見出し画像

SF世界を現実にする最新技術 Part.3 ~注目の電池技術~

こんにちは、GENEROSITYのCTOを務めている、平沼真吾です。

2023年も残りわずかとなりましたね。
このブログも年内最後の更新となります📆

一年間、様々なテクノロジーについて共有でき、またコメントやフィードバックをいただけたことに本当に感謝しています。来年もどうぞよろしくお願いします🙏

これまで3回にわたり、「SF世界を現実にする最新技術」を連載してきましたが、今回は最後となる注目の電池技術を紹介できればと思います。

過去の記事のおさらい

本編の前に、今回の記事も「SF世界を現実にする注目の技術」の連載記事なので、まずはこれまでに触れた内容を簡単に振り返ります。

4つの要素【①ディスプレイ、②画像認識、③データ通信/ 圧縮、④電池】

本連載の初回から、拡張現実(AR)と複合現実(XR)が街中で体験できるSF世界を現実にするには以上の4つの技術を強化する必要があるとお話してきました。
今回は続編としては、最後の技術である④電池技術について語ります。




そもそも、なぜ電池が重要?

電池は、主に装着型ARデバイス(ARゴーグル等)で使用されます。
そして、ARデバイスの小型化や高機能化を進める上で、搭載する電池は以下の4点を同時に満たす必要があります。

1. サイズ
電池のサイズが大きいと、デバイス自体も大きくなってしまうため、ファッション性が損なわれたり、長時間着用するには重く負担になってしまいます。日常生活に溶け込むような小型化デバイスを生み出すためには、電池の小型化は必須条件です。

2. 電池持ち
電池のサイズが大きいほど電気を貯蔵でき、逆に小さいほど電気を溜められず、電池持ちが悪くなってしまいます。ARデバイスを一日中装着することを想定すると、小型でありながら長時間持続する電池を開発する必要があります。

3. 出力
ディスプレイを表示したり、カメラを立ち上げ続けるためには、電池が常に一定以上の電力を出力し続ける必要があります。出力が弱いと、ディスプレイに映像を表示するためのパワーが不足したり、CPUの処理速度が遅くなり映像に粗が出てしまいます。その為、小型で電池持ちが良く、パワフルな電池が必要になります。

4. 温度
電池の温度が高くなると、肌に触れた際低温火傷の危険があったり、デバイスのパフォーマンスが落ちてしまい動作が遅くなってしまいます。

以上を踏まえると、「小型で、電池持ちが良く、パワフルで、尚且つ熱くならない電池」が必要なんです。


④注目の電池技術

こうした要求に応える先進的な技術の一つが、「全固体電池」です。

🛠全固体電池

全固体電池とは、従来の電解液を使ったリチウムイオン電池とは違い、電解液を使わず正極( + )と負極( - )の間に電解質セパレーター層がある電池のことです。安全性、出力、持続性など多くの点が液体電池よりも優れていることから、機械メーカーやEV自動車への活用を見据えた自動車メーカーが精力的に研究を続けています。液体電池と比べて優れている点を具体的に説明すると、まず ①高温に強く、装着型デバイスに実装した時低温火傷などの人体被害や故障を起こしにくい点です。加えて、②エネルギー密度が高いため小型でも大容量になり電池持ちがよく、③充電時間が短いため、電池が切れてもすぐ復活させることができます。


🛠次世代カーボン電池

次に紹介する「次世代カーボン電池」も、従来のリチウムイオン電池の弱点を克服する注目の電池技術です。

リチウムイオン電池には、ニッケル、マンガン、コバルトといった希少な金属(レアメタル)が多く使用されており、これが需要増加に伴い価格高騰や供給不安定の原因となっています。

この問題に対処するため、レアメタルを使用しない次世代カーボン電池の研究が進展しています。これにより、供給の安定化が見込まれると同時に、従来のリチウムイオン電池よりも高い出力でほぼ熱を発生させない特性があり、小型化が可能で人体への影響も低減できる可能性があります。そのため、ウェアラブルデバイスの利用においても期待されています。私自身も、スマートグラスの小型化と安全性向上の観点から、この新しい電池技術に特に注目しています。

🛠ワイヤレス電力伝送

上記の電池技術に加えて、革新的な充電手法の開発も進んでいます。その一つが、「ワイヤレス電力伝送」です。

ワイヤレス電力伝送とは、電力をケーブルや導線を使わずに、電磁波やその他の無線通信技術を介して伝送する技術です。これにより、デバイスを直接電源に接続しなくても電力を供給できるようになります。

🔋開発が進んでいる無線給電技術

- Disneyや東京大学が研究開発している電磁誘導で無線給電できる技術
- 大成建設などが研究開発しているマイクロ波を使って無線給電できる技術
- アメリカのスタートアップ「PHION Technologies Corp」が赤外線を使って無線充電できる技術

これらの技術が発達することで、一定の区域、空間、部屋に入っただけでデバイスが自動充電されるようになります。人体への影響は少なからずあるかもしれませんが、これらの技術が進歩すれば、有線のバッテリーという概念がなくなり、デバイスの利便性が飛躍的に向上する可能性があります。


おわりに

長くなりましたが、連載「SF世界を現実にする最新技術」を最後までご覧いただきありがとうございました!

これまでの内容からお分かりだとは思いますが、XRは私達が到底できっこないと思っているSFやファンタジー映画の世界を実現させる可能性を秘めています。少しでも多くの読者の方々がXRの持つ無限の可能性にロマンを感じて研究者サイドに来てもらえたら、このブログを書いている意味があると思います。

次回は、エンジニアを志す学生・社会人に向けて、「未経験から最速でエンジニアになる方法」を僕の経験を踏まえてお話しします。

来年の更新もお楽しみに!


現在募集中のポジション

Twitterもやっているので、是非フォローお願いします!https://twitter.com/waka_405


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?