#建築の仕事〜ブラック現場に『センスと才能』が集うワケ
こんにちわ。建築士×〇〇 arisa です。
海が似合う真夏の太陽・サンサンとしていたらしいお盆シーズンも終了♡早くも9月‼︎…風が少し変わって過ごしやすくなりましたね♫
今回は、海にも旅にも行けず…休みもなく仕事の中身と業務量に半泣きした、飛込み件名 300m2超えのオフィス改良工事のお話から。
見えない漢気チームプレーと働き方。いきさつ、不満、達成感、そしてお礼の気持ちと。ブラックって一体何なのか??を考えてしまった、か〜な〜り偏った、わたし主観と偏見で思った事を書いてます。
ちょっぴり長ーい、もはや日記ですので、"工事現場のこととか、男臭い話はあんまり興味ないよ〜"って方は、バシっとスルーして下さいね(^^)
ちなみにここでいう『ブラックな定義』は、休みがなく仕事だけに日々追われている状態を指してます。大体1日15〜16時間ぐらい固定ですかね。自由時間はなし。ご飯は隙間時間で。
常に現場かパソコンのどちらかに囲まれてる状態のことで、電話も鳴りっぱなし。仮眠か、ってぐらいしか寝れない状況だけど、でも脅迫とか暴言はないという環境ですww
そんな現在のわたしの企業建築社員としてのお仕事は…
・全体の予決算管理や企画予算出し
・発注業務管理
・簡単な法令チェック
・工事提案資料作成
・ちょっぴり後輩育成兼ねた課内マネジメント
・現場などの緊急対応
・行政との打ち合わせ
っていうところで。今現在、現場監督として工事現場に立つコトはない部署にいます。そんなわたしがなぜ今、請負工事の話をしているのか!?と、いいますと。
もちろん、他部署の仕事に首を突っ込まなきゃいけない、普通じゃない状況が起きたからですっ!
本来受け持つ部署にトラブルが発生していて。どうにも首が回らない、でも断れない状況。そうなると、ほかの部署に応援を頼むしかないってなるんだけど、それがどうにも闇が見え隠れ。
もちろん、「やりたい人、いるか??」なんて悠長なこと言ってる場合じゃなくて。
ー"こんなの出来るわけがないじゃないですかっ!!"
なんで今やるんですか…
何かあったら、どうするんですかっ!?
この話を聞いた数人は、口を揃えて抗議した。
一通り文句とも言える意見を言った後は
『関わりたくない』と、下を向き
火の粉が自分に降りかからないように祈るように、課せられた仕事に戻った。
こちらを見ることさえもせずに。
もくもくと与えられた仕事だけに向かっている。
それが正しいかどうか、なんて誰にもわからない。
だけど、誰かがやらなきゃいけないなら、わたし”たち”がやれば良い。
研ぎ澄まされた現場には、必ず猛者たちが集ってくるー
中途半端な加勢は、邪魔なだけ。
そんな、暑苦しい135時間の裏側へー
ようこそ。
▼始まりは、僅かなほころび
「ちょっといいか」
ある日の昼下がり。上司から会議室に呼ばれた。
あんまりいい話じゃないってことは、なんとなく上司の背中から感じ取れていた。
”また何か起きたのかー”
廊下に出ると、外は雨。それだけで気分が少し湿っぽくなった。
最近の雨で、雨漏れ対策に関する修繕計画資料が激増していた。
どれもこれも、原因が複雑に絡んでて思うように解決にいたっていない。
そもそも支店長席じゃなくて、わざわざ会議室に呼び出すんだから、めんどくさくないわけがない。
朝から、ほかの部署の科長もいったりきたりしていた。
同じ件か、それとも全く別の件か。
「失礼します」
上司と2人、50人が入れる会議室のドアを開ける。
そこに座っていたのは、支店長と副支店長だった。
「忙しいところ悪いな」
おもむろに渡された2枚のA3用紙
「工事科が対応できない。お前に頼みたい」
『発注相手との関係性』『契約までにスピード必須』
『指定された工事日時で竣工させる』
『デザイナー絡みの家具、内装、配置に応える』
『既存の事務用品を全て指定場所に運び出すこと』
『基準デザインはうちと関係のない他社のデザイン会社が用意している』
わざわざ工程表をひかなくてもわかった。
『休み』なんか、どこにもないことを。
▼公的な休日出勤に揺れる各会社の苦悩
「冗談キツイよ。こんな時期から計画入って、本当にやるつもりなの!??
