見出し画像

【SFアイデアノート】宇宙文明移動・宗教的種分化

以下全てフィクションであり、SFのネタを書きます。小説のような体裁を取っています。

架空の人物、宇宙社会生物学者・文明移動学派(*)のロイス・ジョンソンの著書『文明移動』の冒頭部

「宇宙の彼方へ人類を送ることは、植物が種子を遠くへ送り出すことと似ている。自分の遺伝子を他の場所に根付かせることで自分の領域を増やし王者へとのし上がるのだ。ただ一つ違うのは、植物はダーウィンの自然選択が散布の基本原理になっているのに対して、人類種散布は明らかに進化の基盤となる自然選択が働いていないということだ。人類は種単位の根本的利己意識に駆動され外へと向かっていく。我らの文明は圧倒的に利己的なのだ。そしてその利己性が我らを宇宙へと向かわせ、新たな地で新たな生態系、社会、文明が誕生していくのだ。」

宇宙圏で生命が誕生し文明が発展していく原理には大きく分けて二つの学派があった。
ダーウィン学派文明移動学派だ。
ダーウィン学派は、生命の誕生を完全な偶発的、自然発生的に起こるものとして、地球で起きた生命誕生から文明発展までの過程が生命が存在する別の惑星にも適用できるとするものだ。
対して、文明移動学派はロイス・ジョンソンの師である宇宙社会学者ブリジット・ベンジミールが唱え、ロイスが発展させたものだ。
生命の誕生および文明発展は、偶発的に発生した文明社会が高度技術を用いた移動(惑星間航行など)により新しい場所に文明が移植されることを原理にもつと主張したものだ。

二つの説は数十年前から激しく対立しており、データが圧倒的に不十分であることからどちらの説も間違いではなく文明発生の一原理として認められている。
他にも、進化的な文明発展と種の移動および技術基盤の移動により文明誕生が徐々に早くなっていくことを唱えたルーン学派がいる。


そして現代。文明移動学派の主張するところの移動によって人類は系内惑星に文明を送り込んでいる。

すでに月、火星、金星、には完了しており、次は火星トロヤ群に足を伸ばそうとしていた。

ただここで一つの問題が浮かび上がった。
種分化の問題だ。
遠く離れた場所に住む同じ種は交配がないまま時が経つと異なる種に分かれていくことが報告されている。ダーウィンフィンチなどが有名な例だ。
時間スケールは10-100世代で起きるとされている。
文明移動計画が出た時点で度々議論されていたが、数年に一度大規模な遺伝子交換を行えばいいだろうと細かいことは話し合われなかった。
何年おきにするかを考えているうちに20年が経ち、いざメンバーを交換するとなった時点で問題が起きた。

求愛行動、いわゆる恋愛が全く現れてこないのだ。
当時、遺伝子のみの交換による体外妊娠(受精卵培養)が世界的に受け入れられておらず、自由恋愛、あるいは間接的な要因を操作した部分的強制恋愛により繁殖が行われていた。
繁殖の前提として性行為に及ぼうとするかどうかが重要になってくる。
ただ、人口が多いこともあり文化的に対立する集団間でも一定数の繁殖は行われるはずだった。

また20年しか経っていないので生物学的な種分化が起きているはずもなく形態的にも遺伝子的にも異変はないとわかった。

さまざまな研究者がこの問題に取り組んだ結果、一つの要因が提案された。
宗教的種分化というものだ。

宇宙空間は地球という惑星環境に比べ精神的負荷が大きい。
宇宙空間を漂っていると宇宙の深淵に、世界の神秘に想いを馳せることが増えてくる。その結果各集団で宗教が独特に発生し進化してきた。
宗教価値観が集団の思想を変え、他集団を受け付けなくなった。

体、形は同じなのに心がどうしても通じ合わない。
多様性と呼ぶには離れすぎた価値観はさらなる分断を生み、200年ほど経ったころ遂に遺伝的にも種分化が起きた。

各惑星は独自の宗教体系を確立し、惑星間の関係は同じ民族という意識からビジネス的な無機質な関係へと変わっていく。

圧倒的に異なる価値観が蠢く世界の話。

宗教体系をどうするか。
どういう惑星間の繋がりにするか。
どういうストーリーにするかが大事になりそう。

この記事が参加している募集

宇宙SF

生物がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?