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動物病院での犬と猫の病気:下痢(16) 食物アレルギーについて

千葉市で働く臨床経験17年目の獣医師です。

前回のnoteでは

膵外分泌不全

についてお話をしました。


今回は下痢につながる病気として

食物アレルギー

についてお話します。

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食物アレルギーとは犬や猫が食べた食物に自分自身の免疫が過剰に反応してしまうことで様々な症状が出る病気のことです。

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食物アレルギーの主な症状としては

痒みをともなう皮膚症状

があります。

皮膚症状以外にも下痢や吐き気などの消化器症状や、くしゃみや鼻水などの呼吸器症状が出ることもあります。

食物アレルギーの症状は「かゆみ」を伴う皮膚炎のイメージを持っているご家族も多いかと思いますが、実は何気に下痢などのお腹の症状が出ることも多いんです!

獣医学の成書によっては

食物アレルギーの子の約50%にお腹の症状も出てくる

と言われています。


食物アレルギーを疑われる子は主に以下の項目に当てはまることが多いです。

1歳未満の若い犬が多い。(ただしどの年齢でも出る可能性があります。)
・便の回数が多い
・季節に関係なくいつもかゆがっている
・顔回り、足先、脇、内股、肛門周囲などの特定の場所を痒がることが多い。


診断としては、

愛犬愛猫が「何に反応しているか?」を調べるアレルギー検査があります。

以前よりアレルギー検査では、環境性アレルギー食物性アレルギーの両方を調べることが出来ましたが、最近では食物アレルギーだけに起こる免疫反応も調べられるようになっています。

そのことから私は、

『何が原因なのかをしっかり知りたい!』

『手作り食をしているので、安全に食べることが可能な食材を知りたい!』

というご家族にはアレルギー検査をお勧めしています。


ただしアレルギー検査は費用がそれなりにかかるのと、結果が出るまでの日数がかかるため、

まずは治療を優先していきたいというご家族には「除去食試験」をお勧めしています。

除去食試験とは、愛犬や愛猫に反応しないようなフードを与えてみて症状が和らぐかを確認する試験です。


ここで一般的なお話をすると

愛犬や愛猫の今の体は約1か月前に食べたものでできています。

そのためフードを変えてすぐには皮膚の痒みやお腹の症状を和らげることはできません。

今まで食べていた食べ物により皮膚や腸の粘膜も弱い状態になっていることがあるからです。


除去食試験を実施する場合は、最低1か月間、通常は2か月間その除去食試験のフードと水だけを与えるようにして、皮膚の痒みやお腹の症状が和らいでくるかを確認します。

除去食試験のフードと水だけを与える理由としては、

途中でおやつなど別のものを食べてしまうと、そのおやつにもしも反応してしまうとせっかく除去食試験を実施していてもしっかり効果が出ているかが判定できないからです。

除去食試験を最低一か月は続けるとお伝えしましたが、経験上2週間ぐらいでも実際症状が和らいでくるケースは多いです。

そしてそのフードが愛犬、愛猫の体質に合うと判断されれば、除去食試験用のフードを与えている状態で、おやつなどの別のものを一種類ずつ試しに与えていき、そのおやつを加えても症状が出てこなければそのおやつも食べてOKと判断できます。

そのようにひとつひとつの食べ物で同じ方法を繰り返すことにより、愛犬愛猫に合う食べ物かを判断していくことができます。

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「食物アレルギー」については、また後にこのnoteで皮膚病のお話しをする機会に改めてお話していきたいと思っています。


最後になりますが、今回は下痢のシリーズの中で、「食物アレルギー」についてお話をしているので、

この下痢の子は「食物アレルギー」かもしれないと疑う私なりのポイントをお伝えします。

それは 

1歳未満の若い子で皮膚のかゆみと下痢を繰り返している子

になります。

参考にしてください。

以上で今回のnoteは終わりにしたいと思います。


次回は、『ご自宅でできる下痢の対処方法』についてお話しします。

よろしくお願いいたします。


続く


参考文献
・犬の内科診療Part3
・犬の治療ガイド2020


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