稿:「カネ返せ!」メッシの試合欠場に中国人が大激怒、でも香港人は薄ら笑いのワケ

先週日曜日(2月4日)に香港大球場で行なわれた、インテル・マイアミと香港選抜チームとのサッカー親善試合が大騒ぎを引き起こしています。事態はまだまだ動いていますが、昨9日までの最新裏話をまとめました。

なお、本日配信予定のメルマガ「§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな」では、その後続情報とこの記事には書ききれなかった、この事件で見えてきた香港及びその経済を巡るさらに深刻な事情、そしてそ

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【ぶんぶくちゃいな】香港区議会選挙の「制度完備」で見えてきた新「下剋上」

香港区議会選挙が今月10日に投票を終えた。

2019年末に行われた前回選挙では、同年6月以降続いた、アンチ政府デモの勢いに乗って民主派が新人候補も含めて全議席の8割を獲得したが、今回の選挙の目的はほぼ、そうした民主派の存在を公的機関から一掃することに置き換えられていることは、「【ぶんぶくちゃいな】仕組まれた権力の罠:『一国二制度』下の香港区議会選挙」ですでに述べたとおりだ。今回はその結果、見えて

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【ぶんぶくちゃいな】『時代の行動者たち』刊行:2019年デモ、香港市民はなぜ、そしてどのように支えたのか

【ぶんぶくちゃいな】『時代の行動者たち』刊行:2019年デモ、香港市民はなぜ、そしてどのように支えたのか

日々、香港のニュースに目をやるごとにやるせなさばかりが先に立つ。

先日も、学齢期の子どもの4人に1人が過去1年間に精神障害による疾患を抱えているという調査報告に激震した。子どもの自殺もここ数年極端に増えており、それはもちろん、直接は彼らの悩みを解決するための手段がないことから来る絶望感によるものなのだが、学校も友だちも家族も、あるいはもっと身近な親戚たちにも相談相手がいないか、あるいは真剣に聞い

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