お盆時期なんて…メーカーどこも会ってないよ?材料だって入らないし。
そもそも、今からそんな人数集められると思う?皆んな休みの予定入れちゃってるよ…悪いけど約束はできないなーうちは。
申し訳ないけど、また違う物件あったら相談してよ。次は協力するから」
早口に思ってることを並べると、電話越しに最後は申し訳なさそうに。
A会社の所長にもやんわり?あっさり断わられた。
これで撃沈、3社目ー
「…ですよねー」
スマホの通話が切れるとデスクに放りなげた。別に分かり切っていたことで。ただの通過儀式みたいなもんだ。椅子の背もたれに身体を預ける。無意識に、ついつい高くもない無機質な事務所の天井を見上げてしまっていた。
目を閉じると、少しイライラが落ち着く気がした。
社内に鳴り響く、固定電話やスマホの着信音が頭に響く。
誰だって、『連休だーっ♡』てわかっていれば、かなり前から予定入れるよ。世年休入れれば休みが合うなら、友達との約束だって入る。子供が生まれたばかりで初の帰省の予定があったり。育休が取りづらい人たちだって、お盆休みは、まとまった休みで挽回する唯一のチャンスだもん。
お墓参りに家族サービス。子供の自由研究に、遠征試合の送迎。デートに海外旅行。みんないろいろあるよー
「…請ける仕事を、選ぶ権利はあるもんね」
"請けない"と決めるから、自分の時間が生まれるわけで?
家族との約束、社員の休みが守れる。
目先の利益や関係性だけじゃ、どうにもならないことだってある。
でも。じゃあ、断ってきた会社はただ仕事を選びとってるだけなのか?というとそうではなくて、ココはやらないって範囲を早くから決めて実行しているだけ。
鉄の心で、例外を作らないと決めてる所長や社長たちの考えは理解できる。
特に入れ替わりの激しい会社ほど、社員に交渉をしたくないのが手に取るようにわかるから。
「お前、あの件名受けたんだって?」
現場から戻ってきた青田先輩が背後から声をかけてきた。
雨に濡れたのか、タオルが首にかかったままだ。
「ですねー。なんか工事部隊は大変みたいで」
「こんなことってあるんだな」
「ま。非常事態は助け合いも必要ってことっす。貸し100だと思えば」
まさか、青田先輩にやってくれとは口がさけてもいえない。
小学生低学年の息子さんが2人。
久々の夏の連休のキャンプをココロ待ちにしていることを知っているから。
「沖縄は延期するのか?」
「あーーーー、いや。キャンセルですね。
3人でいってもらいます」
「ホント、仕事スキだなWW」
いやいやいや、わたしだって出来ることなら何事もなく連休を取りたかったよ。申請するつもりだったよ。
「まーーた仕事を優先するんだ?
