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日本料理の食卓作法Ⅰ-C「会食前、椅子の座り方から乾杯まで」

2006年3月 1日 (水)/22日 (水) 4月22日(土)

2.イスの座り方について

さて皆さん、洗面所とトイレへ寄って身だしなみを整えていただきましたら、いよいよ会場へと入りますよ。

今回は、バンケットルーム(宴会場)、洋室でテーブルとイスでの会食、ということを前提にお話しますね♪

席順が決まっているなら、各席に席札(座る人の名前を書いた札)が置いてありますからそれを確認して着席します。

決まっていないときは、出席者の顔ぶれや会合の目的に応じて、ふさわしいと思う席に着席します。

いずれにしても、そのテーブルに先に座っている人たちに会釈して座るようにしますが、皆さんはこのとき、イスのどちら側から座りますか?

「どっちだっていいだろ?!何か、間違うと転げ落ちたりすんのか?!」
はい、ごもっともです。
 
どっちから座ろうと転げ落ちませんし、壇上で名前を発表されたりもしません。

しかし実のところ、正式な会食(正餐)の席では、以前にお話した「プロトコール」によって、「イスにはこっち側から座ろうね」という暗黙の了解があるのです。

それは
「テーブルに向かって、イスの左側から座る」
というものなのです。

まず、座るときは右手でイスの背もたれを引き、座面の前に右足を入れて静かに座ります。

座ったら、テーブルと自分の身体の間は、握りこぶしが一つ入るくらいあけておくと良いでしょう。

あけすぎると遠くて食べにくいですし、近すぎるときゅうくつでくつろげません。

サービス係りがイスを引いてくれる時は、同じようにイスの左側から入り、押してくれるイスがちょうどいい頃合いを見て座ります。
(↑これが緊張してダメっていう人、私のまわりにけっこう多いんですけど、堂々としちゃって良いんでないかなぁ)

当然(というと語弊があるのかな…?)女性と男性では、女性が先に座ってから男性が座るんです。

それでは、ナンでまた「左側から」ということになったのでしょうか…?

それは昔々、人々が剣と魔法の世界に生きていた頃……っ??あれれ??
………失礼、間違えました―。

人々が剣を持ち、腰に剣帯でつるしていた頃からのお話です。

当時は剣を帯びたまま会食、ということもあったでしょう。

右利きの人は当然、左の腰に剣を下げていますから、テーブルに向かってイスの右側から座ろうとしても、下げた剣が邪魔で座れませんでした。

また、大勢が一堂に会しての会食では、みんながそれぞれイスの右や左からいっせいに座ろうとすると、ぶつかったりして混乱の元になりました。

そのため、スムーズにするには「みんながイスの左から座ればいいんだね」ということを確認し、了解しあったわけですね。

3.着席したら~ナフキンとおしぼりについて

着席したら、小さな手荷物は自分とイスの背もたれの間に挟むようにして置きます。

基本的に料理を運ぶ係りは、お客様の右側からサービスしますので、大き目の荷物は足元の左側か、テーブルの下へ置くようにします。

テーブル上には、会食用のセットがしてあります。

会席盆(半月盆や平盆、折敷、紙マットなど)に箸置き、箸、グラス、盃、おしぼり、ナフキンなどが用意されていると思いますが、どういうものがセットされているかはお店によってさまざまです。

ナフキンがある場合は…

ナフキンは、もともと洋食の席で使われるものですが、お客様にとって大変役に立つものなので、和食の席でも使われるようになりました。

ほぼ真四角の布(白が多いですが、最近は色付きのものも出回っています)で、使い道は
「口元と指先の汚れをぬぐうもの」
とされています。

ナフキンはひざに掛けて使うものですが、そのタイミングとしては、同じテーブルに全員が着席したあたり、または乾杯があるときは乾杯が済んだあたりが良いでしょう。

いずれにしても、最初の料理が運ばれてくる前にはひざに掛けておきます。

ナフキンの使い方をよく質問されますが、いくつかの方法があります。

・女性にお勧めの方法です。
    ナフキンを二つ折りにし、「わ」を向こう側に
    してひざの上に置きます。
    使うときは、二枚になっている手前の内側で口
    元を押さえます。
    こうすると、汚れた部分が人目につきませんし、
    その部分で自分の衣服を汚すことがありません。

・折らずにひざに掛け、手前の左端から使っていきます。
    使うたびに少しづつ右にずらしていけば、いつ
    でもキレイなところを口元に当てて使うことが
    出来ます。

