端|牛の獣医師

牛の獣医師(1年目) 勉強したこと、経験したことについて発信できればと思ってます!

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最近の記事

「カルシウム」&「リン」のシーソーみたいな関係 part1

今回からはカルシウム(Ca)とリン(P)の関係について紹介します。 タイトルのとおり、体内においてCaとPはシーソーのような関係になっています。 Caが高くなると、Pが低くなります。一方Caが低くなると、Pが高くなるのです。 なぜ、このような関係になるのか、そして牛の飼料における応用の話まで紹介する予定です。 まず、今回はパラソルモン(PTH)というホルモンに注目しましょう! PTH編です!! PTHは副甲状腺から分泌され、骨と腎臓に働きかけます。 そして以下の機序によ

    • 論文「暑熱環境が黒毛和種去勢肥育牛の飼料摂取量,発育,血液成分および飼料消化性に及ぼす影響」 part4

      今回も、以下の論文に関しての記事になります。 特に、暑熱による血液成分に及ぼす影響についてです。 暑熱と血液成分の関係について、1981年に以下のように報告されているようです。 血液成分の増加 熱放散による血中水分の減少→血液濃縮→血液成分の増加(みかけ) 血液成分の減少 飼料摂取量の減少&消費エネルギーの増加→血液成分の減少 暑熱により、血液成分は増加したり、減少したりするってことです。 なるほどです。 さて、今回の調査結果はどうだったのでしょうか。 以下が結果に

      • 論文「暑熱環境が黒毛和種去勢肥育牛の飼料摂取量,発育,血液成分および飼料消化性に及ぼす影響」 part3

        今回は、論文中の暑熱環境と肥育牛の発育の関係についてです。 早速、結果を見てみましょう! ステージごとの結果は以下のとおりです。 肥育前期:暑熱によりDG・飼料効率が有意に低下 肥育中期:有意差なし 肥育後期:暑熱によりDG・飼料効率が有意に低下 前期と後期でDGと飼料効率が低下したのは、暑熱によるエネルギー消費の増加と飼料摂取量の減少によるものとのこと。 一方、中期で暑熱による影響が出なかったのは、ビタミンAの制限による影響が大きいためと考察されていました。ビタ

        • 冷却輸液で熱中症治療?

          今回は熱中症治療についての記事です。 うちの診療所は熱中症の症例に対しては、基本的には氷水の経口投与をしています。これがメインウェポンです! そして、サブで補液(重曹とか)や強肝剤投与を実施しています。 ここで、私は考えました。 サブで実施している補液で体を冷やして、メインにできないのかなと、、、、 そこで冷やし補液(輸液)について、少し調べてみました。 すると、以下の報告が見つかりました。 輸液を用いた冷却方法の検討 一輸液ポンプを用いた輸液冷却を試みてー http:

        「カルシウム」&「リン」のシーソーみたいな関係 part1

          論文「肥育牛の栄養と感染症」 part4

          この論文に関しては、最後の記事になります。 https://www.kachikukansen.org/kaiho2/PDF/1-2-059.pdf 論文の最後に、ビタミンAなど以外の肥育牛において免疫に関与する要因について、紹介されていました。以下がそれになります。 牛舎内肥育(アンモニア濃度etc) 肥満 ビタミンC低下・ビタミンE過剰 飼料中の食物アレルゲン 牛舎内肥育というのは、納得です。例えば、風通しの悪いような牛舎構造であれば、環境中アンモニア濃度が

          論文「肥育牛の栄養と感染症」 part4

          牛のキャスト固定2

          前回、大学で学んだことをメモしたのですが、今回は「日本獣医師会」のサイトに、キャスト固定について少し記載があったので、紹介します。 用意するもの ゴム手袋 ストッキネット 綿ロール 幅10cmくらいの弾力性包帯(べトラップ的な?) 微温湯 プラスチックキャスト ドライヤー(寒冷期) 他にもギプスカッターとかも入ってましたが、とりあえず、上記のものがあれば良さそうな感じがしました。(有窓とかにしたいときに使うのかも) 手順 骨折近位関節上位から蹄尖までスト

          牛のキャスト固定2

          論文「肥育牛の栄養と感染症」 part3

          続いて、論文中のビタミンAと免疫について、紹介します。 https://www.kachikukansen.org/kaiho2/PDF/1-2-059.pdf ビタミンAは肥育牛において、かなり重要視されています。 というのも、ビタミンAは脂肪細胞の分化に関与していると言われており、肥育牛においてはビタミンAをコントロールする場合があるからです。 (現在は諸説あります!) 一方で、ビタミンAは、免疫においても非常に重要な働きをしています。 具体的には、以下のメカニズム

          論文「肥育牛の栄養と感染症」 part3

          牛のキャスト固定

          今日は、少しだけ牛のキャスト固定について、メモします。 というのも、牛の骨折治療のメインとなるのが、外固定。 特に、キャスト固定だからです。(超便利!) 大学でも、キャスト固定の実習があり、その時のうろ覚えの知識だと、、、 骨折部位の整復 ストッキネット(自信あり) ブルーラップ(自信なし) べトラップ(自信なし) プラスチックキャスト モールディング の順番で、行っていたと思います。 そして、キャストの端で皮膚を切ることがあるため、プラスチックキャストの端を