arisaっていっつもそうだよね。
そんな仕事断ればいいじゃん。他にやる人いないの?」
実帆のごもっともな意見と、あの冷たーい視線が目に浮かぶ…
また3人へ埋め合わせも考えなきゃいけない。
仕事のレベルによる采配だってある程度は必要で。
誰でも頼めるわけじゃない。
あまりにも、必要な能力を持つ人がこの支店内に少なすぎるだけだ。
とは言え。
やっぱりわたしの優先順位はなんだかんだ、遊びより仕事なんだ。
現場の為に、頭をフル回転させている時が一番、生きてるって感じられる。
今朝持ち込まれた図面にチェックを入れながら、次の施工会社に電話をかけなきゃいけないと思うと、頭が痛くなる。
後輩たちの仕事も前に進めなければいけないし。
今やっている予算書も早く出さないと、今年度中に追加工事が出来なくなる可能性もある。
ふわっと、フルーツの甘い香りがした。
目の前をショートボブの女性が通り過ぎる。
「あーっ!佐藤さん、コレ見積もりのチェック終わったから。付箋のところ確認してみて。図面と数字合ってない。あと、この見積。金額がおかしいと思うから、社長に電話して確認お願いしたい」
「はい。わかりました!あ、あとここって…」
53ページの見積もりを、もう1人で作れるようになった入社2年目の佐藤さん。現場はまだあまり出させてもらっていないけど、理解が早い。
入社2年目だろうが10年目だろうが、やってみて気付くことがたくさんあるよ。
やらなかったら、出来ることも苦手も得意も増えていかない。
当たり前の話だ。
「あ。渡辺さん!この図面、3階の壁配筋足りないと思うんだけど
設計はなんて言ってた??」
「えーと、明日確認します。ぼく、今日用があるんで定時で帰りたいんで」
「そしたら、今電話して。まだ提示まで1時間あるっしょ。いなきゃいないで、伝言とメール入れといて」
「わかりました」
断る、やらない、簡単な仕事を選びとる。
残業はしたくありません、早出、休日出勤はやりません
だから『早く終わる、安全な仕事だけ下さい』
そんなもん、あるかいっっ!!!!
『プライベートが大切なんで。仕事は極力振らないで下さい』
『他の人に頼んで、誰もいなければやりますよ』
『それ、なんでぼくがやるんですか??』
知らないよ
少なくとも、そんな都合の良い仕事、ココにはほぼないだろ
ーじゃあ、誰がやるの?
ほっておけば。誰かほかの人がやってくれると思っているの?
今回みたいにー
一体ナニをしたくて、この建設業界へきたのかなぁ。
モノづくりじゃないのか??
この会社へ入った理由は何なの。
使命感を持て!とまでは言わないけれど、現場に出たくないなら事務屋にでもなれば良い。
エクセルやプレゼン能力、伝える力をつければまた違う未来が待っている。
逃げてばかりいないで、1度ぐらいドン底まで追い詰められるのも、こっぴどく怒られるのも、また一興だ。
…そんなやる気のない社員を育成するのも、『会社』の役目でもあり、わたしたち中間管理職の役目なんだよね。
「とはいえ、まずは、会社選定なんだけど」
5社目の社長の携帯番号を見ながら、無駄だと分かっていて掛けねければいけない通例に、頭が重くなる。気がした。
ーこんなギリギリ予算と超突貫。
他との調整もてんこ盛りで、他社のデザイナーまで入ってる。
もし材料が少しでも足りなかったら?
もし、人がピンポイントで集まらなかったら??
施工側は軽々しく請けたら大怪我する。
そんなの誰だって予測できる。
イージーダーク案件。
つきっきりで、現場対応しなければ狂うことぐらい目に見えてる。
断って仕事選んで定時に帰る人は、傍目には有能と映って評価されることもある。一方、誰もやらない仕事はやる人間に振り落とされて。減らない仕事と期限のプレッシャーに埋もれて窒息、出来て当たり前。
少しでもミスを起こせば、徹底的に叩かれる。
給料やねぎらいに反映されることはほぼない。
「出来ないなら、最初に言えばいいだろっ!!」
なーんて言われちゃったりしたら、あまりに理不尽だと思う。
助けを呼ぶ、そのスキさえも与えないくせに
