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ブランド・ポジションを把握せず、効果的なコミュニケーションは成し得ない。
マーケティングコミュニケーションとは、
企業が販売する製品やブランドについて「消費者に情報を発信することで説得、想起をさせる手段」です。
「この商品素晴らしいので買ってください!」というあらゆるアピール・説得のコミュニケーション。そして、「この商品のこと、この商品の素晴らしさ、想い出しましたか?また買ってください!」というリマインドをする役割ということです。
今回は具体的なコミュニケーション施策を考える前に、抑えるポイントや枠組みについて記しました。
どのように戦うか以上に「どこで戦っているのか」「自ブランドのポジション」を把握することは必要不可欠です。
発信者(ブランド)によってコミュニケーションのやり方は変わる
コミュニケーション施策立案でまず重要なことは、同じメッセージでも発信者によって伝わり方が変わるということです。身近な例に置き換えてみましょう。
「Aさんが言っても怒られないのに、Bさんが言ったら怒られる」
「東京のテレビ局が取り上げた飲食店に翌日から行列がでる」
「一流芸能人が紹介した商品が大ヒット」
なんてこともあるわけです。
「自身が何者か」を理解することで、有効なコミュニケーション施策が立案できるというのはシンプル話かと思います。
★「➀新商品」「②カテゴリーリーダー・ロングセラー商品」の違いを例に解説しましょう。
➀新商品
まずは知名度の獲得が最優先です。「頭にないものは存在しない」という、元P&Gの森岡 毅氏の言葉通り、まずは認知を獲得しないことには始まりません。客数の拡大が商売には必要です。
また、知られていない商品は取り扱ってもらえません。限られた商品棚でマイナーな商品を扱うには流通側も勇気がいるからです。
下記は新商品の優れたプロモーションの例です。
(例)サントリー『ジン翠(SUI)』
発売時に「居酒屋で飲むジンソーダ」という新しい打ち出しに加えて、「〜それはまだ、流行っていない〜」という印象的なキャッチコピーを掲げたTVCMで話題となりました。
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新商品の登場感や「これから流行るのでは!?」という期待感を演出できた結果、スーパーへの急速な商品配荷に加えて、使用シーンを明確にしたコミュニケーションで居酒屋への商品流通も円滑に実現させました。
②「ロングセラー品」
一方で、定番化された商品などは、知名度の維持や、リマインドとなるコミュニケーションが欠かせません。一度上がった知名度は何もしなければ下がってしまいますので、安定した売上の創出には知名度維持は重要です。
そして、ロングセラー品はむしろリマインドのために多額の広告費をかけます。なぜなら、私たちは毎日特定のブランドのことばかり考えているわけではないからです。
しかし、広告や売り場でふと目に入ることで、想い出すことも、欲しくなることもあるはずです。
購入経験がある商品は、一度体験されているが故に即購入に結びつくケースも多いです。
(例)日清食品UFO
これは、2018年に日清食品UFOが実施したバズキャンペーンです。湯切りのときに「裏蓋についてしまうキャベツをお箸で落とすのが面倒」という課題を解決するために『キャベバンバン』というオリジナル製品を、4,980円で1,000個を販売しました。ご想像の通り日清食品がこれで儲けようとは思っていないはずです。
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これを見た多くの人が「日清食品が面白いことやってるな!」「本気だけどくだらねーw」というバズが伝播され多くの人にリマインドされることに価値があると考えたと思います。
想起されることで「そーいえば最近、UFO食べてないな。買ってみるか」となるわけです。
これらは一例ですが、立場により行うべきコミュニケーションが大きく変わることはご理解できたと思います。
マーケティング・コミュニケーションの目的
自社ブランドの現在位置を理解すると、目的はっきりします。マーケティング・コミュニケーションの目的は大きく4つです。
①「商品カテゴリー認知・ニーズ創出」
目的は企業名やブランドのレベルではなく、その「商品カテゴリーへの認識、ニーズに気付かせる」ことです。