          牛のキャスト固定

          論文「暑熱環境が黒毛和種去勢肥育牛の飼料摂取量,発育,血液成分および飼料消化性に及ぼす影響」 part2

          今回は、暑熱による飼料摂取量等における影響についてです。 まず、以下の表を御覧ください。 この調査では、肥育ステージに分けて暑熱の影響を調査されています。 それでは、飼料摂取量とTDNにおける影響をみてみましょう! 飼料摂取量における暑熱の影響 暑熱により、、、 肥育前期で、飼料摂取量が減少傾向 肥育中期で、飼料摂取量が有意に増加 肥育後期で、飼料摂取量が有意に増加 との、結果になったようです。 やはり、暑熱により、飼料摂取量は落ちる傾向にあるようですね。

          論文「暑熱環境が黒毛和種去勢肥育牛の飼料摂取量,発育,血液成分および飼料消化性に及ぼす影響」 part2

          論文「Usefulness of Measuring Serum Amyloid A Concentration in Japanese Black Cattle in Clinical Practice」

          黒毛和種牛の臨床例において、SAAを測ってみました!という論文。 https://www.mdpi.com/2306-7381/10/8/528 SAAとは、急性期蛋白質の一種で、炎症のマーカーとして使われています。 小動物領域では、普及しているイメージです。(主に猫ちゃん?) 私が実習していた、大学の動物医療センターでは、目にする機会はかなり多かったです。 近年は、SAAを牛で測定する試みがなされているようですね。 この報告の中で、個人的に強く興味をもったのは、こちら

          論文「Usefulness of Measuring Serum Amyloid A Concentration in Japanese Black Cattle in Clinical Practice」

          論文「肥育牛の栄養と感染症」 part2

          前回紹介した表には、「ビタミンA過剰及びE過剰で免疫が低下」というニュアンスのことが書かれていました。 これについて、その後調べてみたのですが、詳細な機序等についてはわかりませんでした、、、、、 この論文中においても、詳しいことは述べられていませんでした。 しかし、こういった文が書かれていました。 つまり、ビタミンAとEに関しては、絶対量だけでなく、相対的な量(比)も重要であるのかもしれません。(聞いたことないです、、、笑) こちらに関しても、もう少し調べてみようと思い

          論文「肥育牛の栄養と感染症」 part2

          体構成が養分要求量に及ぼす影響 part1(日本飼養標準2022)

          牛の栄養について、勉強しようと思い、肉用牛の日本飼養標準2022を購入しました! 今回は日本飼養標準より、「体構成が養分要求量に及ぼす影響」について、紹介します。 まず、体構成は以下の化学成分で占められています。 水分 タンパク質 脂肪 炭水化物 灰分 これらの化学成分のうち、炭水化物は構成比率が低く、灰分はエネルギー的に重要ではありません。 そのため、重要視されるのは「水分」「タンパク質」「脂肪」の3つです。 つぎに、体構成とエネルギーの話をするに当たり、

          体構成が養分要求量に及ぼす影響 part1(日本飼養標準2022)

          論文「暑熱環境が黒毛和種去勢肥育牛の飼料摂取量,発育,血液成分および飼料消化性に及ぼす影響」 part1

          今回、紹介する論文は、こちら。 暑熱環境と牛の飼料摂取量などに関する論文です。 私が診療するエリアも、夏場はかなり暑いため、気になる話です。 まずは、Introductionから。 暑熱に関しては、乳牛における影響に関しては調査が進んでいるようです。 暑熱により、乳牛においては、以下の影響が出ると報告されています。 飼料摂取量の減少 発育の停滞 乳量の減少 個人的にも、乳牛は熱に弱い印象があります。 だから、比較的涼しいエリアが、酪農が盛んな気もしますよね。北海

          論文「暑熱環境が黒毛和種去勢肥育牛の飼料摂取量,発育,血液成分および飼料消化性に及ぼす影響」 part1

          暑熱対策の事例 part1

          夏になり、緊急で往診することが増えました。 そう、「熱中症」です、、、、、! 牛にとって、暑熱は大敵です。 というのも、牛はルーメンと呼ばれる、大きな発酵タンクをもっており、そのルーメンがめちゃめちゃ熱を作っているのです。他にも、様々な理由があるのですが、とにかく暑さには弱いのです。 暑熱により、熱中症とまでいかずとも、食欲の低下などにより生産性が落ちてしまいます。(諸説ありますが、ルーメンでの発酵熱を抑えるためとも言われています。) これは、牛の健康だけでなく、農家さん

          暑熱対策の事例 part1

          論文「Pain evaluation in dairy cattle」 part 1

          時間のある時くらいは、英文を読もうと思い、読みました。 もともと、牛の歯ぎしりについて、調べていたら辿り着いた論文。 タイトルは「Pain evaluation in dairy cattle(乳牛の疼痛評価)」です。 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168159115002269 疼痛の評価・緩和というのは、動物福祉の観点からも非常に重要です。しかし、客観的な評価というのは難しいと、個人的には思っ

          論文「Pain evaluation in dairy cattle」 part 1

          論文「肥育牛の栄養と感染症」 part1

          初投稿です。 普段勉強したことについて、発信できればと思い、興味本位でnote始めました笑 初投稿は論文紹介です。 論文はこちら 肥育牛の栄養と感染症 ―飼養管理と免疫の関連性を探る― https://www.kachikukansen.org/kaiho2/PDF/1-2-059.pdf まず、読んでみて驚いたのは、こちらの表。 ビタミンA過剰で「T細胞機能低下」、「抗体産生低下」 ビタミンE過剰で「抗体産生低下」 と、書いてあるではありませんか、、、! 普

          論文「肥育牛の栄養と感染症」 part1