とは言え、やる気のない人間を無理やり働かせて、もし訴えられでもしたら、そりゃ会社としては相当な痛手で。余計な手間と時間がかかって、解決策が出なければ、もっと困る。
だからこそ、特にそれが中小企業の社長や所長たち経営者組だったなら。こういう案件にすぐ怪訝そうな顔をするのは、凄く納得できてしまう。
だから、5社目の電話はあくまで通過儀礼。
断わられるのは、かける前からわかりきってる。
▼道はあるのに、選べないのは
『お前なっ!!仕事の第一声に出来ませんはないんだっ!!断る事ばっかり考えるな!!出来る条件を叩き出せ!その上で、相手とよく交渉してこいっ
!!そんな当たり前の事もできない奴は、現場にはいらんっ』
「…あの人なら、この物件どう扱うんだろうね」
後輩が持ってきた、予算要求書に追加の赤ペンを入れていると、ふと幻聴には似つかわしくないぐらい鮮明に。亡き所長のドスの効いた声が脳裏に響いた。
新卒入社で入ったゼネコンは新人を過ぎても尚、言い訳は決して許されなかった。だって、所長は"出来る"ことを知っているから。浅はかに。「考えることをサボるな、安易に答えを出すな!」って事だったのだろうと、今ならわかる。
きっとあの所長なら、「バカかっ。こんな事でいちいち悩むな!」って言うに決まっている…
だって一社。確実に請けて施工出来る可能性を秘めた会社があるから。分かっていて、最初に電話をかけなかった理由は、付き合いや地域特性の通過儀礼があるからだ。
だけど本心は
この会社に打診することに少し迷っていたのは。
ただ、1つ。たった1つの欠点を受け入れるのに。
少し時間が欲しかったのかもしれない。
わたしと一緒に危ない橋を渡りきってくれる、"誰か"はきっと、この一社だけ。こんな面倒くさい、請ける理由が1つもないものを。形にできる可能性のある若手と熟練が同時に集まるであろう、あの会社だけ。
この会社の唯一の弱点。
工事資料を作成したり図面を直したり、写真管理が出来る人間がいないこと。
"ーもうこれ以上、疲れたくない
苦労したくない"
帰りたい…でも、
心の中に渦巻いた、黒い黒い想い
「…それってどうよ?」
浮き上がってきた自分の本音に、吐き気がした。
ここまで追い詰められても、まだなお。こんな甘ったれた考えが出るなんて。わたし自身も、仕事を選ぶ彼らのことを言えない。
工事を終わらせて無事受け渡すこと以外、全てたいした問題じゃないはず。わたしが書類と雑務の全てを引き受ければ、現場は必ず終わるー
それで良いじゃん。
契約・乗込みまでの期限まで、残り1ヶ月半ー。
内装や什器関係のメーカーとの打合せで、残っているのは細かな調整だけ。
使いたいモノはすべて選ばれている。
いまならまだ、資材の発注はメーカーに十分間に合う。
特注品は先に担当者から話をしておいてもらおう。
『今日中に、会社選定を終わらせるー』
ーわたしは椅子を蹴り上げ、書き換えた選定調書を手に社内調整に走った。
ー⭐︎ー⭐︎ー⭐︎ー
「副支店長。例の工事。S工業に打診しても宜しいですか?」
17時過ぎ。予定より早く戻ってきた副支店長が着席するや、施工する協力会社変えを打診した。それ以外の根回しは、もちろん全て終了済で契約書類もS工業で作成を始めていた。
副支店長のGOさえ貰えれば、そのまま押印申請に回すことができる。
地域特性や面倒な上司たちのギリは果たしてる。そもそもどの会社にもあっさり断られた訳だし、今回の件についてはどこの施工会社にも文句を言われる筋合いは、ない。副支店長だって他に選択肢がないことぐらい分かってるはず。
「やっぱりダメだったか。…Sはやるかな?」
「恐らく。でも決まれば、わたしは現地に入りっぱなしです。電話連絡だけでどうこうなる現場じゃありません…発注側の現地立会いもありますし、指示出しと確認。しかもあのデザイン、その場で基準と抜け感を決めていかなければ、絶対に終わらないですよ。工期算出上は電気工事含めても、14日間でギリギリです。
現場は休み無しです。職人の休みの管理は社長にも重々伝えますが
…その辺はうまく考慮してくださいね。終わるまでわたしも代休すらとれませんよ」
副支店長は少し、眉をひそめると