一昔前のように、胸元に挟んでぶら下げるような使い方は本来しませんが、子供さんや、着物のかたは、ちょっと挟んで使うこともあります。

いずれも、汚れた部分が他の人に見えないように使うことが基本です。

食事中に中座する時は、軽くたたんで会席盆の右か左、邪魔にならないところに置きます。

洋食のマナーで、わざと畳まずに椅子の上に置いておくと、まだ食事が途中だというサインになる、と聞いたことがある方もおいででしょうね。

ですが、なんとなくくしゃくしゃにしたものを置くのは心苦しいですし、腰をおろすところに口元に当てて使うものを置くのもちょっと…ですねぇ―。

こうでなければならない!という決まりではありませんので、私は見苦しくないようにかるく畳み、卓上に置く方法をご紹介しています。

会食が済んだ時も、畳まずに卓上に置いておくと、「美味しかった、また来るよ」という意味になると聞いたのですが、やはりちょっと心苦しいので、同じようにかるく畳んで置いていただくようお話ししています。

ナフキンが無い場合は…

持ち物の項でお話しをした、ナフキン代わりに使えるハンカチをお持ちのかたは、それをナフキンと同じようにひざに掛けて使っていただくと便利です。

お持ちで無いかたは、ぜひ「懐紙」を活用してみてください。
ティッシュよりも張りがありますし、会席盆上をちょっと拭いたりするにも便利です。

おしぼりが出されたら…

どうやら「おしぼり」は、日本固有の習慣のようです。
本来の使い道は「手をぬぐうもの」ですから、着席したら手を拭いてかるく畳み、おしぼり受けに戻します。

くれぐれも顔や首すじ、テーブルなどは拭かないよう、お願いしたいですね。

手の置き所が…

「手は、いったいどこに置いたらいいのでしょうか?」
意外と聞かれることの多い質問です。

いつもは何気なくしていることでも、改まった会食の席となると「あれ?」と思われるようですね。

料理がサービスされるまでの間は、ひざの上か卓上に置いて待ちましょう。

女性は両手をかるく重ねて、男性はゆるい握りこぶしにすると落ち着くようですよ。

4.乾杯~会食のスタートを告げるもの

全員が着席し、司会や進行担当の方が会食開始の一言を発すると、全員で「乾杯」を行い、いよいよ食事の始まりです。

「乾杯」は日本料理の場合、本来は必ず日本酒で行いますが、現在はビールであったり、めいめい好みのものを用意してもらったり、また、結婚披露宴や祝賀パーティーのなど場合には、シャンパンでの乾杯をすることがあります。

正式な会食の場合は、日本酒にしろシャンパンにしろ、乾杯に使うものの種類が決まっていますから、たとえアルコールが飲めなくても、好きな種類でなくとも、乾杯の時だけは杯やグラスのふちに口をつけるだけはするようにします。

テーブル上にはあらかじめ、日本酒用の杯、ビールグラス、シャンパングラスなどがセットされています。

サービス係りが乾杯用のお酒を注ぎまわりますので、日本酒の場合は、杯を手に持って受けます。

その時、女性は杯を持った右手に左手を添え、両手で受けると優美ですね。

日本酒以外のお酒の場合は、グラスはすべて卓上に置いて受けますが、列席者が互いに注ぎ合うような場合は、ビールグラスだけは手に持って受けたほうが良いようです。

シャンパン、ワインなどの場合は、互いが注ぎあう場合でも、卓上に置いたまま受けるのがマナーです。

全員に行き渡ると「乾杯」となりますが、テーブル席での会食の場合は全員起立し、杯またはグラスをとります。

このとき、起立してから杯やグラスを取りましょう―。

持ったまま立ち上がると、何かの拍子にこぼしたり、衣服にはねかかったりすることがあるからです。

和室の場合は本来座ったままで行いますが、「乾杯」の発声の方だけが立ち上がることがあります。

正式な乾杯の方法は、「乾杯!」と言う発声で、目の高さに杯やグラスを上げ、隣席や向かい側の列席者に会釈をしてから口をつけます。

この時、正式な会食では、シャンパングラスやワイングラス、ビールグラスを互いに触れされることありません。

グラスとグラスを触れさせるのは、かえって失礼な場合がありますので注意しましょう。

乾杯が済んだら着席しますが、この後は料理に合わせた飲み物がサービスされますのでそれを待ちます。

もしもソフトドリンクや、他のアルコールが欲しい時は、近くに来たサービス係に声をかけましょう。

披露宴や祝賀会などの正式な会食中の飲み物としては、日本酒、ビール、ワイン、ソフトドリンクが用意されることがほとんどですが、焼酎、ウィスキーなどの用意がある場合もあります。

※「乾杯」と「献杯」
 「乾杯」とは、列席者それぞれの健勝を祈って杯を挙げ、
  同じ場所で飲食を共にすることでのつながりを寿ぐ
 (ことほぐ)「ハレ」の習慣です。

  これに対して、法要後の会食の時に行われるのは「献杯」
 (けんぱい)と言い、故人を偲び、杯を挙げて献するもの
  です。

献杯は日本酒で行う場合がほとんどですが、杯に常温の酒を半分ほど注ぎ、「献杯」という発声で杯を目線よりも高く挙げて、そのまま口にします。

乾杯の時のような列席者同士の会釈は行いません。



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