《就学相談会のためのメモ》(その3)

 《45分の話》 

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《いつもは「親」に向けて話している「45分の話」を、「教師向け」に書いてみた。この「45分の話」なら、「45分座っていないこと」を、親はどんなふうに受け取るだろう?》

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A:「45分座っていない子が、ふつう学級でやっていくにはどうしたらいいのですか?」
B:「初めての教室では《座っていない子》も《座っている子》も、私は気になります。
緊張して張りつめた表情で座っている子もいれば、落ち着かず立ち歩いている子もいます。
私自身も、初めての子どもたちに緊張があります。」

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C:「そうですね。何年教師をやってても、最初の日は緊張しますね。
子どもたちの顔をみて、言葉を交わし、徐々に落ち着きます。
とくに子どもたちが笑ってくれるとほっとします。」
D:「子どもたちも、先生が笑ってくれると安心するんでしょうね。」

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E:「でも教室にいてくれないと、少しずつ慣れるのも難しくないですか。」
F:「慣れていくやり方も、時間も、人それぞれかもしれません。
その子が座っていないとしたら、座っていない理由があるのだと思います。
座ってないという表現でしか伝えられない子もいる、と思えば、じゃあそれはどんなことだろうと考えられますね。」

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G:「教室から出ていってしまうときにはどう対応したらいいのでしょう」
H:「私は『どこに行くの?』と聞いてみます。トイレと言われたら、トイレの場所を教えてあげられるし、ブランコと返ってくれば校庭に行くのだと分かります。」

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I:「黙って言ってしまったら?」
J:「とりあえずついていくかな。『捕まえられる』と思われないように、少し離れてついていきます。だって、どこに行くのか、知っておきたいですよね。もし外に出るなら、外履きに履き替えようねと教えることもできます。」

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K:「ピューっと行ってしまったら?」
L:「ピューっと追いかけるしかないかな。行き先が分ってくれば、落ち着くこともできるけど。最初は見当もつかず、家に帰っちゃうかも、学校の外に出てしまうかも、と心配ですよね。でも、不思議なことに、学校の外に行く子はほとんどいないんですけどね。」

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M:「勝手に出て行ってはいけないと、教えなくていいのですか?」
N:「勝手に出て行くのを止めたい、のはどうしてでしょう?」

O:「危ないことがあるかもしれないし、子どもを守るため、ですよね。」

P:「同じですね。子どもの安全を守りたいから、私も声をかけ、後からついていこうと思うのです。なぜなら「出て行く」ことも、その子が「安全を感じる」ためにしているのだと思うからです。
教室から出ていくのは、その子にとって、教室がまだ「安全でない」のかもしれません。

だって、私たち教師も初めての日には「緊張する」んですよね。
緊張するのは、漠然とした「不安」があるから。つまり、まだ「安全を感じていない」からですよね。

実際に子どもたちの顔をみて、声を聞いて、対話して、お互いに笑えるようになれば、もう安心です。
そうすれば、教室に行くのに緊張なんかしません。子どもたちに会えるのが嬉しくて、教室に向かうだけで楽しい気持ちになるものです。

だから、まだ「安全を感じない」子がいるなら、その子にも「ここは安全なところ」だと感じてほしいですよね。私はそう思います」

(つづく)

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