「…悪いな。頼んだ。週一回は休めるように誰か代わりの代理人を見つけろ。9月は休めよ」
とだけ言うと、後ろに並んでいた後輩と別件の話をし始めた。
まだ蒸し暑くなる前の、6月中旬 ー
この瞬間『お盆休みも土日もない8月が、首を長くして待っている』ことが決まった。
▼『俺がやらずに、誰がやる?』
「いいよ、それやろうよ。ちなみに見込み、何人ぐらいの職人が必要だと思ってるの?」
現場終わりの電話口のあっさりしたS社長の口調に1つ、肩の荷が少下りた気がした。いつも通りのスピード感と、軽さに安心する。
「初日から3日目ぐらいまでは最低30人は欲しいですね。簡単に工程表書いたのであとで送ります。天井解体が必要で。しかも既存はシステム天井なので。軽鉄じゃなくて鉄骨の補強も必要です。
図面には落としてありますが、スクリーンとか、オシャレ灯具とか新設するのに補強がかなり必要になりそうで。C鋼と65の軽鉄も欲しいです。下地材と壁クロスはちょっと多めに用意して欲しくて。
えーと、デザイン図面と写真、決まった品番等はあとでパソコンに送ります。施工図はわたしがかいたものだけど、一応あります。
結構、職人泣かせの内装デザイン入ってて、床のカーペットも全部カットデザイン入ってます。工場カットは無理なので、全部現場で切る必要があるかと。
電気工事や備品の設置は別で計画中で…あ。あとで他系列の全体会議の日程も決めたいです。
とにかく時間が限られてて…机とかロッカーの搬出とかもあるから搬出解体を着手から3日以内に終わらせる必要があります」
もぉ、わーーって。
息も絶え絶え条件を一通り伝え終わると、S社長は電話の向こうで笑いだした。
「いいねー、その緊迫感。やりがいがあるじゃん。
現場責任者は俺が出るわー。
で、今行ったこと悪いんだけど携帯にメールしといて。
ついでに下見の日にちを段取って欲しいんだけど。あとは…材料か。決まってないもんはあとどれだけある?下見に行くときには全部確定しといてほしいな。とりあえず鉄骨だな…」
電話先で20分ちょっと。
この後、材料発注などで現地で打ち合わせをしたのはたったの2回。ーそれから僅か3週間後。
工事初日にあっさりと41人の仲間を引き連れて
無事竣工まで導いてくれた、S工業の若社長。
この人の人間性は、ほんとにヤバすぎると改めて感じた14日間の幕開けだった。
ぞろぞろと8階建てのオフィス棟を行ったり来たりする職人さんたち。
「おーい、この荷物ドコに持ってくの??あの倉庫?」
「こっちの言われた塗装って、この色だとちょっと濃すぎると思うよ」
「タイルカーペット35ケース届いたけど、どこの部分で使うやつ??」
「社長ー!!この鉄骨、点付溶接するの??隅肉??」
毎日毎日、S社長の下で職人をかき集め、自らも現場に出続けてくれたN社長とその会社の社員たちの恩恵は計り知れなかった。小さいことから大きいことまで、声と手が止まることはなかったから。
彼らは毎日8時30から夜23時までかかって、クっタクタなはずなのに。毎日何かしらおきる、軽微な変更や力仕事に嫌な顔ひとつせず、やり抜いてくれた。
わたしが持参したノートパソコンの前で、しゅん功図を修正しつつ写真整理をしていても、天井裏に潜って調査いていても、お構いなしwwそのレスポンスの速さに助けられることは多かった。
どの現場に行っても「施工図面さえあればな〜」と、いう声を良く聞くけれど。仕上げのデザイン要素が多いものは、内装の施工図なんて時間がかかる割にたいした役にも立たないことが多い。…まぁ、無いよりはマシかなって程度。
製品として製作されてくるものは別として。現地で表現するマルとか楕円とか。壁紙と四隅のおさまりとか。四角じゃなくなるほど基準となる墨を出すのも、範囲を決めるのも一苦労。
壊してみなければわからない、天井や壁の中。びっくりするぐらい、もらっていた既存の図面と違うwwその場ですべて決め直していかなければ、工事が止まる。「わかりませんでした」は通用しない。想定される最悪の事態を回避していくことを考え準備する。
「材料余分に発注しといて良かったーーっ」
