神戸の魚河岸はしっかり魚河岸だった
昨日、神戸市中央卸売市場本場に出かけた。
「神戸市民のみなさまとの交流イベント!『魚河岸デー』」とあらば、もちろん喜んで。
「魚河岸」という言葉は、なんとなく江戸の日本橋、あるいは昭和の築地の専売特許と感じていたが、本来、魚介類の取引が行われる市場のこと。
冷静に考えれば日本中いたるところにあるわけで。
神戸の中央卸売市場も「魚河岸」という言葉をちょくちょく使うから、前からその魚河岸っぷりが気になっていた。
けれど場内に入れず実態が分からないため、実はショボかったりして、といらぬ心配をしたり。
それが昨日この目で確かめられるとあって、飛んでいったのだった。
手前に建つビルに阻まれて、この光景すらふだんは見ることがない。
思わず、へぇ…と声が出る。
思えば昔、東京出張とあらば東銀座あたりに宿を取っていた。
築地まで歩けるところでないと、地下鉄の始発前に市場に行けないからだ。
朝4時から並び、仕事前に馴染みの寿司屋で馴染みの店で寿司をつまみ、ビールをひっかけた。
東京に住んでいた頃は行こうとも思わなかったのに、不思議なものだ。
そうそう、この感じ。
大好き、魚河岸。
駆け出したい気持ちをぐっと抑える。
イベント開始の号令もなく、皆お目当ての店に向かう。
今日だけは小売りが許されるのだ。
魚河岸に行くなら鯛がほしいと思っていた。
ただ、他の魚が軒並み激安価格で小売りされているのに、鯛は1匹2000円からというから、確かに安いがちょっと躊躇。
と、まな板の鯉ならぬ、まな板の鯛を発見。
訊くと、10名限定で鯛のさばき方教室をまもなく始めると。
マンツーマンでプロが教えてくれるというのに1000円ぽっきりで、さばいた鯛はもちろん持ち帰ることができ、なにより10人枠の最後の1人という。
そんなん、もちろん参加するに決まってるやん。
さばきながら撮影はできないので、写真はない。
中骨に肉をちょっと残しすぎたと悔やむも、あ、お兄さんうまいうまい~とおだてられ、満足して卒業したとだけ書いておこう。
持ち帰った鯛をどうしたかは記事の最後に。
市場の中をぐるぐる回って、もう楽しいったら。
暗いし、びちょびちょやし、なんせ生臭いのに、僕は魚河岸が好きだ。
スーパーに行っても魚売場から足がなかなか動かないから、魚そのものが大好きなのだ。
でも、水族館にはあまり関心ないので、食べる魚限定ということで。
時折小雨まじりのどんよりした朝だったが、すぐ横でチャプチャプいう海の音を聴くだけでほっと落ち着く。
瀬戸内の海はザブーンでもザザンでもなく、チャプチャプなのだ。
実はこのエリア、先月末のぐるめぐる神戸で歩いた付近。
昨日の魚河岸デーの後なら、ぐるめぐるご参加の皆さんにもう少し知ったかぶりができたのに。
ちなみに、ぐるめぐるのランチはすぐ隣のイオンモールの魚屋だった。
イオンモールとゆめ侮るなかれ、この魚河岸直送の魚にあふれた特別店で、それはもう終日魚を求める客で大賑わいなのだから。
続いてキッチンカーの集う仮設フードコートへ。
新開地の洋食の名店〈グリル一平〉。
神戸でその名を知らぬ者はいないだろう。
それが今回「エビドッグ」なるものをひっさげて登場とあって、前日から楽しみにしていたのだ。
尾を上げて舟に乗るビジュアルはなかなかに勇ましい。
その場で揚げたエビフライはサクサク、グリル一平のタルタルとの相性はもちろん最高で、それを支えるトミーズのパンがまた甘くてうまい。
長蛇の列を30分並んでゲットした甲斐があるというものだ。
ひゃあ、なんと楽しい時間なのだろう。
久々に愛媛のミカンもゲットし、満足に包まれながら市場をあとにした。
戦利品の一つ、鮭ハラスは1.7kg入ってお値段なんと100円。
お兄さん、これで今月食費いらないねとかなんとかそそのかされて…いや、そそのかされんでも買うでしょ、100円は。
そして教室で美麗にさばいた鯛は、皮に熱湯を注いで氷水で〆る「湯霜」にし、ふだんより気持ち厚めに引いて贅沢なおつくりに。
やっぱり鯛刺しは皮がなくては。
神経抜きをプロが先にやってくれていたから、身の締まり具合が違う。
ゴリゴリでもなくグニョグニョでもない、ちょうどその中間。
うまいって、うますぎるって!
結構骨に残してしまった身も、あら炊きにしてきっちり回収。
いやもうホンマ、なんでこないにうまいねん。
神戸の魚河岸はしっかり魚河岸だった。
日々見えないところで市民の食を支えてくれていることに、心より敬意。
魚河岸デーはたまにやっているようなので、次回もぜひ足を運びたい。
次はもっと上手にさばくねん。
(2023/11/19記)
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