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時を刻め 〜ローマの日時計屋〜

ローマのトラステヴェレ地区に、ちょっと不思議な店がある。

ショーウィンドウにはいろいろな日時計が並んでいて
箱型のものもあれば、アクセサリーになっているものもある。
中世やルネッサンス時代の日時計を再現したものや、
砂時計、地球儀などが並ぶPolvere di Tempo(ポルヴェレ・ディ・テンポ=時のかけら)という名の店。

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訪ねたのはずいぶん前のことだが、おそらくガイドブックかなにかで見て、どうしても行ってみたくて、トラステヴェレの路地にあるその店をめざしたのだと思う。
記憶のなかでは、宝箱のような秘密めいた場所・・になっている。

その店で、イルカと帆船の絵がついた箱型の日時計と、丸い日時計のペンダントを買った。ペンダントの裏には、Carpe Diem(カルペ・ディエム)というラテン語が刻まれている。

何年もたってからのこと、そのペンダントをして、あるセラピストの方を訪ねた。
なんの話をしたのかはもう覚えていないけれど、帰り際「ステキなペンダントですね」と言われたので、「カルペ・ディエムと彫ってあって、「時を刻め」というラテン語らしいです」と話すと、彼女は鳥肌をたてて腕をさすりながら、「ちゃんと必要な言葉を身につけてるんですね」と、つぶやいた。

それはまさに、その時の自分に必要な言葉で
時を刻め=今を生きよ
という意味で、
私は気づかないうちに、それを身につけていたのだった。

photo by KAORI K.(photofran)



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