全く新しい商品や新カテゴリーの場合、消費者にとって「馴染みがないもの」です。
となれば、特定ブランドが欲しいというコミュニケーションの前に、消費者に「その商品が欲しい!」と思わせるニーズを喚起することが必要です。
(例)
➀化粧品などのカテゴリーでは、新しい消費者に向けて「○○に悩んでいませんか?」などニーズ自体を喚起することがある
②「スマートスピーカー」など、これまでにないカテゴリーの新製品であれば、まずカテゴリー自体の認識を拡大しつつ、需要を作ることが重要です
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【補足】
元P&G 西口一希氏は、「斬新な新商品」は、コンセプトテストを実施しても高い評価は得られないことが多いといいます。⑴プロトタイプ(試作品)などをつくらず、文字や絵でコンセプトを示すため ⑵回答者が「実際につくられる斬新な商品を想像できないことが多い」からとのことです。
①あの「iPhone」も発売前にコンセプトだけが伝わってきたとき、多くの業界人や著名人がそんなもの売れるわけないと明言しました
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②日清食品「カレー飯」も、レトルトカレーと白飯は別に準備するのが当たり前と考えられていた中での商品販売
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※これらの商品を「新カテゴリー創造商品」といいます。ヒットすればカテゴリーの1番手となり、何十年もカテゴリーリーダーとなれる可能性があります
② 「ブランド認知」
カテゴリーの中で、ブランド名を知っているという状態を作ることが目的です。
消費者はある商品購買を検討するときに、「想起集合」として思い浮かべるブランドの選択肢から、購買の意思決定を行います。そのため、ブランド認知は、ブランド資産の基盤ともいえます。
「良い商品作ってるんだけど売れない」というケースはそもそも知られていないことが原因なことが多いです。
問題のあるビジネスのたいていはプレファレンス(ブランド選好)以前に、「認知」「配荷」にわかりやすい大きな問題がある。認知を伸ばすこと、そして配荷率を伸ばすことは、一番わかりやすくて確実性の高い勝てる戦なのである。
商売には、「認知」「配荷・買える場所」の2つを押さえることが必勝法です。
またブランド認知は、客数を増やすという単純な効果だけではありません。
①認知度は「好感度」とも相関関係があるとされています。
②また世界の調査会社ニールセンでも、ブランド構築には認知度が重要と公式に記されています。
【リンク先】ブランド構築には認知度が重要|ニールセン (nielsen.com)
※単純な話、カラオケでは知っている曲を歌われた方が楽しいですし、話のネタとしても互いが知っているネタの方が仲が深まり、好感度が上がるはずです。
③ 「ブランドへの態度形成」
消費者がそのブランドを好きな態度をつくることを目的とします。指標としては「理解度」「好感度」「購入意向」を高めようということでです。
ブランド名が知られているだけでは商品購入までは遠いですよね。その商品の良さが「理解され、好まれ、買いたい」と思ってもらえる状況まで引き上げることが大事です。
★そこでポイントとなるのが、消費者の「不の解消」です。
消費者は商品やサービスを購入する際、「ジョブ=片付けるべき仕事」を解決するために商品を選択しているといわれています。不安や不満といった自身の不を解消してくれる商品というのはナイスガイで「愛される」対象になるわけです。
※ニーズには「不安を取り除く」「問題を回避する」といったマイナスの志向に加え、「感覚的な満足」「社会的な承認」といったプラス志向の場合もあります。
ジョブ理論は、イノベーション理論の権威であるクレイトン・M・クリステンセン教授が提唱した理論です。ジョブ理論では、「ジョブ」とは顧客が片付けるべき用事を指します。
ここでのコミュニケーション施作は「なぜその商品があなたにとって必要で魅力的なのか」という理解や興味を深めることで、消費者の好意的な態度形成を目指しましょう。
④「ブランドへの購買意図、購買行動の形成」
最終的に消費者がブランドを購買する、もしくは購買に関連した行動を形成することを目指します。
この段階では、購入意向(買いたい気持ち)を高めること。購入への後押しをするようなコミュニケーションが重要です。
