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vol.547「なぜ若いうちは、業績の悪い会社にいた方がいいのか?」


お客様からこんな質問を頂きました?
「入社後3年間の離職率ってどのくらいなのでしょう?」

そこで、ネットで調べてみました。
ちなみに離職率とは3年前に入社した社員が、
何%辞めたかです。

新入社員の早期退職は長年の課題

厚労省の統計によると、20年3月大卒者の
平均離職率は32.3%。高卒は37.0%です。
https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001158687.pdf

この資料には、過去の学歴別の
就職後3年以内離職率が載っています。

それによると大卒の3年以内離職率は
95年(H7)以降、軒並み30%を超えています。
つまり、新入社員の早期退職は最近始まったことではなく
この30年間、続いている現象です。

ブラザー工業での経験

私が勤めていたブラザー工業でも、同様の現象は見られました。
私が入社したのは86年。
この年、30人の大卒文系男子が入社しましたが、
30歳になる前に、私も含め10人が離職しました。

辞めた理由は人それぞれですが、その要因のひとつに
当時のブラザー工業の業績不振がありました。

時代はバブル。そんな時代に円安の影響で赤字続き。
株価はダダ下がりの中、「もうこの会社はあかん」と
見限る人が少なくなかったのです。

その頃、入社3年目の私は、
独自開発のカラーコピー機を開発・製造・販売する
事業部の東京営業所で営業を担当していました。

この事業部は、まさに赤字の元凶でした。
スタートは89年。が、コピー機は全く売れず、
わずか5年で事業撤退したほどです。

低迷の原因は、商品の機能にありました。
・サイズはA 3 ではなくA4まで
・1枚のコピーの所要時間は90秒
・普通紙ではなく、特殊紙を使用
・その特殊紙は、時間が経つと黄色く変色

こうした仕様にしたのは、安く売るためでした。
当時最も高性能だったキャノンのカラーコピー機は330万円。
対してブラザーのこの機械は85万円。

ここまで安ければ売れると見込んで世に出したのです。
が、結果は総スカン。
お客様から「これは安かろう・悪かろうの代表のような商品だ。
持って帰ってくれ」と罵倒されたこともあります。
まさに、ブラザーの黒歴史というべき敗北でした。

失敗から学ぶことの大切さ

そんな暗黒の時代にも、良かった思い出はあります。
当時、担当していた取引先の社長から次の言葉を頂いたのです。
「酒井君、若いうちは業績の悪い会社にいた方がいいんだよ」

その社長はブラザーの大株主で、本業は渋谷の家電量販店。
お付き合いでカラーコピー機を取り扱ってくれた人です。
その社長に、担当者として
「全国的にカラーコピー機は売れていない」という事実を
伝えたところ、この言葉を頂いたのです。

その時、この言葉の真意は私にはわかりませんでした。
が、後になって段々わかってきました。

それは、売れない状態が長く続くと、
人は「何がいけなかったのか。何を正せば良かったのか」を
何度も何度を繰り返し考えるようになることです。

プロ野球の故・野村克也監督の座右の銘は
「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」です。

この言葉通り、失敗には明確な理由があります。
「だから失敗したのだ」という真因に辿り着いたら、
人は二度と同じことをしません。
つまり、自分のレベルが上がります。
するとその人は、次は成功できるのです。

失敗を糧に成功を掴んだ先輩たち

私のいた営業所には、1つ上に池田さんという先輩がいました。
池田さんも私と同じく、企画段階からカラーコピー機に携わり、
売れない現実に悩んでいました。

また2つ下に水谷さんという後輩がいました。
彼も持ち前の若さで1台でもカラーコピー機を
売ろうと頑張っていました。

その池田さんが先日、ブラザー工業(株)の
次の社長に内定したとの報道がありました。

20代に時に事業撤退の辛酸を舐めた人が、
30年後に連結で4万人を超える会社のトップに立つなんて
ものすごく感動しました。

同じく水谷さんは、3年程前からブラザーの子会社の
(株)エクシングの社長を務めています。
カラオケのJOYSOUNDを経営している会社です。
彼もまたコピー機の失敗から多くを学んだのでしょう。

彼らの経歴を見ると、20代の後半から30代には
実に多くの成功体験を積んでいます。
カラーコピー機事業の失敗から学んだことを
それぞれの異動先で活かし、実践したのでしょう。

人は、成功と失敗の双方の経験があると、
「これは大丈夫、間違いない」
「これはまずい、なんか違和感を覚える」が、
肌感覚でわかってきます。

この肌感覚が意思決定時に、直感として働きます。
彼らがブラザー工業の株主から社長を負託されたのは、
意思決定力が優れていると評価されたらでしょう。

かくいう私は、カラーコピー機を担当する前に
ラベルライターの事業で成功を体験しました。
この商品は発売から36年経った今でも、
世界中で売れ続けています。

よって20代は、なぜラベルライターの事業は成功し、
カラーコピー機の事業は失敗したのか、
そればかりを考えていました。

この性癖は、その後「学び方の違い」になって現れました。

失敗からいかに学ぶか?

例えば、マーケティングの学習をする時、
人は、「こうすれば、うまくいく」というセオリーを
一生懸命記憶しようとします。

が、私は違いました。
ひたすら「なぜ成功したのか?」「なぜ失敗したのか?」
「どうしたら失敗を回避できたか?」の回答を
求めて学習しました。

そのため、マーケティングのセオリーを学んだ時も、
「ああ、だからラベルライターはうまくいったんだ」
「だからコピーは失敗したんだ」というように
学にました。そのため、そこから得た気づきが、
実学として身に着きました。

つまり、失敗した人の中には
「なぜ?」とか「どうしたら?」の疑問が生れます。
それが、情報のアンテナを高め、
「次はこうしてみよう」「次は気を付けよう」の
気づきを引き出します。

だからこそ、大株主だった社長は私に
「酒井君、若いうちは業績の悪い会社にいた方がいいんだよ」
と教えてくれたのです。

あなたの会社の業績は、今どうでしょうか?

仮に「不振」と言われる状態でも
慌てて転職など考えるのは止めましょう。

人は失敗からでも成功からでも学べます。
いつかこの体験が自分の糧になると信じて
今やるべきことに真摯に取り組みましょう。
失敗こそが自分のレベルを上げる最大のチャンスなのです。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

質問項目

  1. 具体的にどのような方法で社員に失敗からの学びを促しますか?

  2. 失敗体験を重ねたからこそできるようになることはありますか?

  3. 従業員のモチベーションが下がるのをどう回避しますか?


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