佐藤陽一

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記事一覧

高校・要望書 2022

貴職におかれましては千葉県のインクルーシブ教育の推進への御尽力に心より敬意を表します。 令和4年度の入学者選抜においては、定時制高校の二次募集と追加募集において…

佐藤陽一
1年前
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《就学相談会のためのメモ》(その3)

 《45分の話》           □ 《いつもは「親」に向けて話している「45分の話」を、「教師向け」に書いてみた。この「45分の話」なら、「45分座っていな…

佐藤陽一
3年前

就学相談会のためのメモ・安全とつながりのために》(その2)

《45分座っていられるかな》  ふつう学級への心配の一つがこの「45分」の話です。その先にはこんな言葉がつづきます。「ついていけるかな」、「迷惑をかけるんじゃないか…

佐藤陽一
3年前
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《ようこそ就学相談会へ 2021》

今年の就学相談会3つ。 6月27日柏市。 7月11日千葉市。 9月12日千葉市。         □ 相談会の新しい資料を作るためのメモ。 A~Qの話題について話した…

佐藤陽一
3年前
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9年目の運動会

探さずとも見つかるこの子を はじめて探した日 目を奪われたのは つながりに咲く花だった どの子もみんな、互いの笑顔を映す花 この子もおなじ、みんなの笑顔を映す花 …

佐藤陽一
3年前

《定員内不合格というばかげた制度》

「その社会が、それをばかげたことと思うくらい成熟するまでは、個人でそこを抜け出すのは難しい人もいるのでしょう。それは個人の問題というよりは、文化の問題であり、そ…

佐藤陽一
3年前

《今年の就学相談会》(その4) 《やまゆり園事件と川崎の就学裁判のこと》

「ふつう学級」の世界を知らない親は多い。 「ふつう学級に行けるんですか?」「行ってもいいんですか?」「夢のようです」という人さえいる。 そして、「ふつう学級に行か…

佐藤陽一
3年前

今年の就学相談会(その3)

《たくさんの「だいじょうぶ」をくれた歩さんへ》 親は子どもに笑っていてほしい。だから、「いじめられますよ」と脅される場所に行かせたくはない。それに、教育委員会や…

佐藤陽一
3年前
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この子のつながりを(その2)

「分けられたのは自分のせいだと、あのとき思ってしまったんだよね。それは、もちろん本当のことではないんだけど…いまもそういうふうに感じてるんだよね」 「誰かを大切…

佐藤陽一
3年前

この子のつながりを

「先生、この子はふつう学級に行かせようと思うの」  電話の声が聞こえる。 「お兄ちゃんの時はだまされたから」  三十三年前から声が届く。       ◇ 「先生は…

佐藤陽一
3年前
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つながりに咲く花

この子の花より先に  目に飛び込んでくる花がある いつもの運動会で  すぐに見つかるはずの子が みつからないとき 目を奪われたのは  つながりに咲く花だった どの子…

佐藤陽一
3年前

ようこそ就学相談会へ その後 (2)

《子どもたちからの贈り物》 相談会で出会う子どもたちからもらった信頼は、他とは違うものだった。 一緒に遊び、笑い、話す二人の「間」で生まれるものとは違うもの。 相…

佐藤陽一
3年前

ようこそ就学相談会へ  その後(1)

《1:嵐の海と熊だらけの森》 「ふつう学級に行くのは、嵐の海に船を出すことだと思ってる?」 「それとも熊だらけの森に、子ども一人を置いてくることだと思ってる?」 …

佐藤陽一
3年前
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まなざしを重ねてつくる地図

《運動会あるある》 入学式に始まり、授業参観も合唱祭も、「うちの子はどこかしら?」と探す前に、「ここ、ここ」と目に飛び込んでくる子がいる。この子たちの親は、はじ…

佐藤陽一
3年前

ようこそ就園・就学相談会へ2020・9

昨日の相談会に来てくれたのは8家族。 0歳の子が二人に、2歳の子が一人…。 「へ? 0歳の子が二人もいるのは初めてだなぁ」 「0歳の子の両親に、わたしはどんな言葉をも…

