失ったモノを数え上げればキリが無し、最初から持っていなかったと思えばそれでヨシ
実は、満開のサクラが苦手だった。
春にはあまり良い思い出がないせいだろうか。
咲き誇るサクラを前にすると、なんだか気後れしてしまう。
社会人3年目に倒れて救急車で運ばれたのも春だった。
願わくば、あそこから人生をやり直したいと何度思ったことか。
1度人生ゲームから脱落しようものなら、同じ場所には戻れない。
いつも孤独と焦燥感を抱えたままだった。
今でも艱難辛苦を乗り越えられたわけではない。
ただ、その苦しみは己が作り出したものではないだろうかと、亡き恩師の言葉を思い出しながら、ふと考えた。
「自分が納得すれば、それでいいの。」
必死で取り戻そうとしていたモノは、最初から持ち合わせていなかった。
「あったかもしれない」人生なんて誰も知る由もない。
誰かと比べるための人生じゃない。
自分の人生、生きたいように生きればいい。
少しだけ肩の力が抜けた。
今年の春は少しだけ素直にサクラを見上げることができたような気がする。
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