ZINE『私たちが「産まない」を選んだのは』サンプル
※こちらは若林理央のZINE『私たちが「産まない」を選んだのは』(40P)の「はじめに」を概要を知っていただくために載せています。
カバーデザインはイトウミドリさん。
※5月29日の文学フリマ東京から発売予定です。予約ご希望の方はTwitterのDMもしくはbunwahitonari429@gmail.comまでご連絡ください。
価格などの詳細はこちらから
通販(匿名配送)の予約受付も始めました。こちらの発送は6月1日からです。本書は文学フリマと通販で価格が変わります。(文学フリマのほうが安いです)
通販ご希望の方は以下のショップページから予約注文していただけると嬉しいです!
https://bunwahitonari.booth.pm/
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会話中に友人がこんなことを言ったとする。
「自分の人生のためにそのほうがいいと思うから、あえて子どもを産まない人生を選ぶ」。
あなたはその言葉を聞いてどう思うだろうか。
子どものいる幸福を想像できないのは残念だと感じる人もいるだろう。
それも間違いではないのかもしれないが、子どもを産んだのに幸せだと感じられず「産まないほうがよかった」と後悔している人、そしてその事実を言わなくても「私のお母さん、私のこといらなかったんだ」と勘づいている子どもは、現実に存在している。
それは子どもと母になりたくなかった人の両方を苦しめることになる。
私はフリーライターとして、今までふたつの媒体で、自分の意志で子どもを持たないチャイルド・フリーをテーマにした記事を書いた。発表したあと、反響があり、子どもを産まない選択をしたいが周囲に言えない人、自分の意志で出産しないことを周囲に打ち明けられない人が私の想像以上に多いことを知った。
これはすなわち子どもを産まない選択をすると周囲に言えない状況に私たちが身をおいているということだ。
もっといろいろな人に取材をして説得力を持たせたい。自分が産まないと決意するに至った経緯をより詳しく説明したい。そして産まない選択をしたかったのに、産んでから自分は母親になるべきじゃなかったと気づいた人たちのことも、社会でもっと認知されてほしい。
そんな気持ちがだんだんとふくらみ、このZINEを作ることにした。
まずは産まない選択をしたふたりの女性にインタビューをさせてもらいルポとして書いて本人たちに原稿を確認してもらった。ふたりの私生活に支障が出ないよう匿名にしてある。
またそれと並行して、「子どもは持たない」という自分の気持ちがどこからきたのか振り返るためにエッセイを書いた。
ページ数を決めて印刷所に申し込みをしたあと、つい最近、『母親になって後悔してる』(オルナ・ドーナト著・鹿田昌美訳・新潮社・原題「Regretting Motherhood」)が日本でも翻訳され書籍として刊行されたと聞いた。
当初は自ら子どものいない人生を選ぶチャイルド・フリーについて書いた本の書評を書くつもりだったのだが、『母親になって後悔してる』の原書「Regretting Motherhood」のことを、私は知っていた。
勇気がいるとはいえ、産む前に産まない選択について話すことはできる。しかし少子高齢化が進む日本で、産んでからの「子どもがいない人生のほうが良かった」と話すことは暗黙の了解としてタブー視されている。だからこの報告書が日本で発売されることはないだろうと考えていた。ZINEに載せる予定だった他の本の書評はまた別の機会に発表することにして、すぐに『母親になって後悔してる』の書評執筆にとりかかった。
そんな予想外の出来事もあったが、ZINEを無事完成させることができた。
インタビュー、エッセイ、書評に分かれているので興味のあるところから読んでほしい。
そして想像してほしい。
私は自分の意志で子どもを持たない。
そのひとことが言えない女性がいることを。
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