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ビジネスパーソンのための法務ネタ帳(弁護士 野村 彩)

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筆者:弁護士 野村彩 /法務を専門としないビジネスマンの方々に向けて、企業法務専門の弁護士が時事問題などの雑観をお話します。 社内研修の講師をお請けした際に、冒頭の「つかみ」で時…
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#ビジネスパーソンのための法務ネタ帳

社外取締役は誰のために働くのか?

社外取締役は誰のために働くのか?

皆様の会社には社外取締役の方はいらっしゃいますか? ここでクイズです。社外取締役とは、誰のために働く人でしょうか。
①社長などの執行陣のため
②少数株主を除く大株主のため
③少数株主も含むすべての株主のため
④従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会等、株主以外の様々なステークホルダーのため

答えは「③、プラス④も考慮に入れましょう」です。
①と②は明確に「まちがい」です。

これは、ごくごく基本

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パワハラで取締役全員クビ!?
~役員にとってのハラスメントリスクとは~

パワハラで取締役全員クビ!? ~役員にとってのハラスメントリスクとは~

社内研修としてパワーハラスメントの講義をご依頼いただく場合、その多くのが対象は管理職の皆さまです。
他方で最近では、役員向けハラスメント研修を、とのご依頼が増えています。
もともと役員向けの役員責任や会社法の基本の講義などのご要望は、CGコード策定以降に増えていましたが、新たな兆候かと思います。
ひとえにハラスメント研修といっても、役員が対象となる場合は、管理職に対する研修とは視点が違います。つま

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「パワハラかどうか」はもはや意味なし?
〜KPMG英法人会長が失言で辞任〜

「パワハラかどうか」はもはや意味なし? 〜KPMG英法人会長が失言で辞任〜

KPMG’s UK boss steps aside as firm probes comments that offended staff
https://www.ft.com/content/3c3c07d1-ffb9-4288-aea4-41acf3f3bbff

下書き投稿をほかほかと温めていたら初夏になってしまいました…。

少し前の記事ですが、会計事務所KPMGのビル・マイケル英法人会

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【勝手に未来予測2050】パワハラは犯罪となり、パワハラ上司は絶滅する。

【勝手に未来予測2050】パワハラは犯罪となり、パワハラ上司は絶滅する。

2050年、明るくて爽やかで親切、そんな人でない限り、まともな職につくことはできない。

未来予測、流行っていますね。上記は当職の勝手な未来予測です。

そもそも、
15年前は、海賊版の映画をパソコンにダウンロードしても犯罪ではなかったし、
20年前は路上禁止地区で歩きタバコをしても条例違反ではなかったし、
40年前は不正の請託がない限り総会屋にお金を払っても総務担当役員が逮捕されたりしなかったし

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【新社会人の皆さまへ】
自らの「スキル・マトリックス」を作りあげていこう
〜ジョブ型雇用社会で生き抜くヒントをガバナンスコードに見る〜

【新社会人の皆さまへ】 自らの「スキル・マトリックス」を作りあげていこう 〜ジョブ型雇用社会で生き抜くヒントをガバナンスコードに見る〜

おめでとうございます。
未曾有の事態の中、新たに我らが「社会」へいらっしゃること、心より歓迎申し上げます。
刺激に満ちた、変化の激しい、真剣勝負の、このビジネスや政治の世界を、皆さまが楽しんで伸び伸びと泳ぎまわることこそが、この国の、この世界の宝となります。

さてひとつ「ネタ帳」として小話を差し上げますと、この春にコーポレートガバナンス・コードが改訂される予定です。
その改訂案の中で、取締役役会

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あなたの会社の社外取締役は誰の紹介ですか?

あなたの会社の社外取締役は誰の紹介ですか?

令和元年会社法改正が施行されて1か月が過ぎようとしています。
改正項目の一つに、「社外取締役 設置の義務化」がありました。
上場会社を含む一定の要件を満たす会社では、社外取締役を置かなければなりません。ただほとんどの上場会社等では、既に対応済みでしょう。
今後は、より一層人数や割合を増やしていく、という方向に進みそうです。

そして「数」が整ったら、今度は「質」の問題です。
まだまだ経営陣の中には

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「うちの職場にLGBT等はいない」のか

「うちの職場にLGBT等はいない」のか

また似たようなタイトルの作り方で恐れ入ります。

同性婚を認めない現状は違憲である、との判決が出て話題になっています。

同性同士のカップルが結婚をすることができないといういまの日本の状況は「差別」にあたる、との内容です。

同性婚 認めないのは違憲、初判断「差別に当たる」:日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG175G10X10C21A3000

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ビジネスマンが犯罪者になる時
カルロス・ゴーン氏も起訴された「特別背任」とは

ビジネスマンが犯罪者になる時 カルロス・ゴーン氏も起訴された「特別背任」とは

弁護士として企業法務を専門にしていると、取扱業務は9割がいわゆる民事の案件だったりもします。しかし時折、案件が刑事事件へと発展することもあります。
従業員や経営者の不正な行為に対して刑事告訴していくなどの案件です。
実際に扱う犯罪の類型としては、業務上横領罪、窃盗罪などがございますが、「背任罪」も割とよく使います。背任罪とは何か?
刑法上の条文は次の通りとなっています。

(背任)
第247条 他

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「我が社に人権配慮の余裕はない」のか

「我が社に人権配慮の余裕はない」のか

「Z世代」がスターバックスを告発 外国人技能実習生の「人権侵害」に関連して
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20210312-00226782/

サプライチェーンで起きた外国人技能実習生に対する人権侵害について、スターバックスの社会的責任が問われています。
詳細は記事をお読みいただければと思いますが、こちら、何もスタバ自身が外国人技能実習生

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うちの業界のお恥ずかしい話
~国際女性デーに向けて~

うちの業界のお恥ずかしい話 ~国際女性デーに向けて~

3月8日は国際女性デーです。
SDGsの目標5でもジェンダーの平等が明確に定められており、女性の社会進出は、今やビジネスにおいても重要なテーマとされています。

というわけで、本日の各報道でも様々なジェンダートピックが掲載されていました。
ビジネスの世界での女性比率といえば、なんといっても女性役員の割合です。
コーポレートガバナンスコードにおいても、多様性は1つのキーワードとされています。
女性の

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森さん発言はコーポレートガバナンス改革にも逆行

森さん発言はコーポレートガバナンス改革にも逆行

東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視的発言が問題になりました。「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。」というものですね。

この話、実はコーポレートガバナンスとも強い関係がありそうです。
ご承知の通り、ガバナンス改革の流れにおいて社外取締役など社外の役員の役割が重視されています。
令和元年会社法改正により社外取締役の設置が義務化され、現在両コードフォローアップ会議

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