(例)
・「景品ベタ付け」「消費者キャンペーン」「クーポン施策」
・「バンドル(セット販売)」「訳あり30%オフ」「決算大還元セール」といったものも含まれます。
![](https://assets.st-note.com/img/1718531256334-aP6m4HxVF7.jpg?width=1200)
・CMのぶらさがりで「お求めは○○で!」とメッセージをつけたり、セールチラシなども「行動喚起コミュニケーション」の一例です。
インセンティブや値引きなど「お得感」を付与することで購入の後押しになることが多いです。
◆理想的なコミュニケーションは、複数の目的を達成できているといわれます。
(例)TVCM
➀新製品のカテゴリーのニーズを喚起させ、ブランド名や訴求すべき属性を強調したメッセージ。
必要があれば、どのようにして入手できるかについても情報提供を行う。
②競合他社が参入した場合は、「自社ブランドを選好させるメッセージ」を流して、ブランド認知とブランドへの態度形成を行う。
③市場で自社ブランドが一定の理解を得られた後は、製品の新しい使用方法や価格のディスカウントなどの情報提供を行い、ブランドへの購買意図や購買行動を形成するようなメッセージを作り上げる。
広告予算における5つの重要観点
最後のパートです。
広告目的を決定した後は、 広告予算の設定が必要になってきます。
広告予算の設定において、考えた方が良い点を簡単に5つ記載しました。
① 「製品ライフサイクルの段階」
■新製品では「消費者の認知、試用(おためし)」を促進するために、 通常、多額の広告予算が充てられます。
■すでに確立されたブランドについては、売上に占める広告費の割合は小さくなります。
![](https://assets.st-note.com/img/1718531414619-iimiAHtxFU.jpg?width=1200)
② 「市場シェアと消費者の基盤」
■市場拡大によってシェアの獲得を目指す場合、 通常、 広告費は増大します。 一般的に市場シェアの高いブランドがその維持を図る場合、売上に占める広告費の割合は小さくなります。
■またコスト効率の観点では、市場シェアが高いブランドの方が、市場シェアの低いブランドよりも消費者に到達するための経費は少なく済みます。
③ 「競争企業と広告の状況」
■競争企業が多く、他社が広告費に巨額を投じている市場では、ブランドを認知してもらうために多額の広告費を投入する必要があります。
■自社ブランドと直接競合しない広告が氾濫している場合も、埋没を避けるために広告費の増大が必要になってくることもあります。
ここでは業界外の競合も含め、消費者の何を取り合っているのかを見極めることが大事です。
(例)キャンプ事業
一見競合しない、サブスク・YouTube・テレビなども、「余暇の時間」「生活者の可処分時間」を取り合っているとも考えれられます。
④「広告頻度」
■広告の量は、広告予算に重要な影響を与えます。ブランドのメッセージを顧客に理解してもらうために、どのくらい広告を繰り返すのかも検討しなければなりません。
【補足】
広告業界で経験的に語られているのが「セブンヒッツ理論」です。これは顧客と商品(または商品に関する情報)の接触回数が3回を超えると顧客が商品の存在を認知し、7回で商品を手にとり購買を検討するというものです。
![](https://assets.st-note.com/img/1718531460934-aYLaEuhT13.jpg)
⑤「製品の代替性」
■特に自社製品がコモディティの部類にあるブランドの場合、他製品と差別化するための広告に力を入れなければなりません。市場が成熟しており機能的な差がつきにくいケースがほとんどであるからです。
(例)ビール、お茶、保険商品など
そのため、ブランドイメージやパッケージデザインによる気分的価値の訴求による差別化や、購入を後押しをさせるための販促プロモーションを行うケースが多いです。
■ブランドに独自の特徴がある場合は、認知のされやすさなどに優位性があります。しかし、何もせずに消費者に見つけてもらうことは至難の業ですのでコミュニケーション施策は欠かせません。
この5つは戦略策定、効果的なリソース投下においても重要な点です!
是非、お役立てください。
~今回は以上です。ご一読ありがとうございました!~
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