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政治哲学小説『卡斉政要』

1. 帝王学の教科書『貞観政要』

 東アジア(中国・台湾・朝鮮・日本)には、特殊な学問がある。それが「帝王学」である。「帝王学」と言う学問の意味は、明確な定義は無いが、以下の通りである。

〘名〙帝王の地位につく者が帝王としてふさわしい素養や見識などを身につけるために行なう修養。帝王として必要な態度・識見を身につけるための修養。

 さて、そんな帝王学の教科書と呼ばれるのが、『貞観政要』である。東アジアの帝王学の原点となるのが『書経』であり、その次に、『大学』や『中庸』、またその他にも、『孟子』・『荀子』/『管子』・『商君書』・『韓非子』/『墨子』・『老子』・『晏子春秋』等、多々あるが(中国哲学は「政治」が中心である)、取り分け人気かつ具体的な書物は、圧倒的に『貞観政要』である。帝王学の書物と言えば、真っ先にこれが挙げられるといっても、過言ではない程である。

 『貞観政要』とは、以下のような書物である。

唐代文化を基礎づけた太宗の実録と群臣との対話を収めたもの
貞観政要は唐の呉兢の撰、全10巻。世界史上に輝く唐代文化を基礎づけた太宗の実録と群臣との対話を収めたもの。東洋の政治と文化を知る上で必読の書。わが国でも中世以後の武家社会で重んじられ、軍記物語などにも多く引用されている。
□よき君主は諫言に傾聴する□
唐王朝(618-907年)の第二代皇帝にして、王朝の最盛と謳われる七世紀「貞観の治」をなした皇帝・太宗が、広大な版図を治め、王朝を栄えさせるために、臣下と議論を交わし、ときには痛烈な諫言を受け入れた様を描いたのが、この『貞観政要』全十巻四十篇です。
「私の非が明らかにならない理由は、官僚たちが従順で、皇帝の機嫌を損うのを憚かっているためだろうか。そうならないように、私は虚心に外からの忠告を求め、迷いを払いのけて反省しているのである。言われてそれを用いないのであれば、その責任を私は甘んじて受け入れよう。しかし、用いようとしているのにそれを言わないのは、いったい誰の責任であるか。今後は、各自が誠意を尽くせ。もし私に非があれば、直言して決して隠さないように」(本書 巻二「任賢」より)
□「人の上に立つ者」のために書かれた□
太宗が死して60年余が過ぎ、国史編纂に携わる歴史家の呉兢によって編纂されたこの書物は、唐王朝が変革のときを迎えようとする時代にあって、貞観の治世を手本とするよう、当時の皇帝に上進されたものでした。
□日本人も古代から読み継いだ□
平安時代の日本にも伝わると、以来江戸時代を経て現代に至るまで、統治者の心構えを説く必読書として読まれ続けてきました。
徳川家康も明治天皇も読んだと言われる、「主君のための教科書」です。
□ビジネスの智恵として□
現代にも通じる、人材育成、組織統治、コミュニケーション術の要諦を説く一冊として注目されています。
□歴史学の眼で「全文」を読み解く□
『貞観政要』が描くのは「理想の君主」像だけではありません。
長く皇帝の座にあった太宗は、やがて怒りやすくなり、傲慢で贅沢になり、直言を嫌がるようにもなっていきます。
・なぜ編者・呉兢は、そのようなことまで記したのか
・唐王朝はいかなる歴史の中で築かれたか
・実像の皇帝・太宗はどのような人物であったか
歴史学者ならではの鋭い分析とわかりやすい解説で、本書の「本当の意義」を読み取ることができます。

 「経営」「戦略」「組織」等の参考文献となる中国古典としては、『孫子』と並んで、二大参考文献であろう。最近では、欧米の方でも、研究が進められている。

8世紀、呉競は皇帝の太宗と大臣達の対話を精選して、善き統治の鍵となると見なしていた。この対話の収集版は、それ以来、皇帝、政治エリート、一般読者の教育に用いられており、東アジアの政治思想における標準的な参考書となっている。統治に必要不可欠な話は、40の論題に細分されて、10巻で構成され、政治的な統一体・批判の提示とそれに対する受け取り・採用・帝国の一族の教育・政治的な美徳と悪徳から、権力を有する政治について考える中国の重要な主題に取り組んでいる。文化政策・農業・法律・課税・国境政策、そして災害と王朝の堕落を回避する方法等もある。その歴史的背景と世界的な受容への洞察を提供する紹介並びに詳解で著述されており、この入手可能で信頼性の高い翻訳は、中国の10名の知的な歴史学者を招致して、独自の体系化、調子、流れを維持する微妙な編成によって提供されてものです。

⒉『貞観政要』の読書感想

 自由主義・民主主義・個人主義がますます進んで行く中で、しかも、そもそも、もはや事実上、統治型の王制が存在しない日本で、このような「帝王学」やその書物は、もはや過去の無用の長物となってしまったのだろうか?
 圧倒的大多数の人々にとっては、「なったのだ。」という回答が正解であろう。しかし、自分にとっては、「なってたまるか!」という回答が本音であり、そして創造的な挑戦の証であろう。
 どうであれ、結局のところ、圧倒的大多数の人々は、社会生活を送っており、社会の一員である。個人主義の増進と、それによって、組織(特に政府や官僚、会社や団体等)に対する不信感や嫌悪感は、多かれ少なかれ、増えることであろう。それは、悲しき悪いことであり、同時に、とても良いことでもあるのだ。自分は、後者を促進させていきたい。
 だからこそ、思うに、「善い人財作り」が即ち「組織の革新的な改善や発展・進歩」、「善い組織作り」が即ち「個人の善き独立や自由並びに幸福の促進」に繋がる、そういう未来を創造していきたい。夢のまた夢であることは、現実である。しかし、志を以て挑戦していく。

⒊ 新たな哲学小説の発表

 現在、別の拙作のため、『アメリカ解放大戦争』の執筆は、四作品目へと変更して一旦中断し、二作品目『商量録』の著述に取り組んでいる。

00_アメリカ解放大戦争_戦争と平和の哲学小説(表紙)-1

00_商量録_徳の行商と時の推量(表紙)-1

 そして、三作品目は、『貞観政要』を精読・熟読・味読しては、深く創造的に研究して、それを批判的・発展的に学び受け継いで、以下の哲学小説を創作する。

00_卡斉政要_ポーランド革命戦争(表紙)-1

00_卡斉政要_ポーランド革命戦争(表紙)-2


 実は、この哲学小説の主要な三人の主人公の内、二名は、とある、自分がファンとして楽しく拝見させて頂いているユーチューバーさんが創り出したキャラクターである。明日、連絡を取って、感謝の言葉、そして、拙作の後書きを共同執筆して下さるかどうか、仕事依頼する。
 ユーチューバーさんの快諾と喜楽を得たならば、嬉しい限りである。
 第一作品目の拙作『愛国心 伯胡への書簡集』の増訂版もおかげさまで無事できた。さあ、二作品目の完成、そして、三作品目への取り組みに向けて、頑張るぞ!


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