マガジンのカバー画像

『フミオ劇場』まとめ

20
昭和初期生まれ“めちゃくちゃ系父“のエピソードを小説風連載にしたものです。 家族が被った数々のネタを書き残しておこうと、昨年よりnoteで始めてみました。 80%実話で、20%…
運営しているクリエイター

#スキしてみて

フミオ劇場 5話『ワシは柔道なろてたんや』

フミオ劇場 5話『ワシは柔道なろてたんや』

昭和49年頃のこと。

 スケートボードの大ブームが起きた。

 小学生の間でも、スケボーを持っているとか、スケボーに乗れると言う子が、ちやほやされた。

 この物語の主人公フミオの子供たちは、持っていなかったのだが、その日フミオの8歳の息子、和彦がスケートボードを抱えて帰ってきた。

「姉ちゃん見て見て! スケートボード! 友達が貸してくれてん!」

 玄関で叫ぶと3つ上の姉、樹里と、その友達

もっとみる
フミオ劇場  10話『100円玉を探せ!』

フミオ劇場  10話『100円玉を探せ!』

 昭和51年頃

 テーブル型ゲーム機が
 各地の喫茶店に置かれ始めた。

 初代はブロックくずしだ。

 フミオの妻、三枝子の喫茶店にも
 さっそく1台が設置された。


 自宅が喫茶店🟰自宅がゲーセンとなる。

 子供にとっては
 パラダイス天国楽園。

 しかし誰より驚喜したのは
 大人代表フミオだった。



「貯金箱から100円玉、持ってこい」

 子供たちに命じる。

もっとみる
初恋やったら何してもええのんか?

初恋やったら何してもええのんか?

初恋の相手は中学の同級生、それはよくある話だが、その子の名前をまるッと娘に名付けた男がいた。

しかも、妻や親兄弟ほか誰にも知られることなく、姓名判断の本を熟読するふりをしながら、
自然な流れで命名していた。

犯人は自分の父だ。

中学生の頃、部屋で宿題をしていると父が入ってきた。

焦げ茶色の古いアルバムを抱えている。

「お、おったか。これワシの中学の卒業アルバムや」

「中学の? ふ~ん。

もっとみる
フミオ劇場  15話『大女優はみんな』

フミオ劇場  15話『大女優はみんな』

昭和40年あたり。銭湯はひとつの社交場。フミオの父雄吉も二人の孫を連れて、毎日のように通った。

息子の嫁さんが少しでも休めるように。そんな温かい人柄の爺さんだった。

まだ生後三ヶ月程の和彦の身体を丁寧に洗い、脱衣所の床にバスタオルを敷いて手早く拭く。それからてんかふ(ベビーパウダー)おむつ。

赤ん坊を風呂に入れるのは、母親でもひと苦労。爺さんはお湯でさっぱりしたにも関わらずすでに汗だくだ。そ

もっとみる