S社長と胸をなでおろしたのは1度や2度じゃない。
見た目のオシャレや空間の表現は、図面だけで原理原則のようにパキッとはいかない。どこで色を切り替え、何処から始めるのか。
壁と柱と床の色合いが微妙に交わる表現を、何ミリ単位で表現するのか。
図面通りの寸法なんかじゃ合わないし、その通りに作ってもカッコ悪い場所が出てくる×2。
"何、この幅…なんか気持ち悪いよね"
"コレ、なんか雰囲気違うー"
「一応予備の材料入れてあるから。不便だからココの床配線とコンセントやり変えよう!」
「この壁紙の色、合わないな!あっちのと入れ替え可能か打診してきて」
抜け感と、美的センスが空間を彩りカタチ造る
やっぱり最後は、人の感覚がモノを言う。
パッと見の、この感じる違和感や、キレイだと思う感覚はきっと正しい。
『いえ。これが当初の図面通りなのでー、いいはずです』
なんて。
そんなダっサい言葉を口に出す人は、この現場に1人もいなかった。
手戻りや変更を恐れて、そんなありきたりな発言をする人は。このチームには誰一人いなかったよ。
もちろん交渉、確認、管理をするのは全てわたしの役目だけれど。
「これ、絶対おかしくなるよ?」って、やっちゃう前に気付いて意見をくれることは嬉しかったし、とても助かった。ちょいちょい変えた提案を「それ、良いね」って受け入れてくれた、発注元の担当者にもメーカーのデザイナーにも恵まれた。
全員が全員。
このオフィスをより良く、具現化させることしか考えていなかった。
頭がキレる、仕事大っ好き人間のS社長。
経営者なのに、現場に出っぱなし。事務はほぼしないしww(それはそれで、褒められた話ではないのかもしれないけれど)どんな無茶振りもこなしてみせるその力量とセンス、仲間内の絶対の信頼感を勝ち得ている、S社長。
この人の手腕と、記憶力の良さには本当に頭が下がるばかり。だって、この現場を回しながら、10を超えるほかの現場の指示をこの場所で、わたしの隣で出し続けているのだから。
『この社長が働いてるんだから…俺らはやるしかないでしょ♫』
毎日、毎日夜の23時を超えても冗談を言いあいながら、重たーい210㌔の什器を手で運び入れていくN社長一派。普通、グチの1つ出てもおかしくないと思うけど。現場の雰囲気は、終始和やかだ。
仮設、解体、内装、塗装、建具、の職人さんたちも。
最初から最後まで、ほとんど同じ人が出続けてくれたおかげで。現場内容や、時間や建物への入り方とかの説明に時間を取られることもなく、意思疎通もとても測り易かった。様々な細やかな配慮に。本当に感謝しても、感謝し足りないことだらけっ!!
特殊なタイルカーペットも。特注の壁紙も、配列や使用する場所が変わったのになんとかギリギリ数も足りて、奇跡の連続。
皆んなで頭を抱えつつも毎日、毎日朝早くから夜遅くまで作業して。
何とか工期内に仕上げた、このオフィスの工事にはもちろんテーマがありました。
『働き方改革』
この場所で働く人の利便性と効率化を願って、企画・計画された工事だったよ。
▼休みがないことが、やらせることが"ブラック"なのか。
ブラックだと思われがちな建設業界に限った話ではないけれど。休みがイレギュラーになる事なんて日常で。現場によっては普通に夜勤だってある。時間が来たから帰れるなんて、ほとんどない。
オープンのために。休みなく動かさなければいけない時だってある。
でも、工事がなければ事務仕事だけで帰れる日もある。
それでも、業界として働き方を考えていくことはとても大切だと思う。
進歩した科学に頼ることも、設備に先行投資していくことも、人財育成も必要。
会社の規模に関わらず無駄と思える工程や、ハンコラリーのような何の為にあるのかわからないチェックのたらい回しのようなものは。ホント時間の無駄だし、似たような書類は何枚もいらないとすら思ってる。
毎回イラッとくるのは、片手じゃ持てないぐらいこーんなに分厚い書類をいくつも作って出してるのに、分かり切ってた理由で最後にドンデン返しをされたりするとき。それだって、きちんとどんでん返す理由とその前に指示した理由を言ってくれればいいのに、なぜかそうはならないことが多い。
