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社外取締役は誰のために働くのか?

皆様の会社には社外取締役の方はいらっしゃいますか? ここでクイズです。社外取締役とは、誰のために働く人でしょうか。
①社長などの執行陣のため
②少数株主を除く大株主のため
③少数株主も含むすべての株主のため
④従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会等、株主以外の様々なステークホルダーのため

答えは「③、プラス④も考慮に入れましょう」です。
①と②は明確に「まちがい」です。

これは、ごくごく基本的な話です。「そんなの当たり前」という方は、今回は読み飛ばしてくださいね。

上記のとおり、①は間違いです。
ところが、2020年経産省「社外取締役ガイドライン」に附随するアンケートでは、①の「社長などの経営陣のため」に行動していると答えた社外取締役が、なんと1割以上もいらっしゃいました。
これはむしろ逆で、社外取締役とは、経営を「監督」することこそが重要な職務のひとつです。

つまり、会社の価値向上のために、社長などの経営陣が間違った行為をしていたら、それを正さなければなりません。
社長の行動に対して、必要な時に「NO」を突き付けること、それが社外取締役の大切な役目です。
常に社長の味方になってあげるのは執行機関の部下や顧問弁護士の仕事であって、社外取締役の役目ではありません。

以前の記事で、社長のお友達人事には問題があると申し上げたのは、このような観点からです。
皆さまの会社の社外取締役さんは、お友達である社長に対し、毅然とした態度を取ることができる方でいらっしゃいますか?

また、②「少数株主を除く大株主のため」も間違いです。
株主総会は多数決で決まります。経営陣の人事を最終的に握っているのも大株主です。
では少数派の株主のことを、誰が配慮してあげるのでしょうか。それが社外取締役です。
社外取締役も株主に選ばれてその地位につくわけですが、だからといって多数派だけのことを考えていてはいけないのです。

以上より、答えは③「少数株主も含むすべての株主のため」となります。
ただ、昨今、④「従業員、 顧客、取引先、債権者、地域社会等、株主以外の様々なステークホルダーのため」にも行動すべきという考え方が強くなっています。「③プラス④」のうちの「④」の比重については、今後変わっていくかもしれません。

弁護士 野村彩(のむらあや

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