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へんいち文庫新刊『蝶々の篆刻』発売

昨日、〈へんいち文庫〉に新しい一冊が加わった。
文子さんの詩集『蝶々の篆刻』だ。

全107篇の珠玉の詩は、瑞々しい感性で綴られたものあり、どす黒い毒素を吐いたものもあって、この詩集をひとたび開けば、まるで文子さんの脳内胸中をヒラヒラと舞う蝶々の旅のよう。

実は、僕は子供の頃から詩・韻文の類いを苦手としてきた。
だって、小学生の頃の自作の詩は「おねしょのふとんは世界地図だ」。
詩を単なる言い換えや勝手な見立ての表現だと勘違いしていた節がある。

文子さんは、寒風吹きすさぶ昨年11月に神戸に来られ、僕はアテンド(同行ガイド)+青空キャリコンをお引き受けした。

村上春樹をも唸らせる〈トアロードデリカテッセン〉のサンドイッチをテイクアウトし、総毛逆立つ極寒のメリケンパークで海を眺めながら食べたのはよい思い出だ。

ビールが好き!という文子さんの望みを叶えるべくお連れしたビアホール〈ニューミュンヘン〉で、この店に来たなら絶対注文するクリスピーな地鶏唐揚げをムシャムシャ頬ばりながら僕は正直に言った。
「詩はふだん読まないんですよ。詩の内容を理解することができなくて。でもなぜか文子さんの詩だけはいつも読んじゃう」
文子さんはでかいジョッキを傾けて、ニコニコしながらこう言った。
「理解しなくてもいいんですよ、詩って。読んで心に浮かんだもの、それがすべてです」

僕の中で詩を覆っていたガチガチの氷壁が融解した瞬間である。
理解しなくてもいいんですよ、って文子さん、そんな嬉しいこと言っちゃっていいの?
唐揚げのクリスピー感がさらに増した気がした。

その文子さんのひとことで、詩に対する見方、距離感が一変した。
数か月後、文子さんから詩を一冊にまとめたいから編集をお願いできないかと依頼が入った。
僕は、海のサンドイッチ、ビアホールの唐揚げを順に思い出し、文子さんの「理解しなくてもいいんですよ、詩って」の言葉を思い出した。
そしてもちろん、僕は引き受けた。

そこからはホントにいろいろあった。
理想的なボリュームから現実的なボリュームに削ったり、章立てを色別に分けたりと、文子さんの作家魂と僕の編集魂がスパークして…

いったん完成かと思われた7月にもまたいろいろあってひと月延び、ようやく昨日、『蝶々の篆刻』発売!

文子さんたってのご希望で、kindle(電子書籍)ではなく紙の書籍。
その分お高めだが…ってこの「本は高いキャンペーン」はいい加減やめたほうがいい。
服なら1,716円は格安なのに、なにゆえ本になると高いと感じるのか…
ぜひ手に取って、ヒラヒラと文子さんを巡る旅を楽しんでほしい。

試し読みはこちらのQRを読み取るか、タップまたはクリック。
本書69ページに収録された一篇の詩「泡」をお読みいただける。

文子さんご本人の出版記念記事はこちら。

充実の〈へんいち文庫〉、現在ラインナップは9冊!

(2024/8/27記)

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