何もかもが無駄に思えて。
何もかもが、いいように扱われているように思える。
建築に関わる人間なら。モノが出来る前に、もっと気付けることがあるでしょうよ、ってことすら多々あるし。本当に最後は人間性とどこに重きをおいているか、なんだなーと思うことだってある。
だからこそ、法令や基本的な要点チェックぐらいは早くAIがやってくれるようになれば良いなと思ってしまう。面積から割り出すモノや、耐火・準耐火とかが合っているか否かなんて、いまどきAIで十分な気がしてならない。
工期や天気、材料に左右される建築の働き方は。どんなに科学やAiが発達しても、そんなに簡単には激変なんて出来ないのかもしれない、けれど。少なからず身軽にはなれるはずで。
色んな道具や機械や重機のお陰で、時代が進むほどに仕上がるまでのスピードが信じられないほどに上がってきているから、きっとこの先もっともっとスピードと強度は上がってく。わたしの父親の代で1年かかっていた建物の工事は、今や半年程度で仕上がるし、強度はそれ以上だ。
それでも。最後は人の手が、仕上げるものだからー
どんなにブラックだと言われようが、追い込まれて誰かが離脱しようとも。必ず終わらせなければいけない"仕事"が常に存在する。
それは思い上がりでも、正義感でも何でもなくて。
『間に合わせなければいけない』
『より良いものを造る』
ただ1つの想い
ただ1つのゴール。
だったら、ここで今自分が出来ることは何?
他の誰かの尻拭いをしてでも。
どうすれば終わるのか、それとも変更するのか。
出来ることは全てやる。
それしかない
これは、一種の使命感と言われてしまうのでしょうか
それともだたの暑苦しい、時代錯誤のただの自己満ですか?
だけど、そういう人がいなければ。
そうじゃなければ。
一体誰があのオリンピック会場を期限通りに仕上げることが出来た?誰が、安全に使える駅や、ショップ、ホテル、学校、空港の修繕や改良を。夜な夜なこなして平常運転させていくの?
誰が"皆んなの当たり前"をー
創って、守っていくことが出来る?
もしも、もしも。
彼ら職人さんが一斉にそっぽを向いたら?
街は、日本は。きっとカンタンに廃墟が増えていく。
だから、わたし達発注者は、元請けは。
甘えちゃいけない。
ウチがやらねば誰がやるって気概と漢気のある人たちに。甘えて、頼んで、どうにかなると、いつまでも思っていてはいけないと強く思うから。
どんなに良い企画、設計がそこにあったとしても。
カタチにしてくれる手がいなければ、何もカタチにはならないよ。
机上の空論なんかクソくらえ!!
だから
『ありがとう』
休みだったはずの世間一般的な大切なお盆休みを、嫌な顔もせず全て返上してくれて。
毎日×毎日 連日連夜
朝早くから夜遅くまで工事現場にカンヅメで
子供が起きてる姿なんて一切見れない8月を過ごしたのに。
それでも。
よりよいモノが仕上がるようにと、休みなく第一線に立ち続けてくれたから、仕上がった。
感謝と称賛の声を届けるには「ありがとう」じゃ、足りないけれど。「ありがとう」しか浮かばない
『ありがとう』
今、あのオフィスに笑顔が溢れているのは。
100%、あなた達のお陰です
▼『完了』そして、次の現場へ
仕上がったオフィスのど真ん中で迎えた深夜0時過ぎー
指定日より2日の余力を残して終わった、ガラッと変わったオシャレオフィス内。ふかふかのカーペットの上で
「働き方」ってなんだろね?って、皆んなで笑ってしまった。
仕上がったこのオフィスはもはや、ちょっとしたホテルラウンジ?オシャレカフェに近い。細かな壁で仕切られていた閉塞的な、いわゆる『普通の会社』にありがちな無機質なスチールのグレーは今、どこにもない。
見通しの良いオフィスは一部、レースカーテンで一部で仕切られているだけで。一部には集中スペースとして、音を遮る素材で作られた三方囲まれたプチデスクスペース。
広々とした部屋の中央にある柱はシックな焦げ茶の木目調と明るいホワイトの中に置かれた、大きな木目のテーブルと。空間を邪魔しすぎない山吹色や深緑のカラフルな椅子たちが並ぶ。