佐藤陽一
3年前

《250年前の教育書とダメ、ぜったい!》の長いメモ

最近、250年前の教育書の言葉をよく思い出す。 【まずはじめに、ちょっとした身振りでやめるよう命令してみればよい。それでも泣き声がやまないようであれば、その時には…

佐藤陽一
3年前
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高校・要望書 2022

貴職におかれましては千葉県のインクルーシブ教育の推進への御尽力に心より敬意を表します。

令和4年度の入学者選抜においては、定時制高校の二次募集と追加募集において定員内不合格者0という結果でした。障害児の高校進学について33年話し合いを重ねてきて初めての経験でした。定時制高校が中学卒業生にとって教育のセーフティーネットとしてあることに心からの安心と喜びを実感しました。ただ全体では未だ43名の定員内

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《就学相談会のためのメモ》(その3)

 《45分の話》 

         □

《いつもは「親」に向けて話している「45分の話」を、「教師向け」に書いてみた。この「45分の話」なら、「45分座っていないこと」を、親はどんなふうに受け取るだろう?》

            □
A:「45分座っていない子が、ふつう学級でやっていくにはどうしたらいいのですか?」
B:「初めての教室では《座っていない子》も《座っている子》も、

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就学相談会のためのメモ・安全とつながりのために》(その2)

《45分座っていられるかな》 

ふつう学級への心配の一つがこの「45分」の話です。その先にはこんな言葉がつづきます。「ついていけるかな」、「迷惑をかけるんじゃないか」、「分からない授業はかわいそうかも」、「退屈なんじゃないか」、「一人でさびしい思いをしないかな」。

それにしても、「45分座っていられるか」という呪文は、どうして30年以上も同じ形で語り継がれているんだろう。

「いま3歳のこの子

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《ようこそ就学相談会へ 2021》

今年の就学相談会3つ。
6月27日柏市。

7月11日千葉市。

9月12日千葉市。

        □

相談会の新しい資料を作るためのメモ。
A~Qの話題について話したくなったら、ようこそ就学相談会へ。
          □

A《45分座っていられるか…。 それが心配?》
「45分座っていられないから」と、別の場所に行き、そこで身につく「座り方」の中身は?
それと普通学級で身に

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9年目の運動会

探さずとも見つかるこの子を はじめて探した日
目を奪われたのは つながりに咲く花だった

どの子もみんな、互いの笑顔を映す花
この子もおなじ、みんなの笑顔を映す花

見つからないことなど、一秒もなかった
目立たないことなど、一生ないと思った

違いは今もある
けれどつながりの中の同じは、はるかに豊かだった

つながりに咲く花も、季節が巡ることも、この子はここで知った
この先も、つながりの季節をくぐ

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《定員内不合格というばかげた制度》

「その社会が、それをばかげたことと思うくらい成熟するまでは、個人でそこを抜け出すのは難しい人もいるのでしょう。それは個人の問題というよりは、文化の問題であり、その社会の人権意識の差だと思います。」※

例えば、親の体罰禁止。

2000年2月。
ドイツ司法大臣ヘルタ・ドイプラー=グメリーンが、ある会議で次のように発言した。

《「我が子を愛する者はその子を鞭打つ」という古いことわざは、危険で愚かし

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《今年の就学相談会》(その4) 《やまゆり園事件と川崎の就学裁判のこと》

「ふつう学級」の世界を知らない親は多い。
「ふつう学級に行けるんですか?」「行ってもいいんですか?」「夢のようです」という人さえいる。
そして、「ふつう学級に行かせたいと願うことに、罪悪感を持たなくてよかったんですね」とつぶやく。

2021年の今も、「ふつう学級」とはそういう場所としてある。

「本人と保護者の意思が尊重される」と言われる。しかし、川崎市や神奈川県や横浜地方裁判所が、親と子どもの

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今年の就学相談会(その3)

《たくさんの「だいじょうぶ」をくれた歩さんへ》

親は子どもに笑っていてほしい。だから、「いじめられますよ」と脅される場所に行かせたくはない。それに、教育委員会や校長の中にも意地悪な人がいるとか、嘘をつく人がいるなどとは思わない。まして「友だちはできません」「自己肯定感が持てません」、と聞けば不安にもなる。それでも、私たちの会を訪れる人がいる。その親の願いもまた、「子どもに笑っていてほしいから」だ

