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千の風

母が亡くなってからあと半年程で20年になろうとしている

突然世界がグレーに変わった日


仕事中の着信
実家や父や叔母から何件も来ていた

センター街から高円寺まで魂が抜けた状態で
道路はぐにゃぐにゃになって
山手線も中央線も床が隆起したスポンジみたいで
歩く感覚が無く浮いている
どうやって帰宅したのか

始発の丸ノ内線を待つ長い時間

妹と泣きながら東京駅で新幹線に乗った
兄は大宮から合流

長い長い悲しみの始まりだったが
しっかりしないといけないという強い気持ちが小さくあった

葬儀までの過ごし方の記憶は曖昧で
ただ単調だった
父が、八方塞がりだと言ったのを覚えている

初七日までの間に色々な本を読み
理解をしたかった
少しでも母がいなくなった現実を受け入れる為に

叔父がその間に、新井満さんの千の風になって
を持ってきた
まだ千の風になってが歌として歌われる前だったと思う

私はその本に救われたのです
静かに本を理解し違和感なく頭に入ってきた

私が思えば母はいつもそばにいる
今日は暖かい風になって
明日は冷たい雨になって

母が教えてくれた事全ては
私の中に生きていると理解出来たのです

そうしたら風が通って心が軽くなり
温かくなったのです
会いたいと思ったらいつでも感じる事が出来る
こんな風に言うだろう、考えるだろう

それが母の残してくれた愛である事も分かりました

私も誰かの風になって
そばにいたい
私の愛は難しいですか
愛した人全て受け入れ
風や光や花になって誰かの心を癒したいです


この歳になるとお別れをする事も増えました
最後までひとつ残らず持ち帰り
少しでもそばにいたい家族と
時計を何度も見る親族の姿と
そんな人間模様を何度も見ました

私はどこにも留まりたくないです
母と同じお墓には入れないと
故郷の風景を飛行機から見下ろし
北へ向かう空で泣いたこともありましたが
どこにも留まりたくないです
海に行ったり空を飛んだり花になったりして
自由に飛び回ります

誰にも迷惑もかけず時間も気にしないで

千の風吹かれ
パラッとその辺に撒いて

子ども達にはたまに話しますがまだ難しい様です

思えばいつもそばにいる

心の繋がりは一生忘れないし
愛がずっと繋がります


明日は雨になるようです
静かな夜に強い風が吹いています

グレーはグレーのままで
カラフルになるものはカラフルに


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