各エリアの各テーブルには、オシャレなペンディングライトが淡い光で手元を照らす。黄色すぎず、白すぎない不思議な色合い。
こんなところで毎日働けたら、もうワクワクモンだ。
「…すっごーい。出来上がったねー」
「…いやー!なんとか終わったー」
「良かった、よかったーー」
ついさっきまで覆われていた、ブルーシートやプラダンなどの養生は全て剥がされ。掃除機と拭き掃除をしたこの部屋は清々しかった。
仕上がったこのフロアは、確かにここで働く人たちの働き方改革をする為に生まれた空間だろう。
でも。造られたこのフロアの過程は。
出来上がるまでのこの現場は。いわゆるブラック現場以外の何者でもない。
余計に、笑いが止まらない。
「こんな仕事、ドMじゃなきゃ続かねーww」
「いやー早く帰ってベットで寝たいわー」
「こんなところで働いたら、俺だったら気持ちよくて仕事どこじゃないなー。毎日寝ちゃって仕事にならないかも」
安堵と達成感に包まれた穏やかな顔で、言葉が飛び交う。終わったコトに安堵したせいか。みんなすぐには腰が上がらないww
絶対に終わらないと言われた現場。
でも。彼らは終わらせた。その腕と心意気で。
この”絶対に無理”だと言われたこの工期内で。
彼らが所属する大小、それぞれの会社には、『人材育成』や『人財確保』『お金の流れ』という共通の悩みがある。今、職人になりたがる人は一定数はいても、3年続く人は5割もいないという現実がある。
だからかな…普通の現場の平均年齢は大体、50代前半ぐらいが多い。
それでも。今ここに集まっている平均年齢は34歳なのだから、それだけでも十分奇跡が起きている。
しかも今日ココにいる人たちは皆、なんだかんだ文句を言ってもこの仕事が好きだって言うことが一緒にいて、伝わってくる。
そして。自分たちの仕事と腕に誇りと自信を持っている。それに見合う(と、イロイロ画策して思うようにしてる?)お給料や経験を貰っている。
家を守る、パートナーはきっと大変なんだろうけどね…
1人の社長の決断から始まった、この工事は
『あの人がいうなら、やるしかないでしょ』と集った人たちが続々と集まり、不可能を可能に変えた。
才能ある猛者たちが惜しげも無く腕を振るったおかげで。問題だと思っていた、全てのことがあっという間に問題ではなくなっていった。
作業中、ガタガタ文句が出ることも口論になることさえほぼ無かった。それは文句が出ないように、それぞれが先を見て相手の事を考えて立ち振る舞っているから。もちろん、二度手間も生まれていない。
資材の加工場や材料置き場で揉めることすらない。
現地で変更が続いたって、すぐに順応できたのは。
すぐ側に、頭がキレる司令塔が常にいてくれたから。
時間の経過と共に、どんどん仕上がっていく室内。
元の形が思い出せないぐらい、変わりきったこの景色に。
もう、言葉が出ないー
わたし達が共にした135時間はー
奇跡の連続のまま、清々しい深夜に幕を閉じました。
そして、彼らはまた次の現場を終わらせに移動するー
この後ー
竣工書類に追われて徹夜している中、休暇明けのゆるゆるな空気読まない後輩に。「コレ、間に合わないんでやって欲しいです」と仕事を振られてキレたのは、また別のお話ww
▼最後にー
今回の件で改めて思ったこと。
それは
『仕事をする上で誰と共に多くの時間を過ごしたいのかーどんな想いで、自分の仕事と向き合うのか』
これから先、どんな職業を選んでも
わたしはその手に誇りと想いを込めている人たちと、
一緒に居たいと、心に決めた。
「あなただから」と言われる人の背中に、
憧れたままじゃ、終われない。
この先、どんな業界で働こうとも。
憧れた人と共に歩ける力量を、わたしは身に纏う努力をすると決めました。次の扉が開いた先に、どんなことがあったとしても。
センスと才能が集う場所に、いつづけるために努力をしたい
※※※
⤵︎⤵︎長々とお読み頂き、ありがとうございました(//∇//)
そんなわたしが建築士を辞める理由はこちらから🎵
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