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この子のつながりを(その2)

「分けられたのは自分のせいだと、あのとき思ってしまったんだよね。それは、もちろん本当のことではないんだけど…いまもそういうふうに感じてるんだよね」

「誰かを大切に思うほど、その人を悲しませたくないと願うだろ。だからそれが叶わないとき、私たちは自分のせいだと思ってしまうことがあるんだ。」

「でも何か悪いことが起きたとしても、それは君の思いが足りないから、起こるわけじゃないんだ。みんなと一緒にいた

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この子のつながりを

「先生、この子はふつう学級に行かせようと思うの」 
電話の声が聞こえる。
「お兄ちゃんの時はだまされたから」 
三十三年前から声が届く。

      ◇

「先生はやめてよ。もう学校はやめたんだから」。
何度言っても呼び方は変わらなかった。だから、いまもそのままの声が聞こえる。

「先生、私ね、お兄ちゃんが小さいころ、歯医者から逃げるのを追いかけて、裸足で道路に飛び出したことがあるの。どうして。

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つながりに咲く花

この子の花より先に 
目に飛び込んでくる花がある

いつもの運動会で 
すぐに見つかるはずの子が みつからないとき
目を奪われたのは 
つながりに咲く花だった

どの子もみんな つながりに咲く花の中にいて
つながりに咲く花に埋もれて 
この子も笑う

見つからないなんて 一度もなかった
守れるのは私だけと 思ってた
この子の花しか 見えていなかったのかな

あきらめなくて よかった
手放さなくて 

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ようこそ就学相談会へ その後 (2)

《子どもたちからの贈り物》

相談会で出会う子どもたちからもらった信頼は、他とは違うものだった。
一緒に遊び、笑い、話す二人の「間」で生まれるものとは違うもの。
相談会の子どもは、「自分を守るために必死な親を、支えてくれる」つながりの気配を感じ、それだけで無条件の信頼をくれるのだった。

その信頼は、私にはこんなふうに聞こえていた。
「お母さんと私の味方になってくれてありがとう、お礼にいいものをあ

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ようこそ就学相談会へ  その後(1)

《1:嵐の海と熊だらけの森》

「ふつう学級に行くのは、嵐の海に船を出すことだと思ってる?」
「それとも熊だらけの森に、子ども一人を置いてくることだと思ってる?」

「そんなことないよ」。
36年前に出会った子も、いま一年生の子もうなずいてくれる。

「わたしはだいじょうぶだったよ」
「ぼくもだいじょうぶだった」

学校は子どもを比べ、競わせることに熱心な所だった。
でも競わなくても、比べなくても

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まなざしを重ねてつくる地図

《運動会あるある》

入学式に始まり、授業参観も合唱祭も、「うちの子はどこかしら?」と探す前に、「ここ、ここ」と目に飛び込んでくる子がいる。この子たちの親は、はじめは運動会で子どもを探したことがない、という。徒競走でもダンスでも、探す前に目に飛び込んでくるから。そのくせ、教室から脱走したり、迷子になって探すのは数えきれない。

けれどある年、変化が訪れる。「見つからない」ときが訪れる。
「そんなは

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ようこそ就園・就学相談会へ2020・9

昨日の相談会に来てくれたのは8家族。

0歳の子が二人に、2歳の子が一人…。
「へ? 0歳の子が二人もいるのは初めてだなぁ」
「0歳の子の両親に、わたしはどんな言葉をもっていたっけ?」
「0歳を中心に考えたことなかったなぁ」
「0歳の子の親に、ふつう学級がいい話? それはそうなんだけど、《それ以前のことば》があるよな」
「そんなこと思ったって、もう始まっちゃうじゃん」

       ◇

昨日の

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《250年前の教育書とダメ、ぜったい!》の長いメモ

最近、250年前の教育書の言葉をよく思い出す。

【まずはじめに、ちょっとした身振りでやめるよう命令してみればよい。それでも泣き声がやまないようであれば、その時には泣くことをはっきり禁止して、大げさに騒いだ科で子どもを罰し、子どもが泣くのをやめるまで続けるがよい。】(1773年)

もう一つ。こちらは160年前。

【この技術とは自分のしたいことを我慢する技術である。子どもはその拒絶をおとなしく受

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