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動物病院での犬と猫の病気:下痢(8)  下痢の診断方法について① 問診と身体検査

千葉市で働く臨床経験17年目の獣医師です。

前回のnoteでは

小腸性下痢と大腸性下痢の原因

について解説をしました。

今回より何回かにわたり
私が実際行っている動物病院での下痢の診断方法について

についてお話をしたいと思います。

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動物病院に下痢をしてしまった愛犬愛猫がやってきました。

まずは動物の顔色や呼吸状態などの見た目の様子を確認し、緊急性がないと判断されれば通常の診察を始めていきます。

(緊急性がある場合はゆっくり診察しているとそれだけ病態が進行するかもしれないので、早急にできる治療から始めていきます。)

1. 問診
まずは問診にて
ご家族に愛犬愛猫が下痢になったきっかけや今の症状などを確認します。

この際はご家族としては以前お話ししたご自宅での愛犬愛猫の情報を集めておいてもらうとスムーズに問診が進みます。

そしてこの問診によって獣医師はさまざまな下痢につながる病気の中から可能性の高い病気を絞り込んでいきます。

一通りご家族から情報を得られたら、次は実際に愛犬愛猫の身体検査を行っていきます。


2. 身体検査
下痢が主訴で動物病院に来ていますが、毎回他の病気の見逃しがないように顔から尻尾まで全身を診ていきます。視診、聴診、触診など獣医師から発見しうる病気のサインを探っていきます。

下痢の際は、触診にてお腹のガスがたまっているか?腹部痛があるか?脱水があるか?などの情報が得られます。


少し話が脱線しますが、
私はいずれご自宅でもできるような病気のサインを見つける方法をこのNOTEでお伝えしていきたいと思っています。

そのため今回はせっかくなので下痢の時にも役に立つ、ご自宅でも簡単にできる脱水の評価方法についてお伝えしようと思います。


★脱水の評価方法(皮膚つまみ試験)

皮膚の弾力性を利用して脱水の有無を評価する方法です。

皮膚に余裕のある背中(特に肩甲骨の間がお勧めです!)を軽く指でつまみ引っ張り上げます。その指をはなしてどのくらい速く元の位置に戻るかを調べることで皮膚の弾力性が分かり、それにより脱水の有無を推定することが出来ます。

目安としては若い犬猫では指を離すと皮膚はほぼすぐ戻ります。(目安0.5秒以下)
高齢の犬猫では異常ではなくても1秒ほどはかかります。

そして脱水があるとその皮膚の戻りが2秒以上になることがあります。

ただしこの皮膚つまみ試験の注意点としては栄養状態が悪い場合にも、脱水の有無とは関係なく皮膚の弾力性が低下することがあります。


以上が簡単な説明ではありますが、ご自宅でもできる脱水の評価方法になります。

私としてはこの検査をご家族が実施する際は、1秒とか2秒以上などと厳密な秒数にこだわらず、まずはご自宅の愛犬、愛猫が元気な時に背中の皮膚をつまんでみてどのくらいの速さで元の状態に戻るかを確認してみてください。

それが非常に大事だと思います!

日々の生活で愛犬愛猫を撫でる時などにたまに皮膚をつまんでみて、その戻る感覚をぜひ覚えておいてください。

そうしておくことで実際に愛犬愛猫が具合悪くなったときに、その感覚がとても役に立ちます。

同じ位置で同じように背中の皮膚をつまんでみたときにいつもと同じぐらいの時間で元の状態に戻るか、それとも元に戻るまでいつもより時間がかかっているか?
その感覚が普段から身に着いていると、いざというときにその異常に気が付くことが出来るはずです。

参考にしていただければ幸いです。


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今回は少し長くなってしまったので、下痢の診断の続きはまた次回よりお話ししようと思います。


つづく




参考文献:
犬と猫のフィジカルアセスメント
小動物の問診と身体検査

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