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【書評】頑張ったから成功した、がんばれば上手くいくは本当?『実力も運のうち』

私は自己啓発系の本とか好きでよく読むのですが、あるとき人と話していたら

「ああいうのって、考え方としては面白いな、共感できるなって思うけど、でも行動するのは難しい感じるんだよね」

という感想を聞いて結構それが衝撃でした。

考え方としては分かる、でもそうは行動できないってどういうこと???


そうやってつらつら考えているうちに、がんばれば上手くいく、頑張ったら成功できると私がポジティブに考えられるのは、

私のベースに成功も失敗も認められる心理や環境があるからなんだなと気がついたんです。

つまりいわゆる成功法則や自己啓発は「強者の論理」なんだなぁ〜ということです。

だからと言って、行動しなくても、がんばらなくても上手くいくとも、なかなか言えないわけですよね。

今日紹介する本は「実力も運のうち」です

そんなどうしようもない矛盾をどう考えれば良いのかな?と思っていたときにこの本を知って読んだので、今日はこちらをご紹介します。


気になるところ抜粋

ある才能を持っていること(あるいは持っていないこと)は、本当にわれわれ自身の手柄だろうか。自分の才能のおかげで成功を収める人びとが、同じように努力していながら、市場がたまたま高く評価してくれる才能に恵まれていない人びとよりも多くの報酬を受けるに値するのはなぜだろうか?


勝者は自分たちの成功を「自分自身の能力、自分自身の努力、自分自身の優れた業績への報酬に過ぎない」と考え、したがって、自分より成功していない人々を見下すことだろう。出世できなかった人々は、責任は全て自分にあると感じるはずだ。


自分の運命は自分の能力は功績の反映だという考え方は、西洋文化の道徳的直観に深く根付いている。好天や豊作は善行に対する神からのご褒美だし、旱魃や疫病は罪を犯した罰なのだ。こうした物の見方は能力主義的な考え方の起源なのだ。


貧困層を脱して富裕層へとよじ登ることも、社会的上昇への一般的な新年が示唆するほど容易ではない。


エリートは自らの偏見を恥と思っていない。彼らは人種差別や性差別を避難するかもしれないが、低学歴者に対する否定的態度については非を認めようとしない。


功績と価値の違いを心に留めておけば、所得の不平等もそれほど不愉快なものではなくなる。こうした不平等が人々の功績とは無関係であることを誰もが知っていれば、知らない場合とくらべ、金持ちはもっと謙虚であり、貧乏人はもっと心穏やかであるはずだ。


能力主義の時代は、働く人々をもっと陰険な形で傷つけてきた。労働の尊厳を蝕んできたのだ。・・・市場が勝ち組に与える潤沢な常習と、大学の学位を持たない労働者に差し出す乏しい賃金を正当化しているのだ。


一体なぜ、成功者が社会の恵まれないメンバーに負うものがあるというのか?その問いに答えるためには、われわれはどれほど頑張ったにしても、自分だけの力で身を立て、生きているのではないこと、才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない。

感想&こんな方にオススメ

アメリカのデータに基づいた本なので、日本人から見るとずいぶん極端なんだなぁと感じることがありましたが

学歴と報酬には高い相関関係があること、富裕層が子供の学歴を上げるために幼少期から投資していること、寄付することが入学のためのもう一つの入り口であること、その結果、アメリカでは生まれた時の階層に固定されがちなことなど、興味深く読みました。


結局のところ、その人の収入や地位が高いことが「生まれ」による社会か「才能」による社会かは、どちらが良いということではなく

いずれにしても、自分一人の力でなし得ることはないと謙虚になることが必要だという結論で、そのためには
・才能も運のうち
・生まれた環境も運の一つ
・功績と価値は異なる
・給料の良い仕事がすごい仕事だとは考えない
というあたりを心に留めておくと良いようです。

もっとすごい「おお、そういう考え方があったか!」となるような結論を期待していたけど、ウルトラCの考え方はないということでした。


結局のところ「道徳」という話になるのだと思いますが、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を体現し、人に慕われた成功者のエピソードなどを読んで、あるべき姿を理解することも

この本のように、データで理詰めで「道徳」を学ぶのもどちらも面白いですね。

ちょっと難しいし長いのですが
✔︎自己啓発が好きな人
✔︎努力すれば成功すると考えがちな人
✔︎子育て中の人
におすすめです。

今日はマイケル・サンデル著『実力も運のうち〜能力主義は正義か?』を紹介しました。

それでは♬

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