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foodskole農園部日誌 20年度の振りかえり

〇顧問より

こんにちは。foodskole(フードスコーレ)校長、そして農園部顧問の平井巧です。

突然ですが、みなさんは「人参の芽」を見たことありますか? あの「人参」自体はもちろん見たことも食べたこともあります。だけど40年近く生きてきて、これまで「人参の芽」を一度も見たことがありませんでした。

foodskole農園部の畑では、撒いた種が育って芽が顔を出すと、決まって部員の中で「こういう芽なんだー!」という声があがります。育てているのはスーパーで並んでいるような野菜ばかりにも関わらず、その野菜が萌える姿については知らないのです。

芽どころか、土の作り方、種の撒き方も知らない。そして芽がどうやって成長して、どんな形の葉を蓄えて、どんな色の花を咲かせるのかも知らない。頻繁に食べている野菜のことでも、実はほとんど何にも知らないことに気づかされます。

畑ではいつもこうしたことに愕然としますが、同時にかなりワクワクした気持ちも出てきます。野菜作りの素人である僕らは、そのいちいちが発見で、知らなかったことに触れることが楽しくて仕様がないのです。

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食の学び舎「foodskole」の農園部は、東京八王子にある「磯沼ミルクファーム」さんの畑をお借りして、月に2〜3回、多い時はそれ以上に集まり、部員みんなで野菜を育て収穫することを続けています。

2020年秋から始まった農園部。2021年3月末までの活動を区切りとして、4月からはfoodskoleも新学期がスタート。これを書いている2021年5月の時点で、農園部も新しい部員を迎えてすでにスタートしています。発足から一区切りしたところですので、今回の日誌では、いつもと少し内容を変えて、これまでの振り返りを書きたいと思います。

農園部は、受講生以外の方もどなたでもいつでも入部可能ですので、この日誌をきっかけに、野菜作りや畑に興味もっていただけたら、ぜひ農園部を体験しにいらしてしてください。どなたでも大歓迎です。

・foodskole農園部の発足

農園部を始めたきっかけは、2020年夏に行った遠足でした。新型コロナウィルス感染症によって、色々なことの自粛を求められ、人と会う機会はオンラインが中心。パソコンやスマホの画面越しにでも人と話せるということに、ありがたさを感じていました。

一方で、生身の人と話したいという欲求も出始めていたような気がします。当時は、みんなが慣れない極端な自粛生活を強いられて、気持ちが滅入っていたと思います。

私もそうでした。感染対策を徹底し、三密を避ける形で、なんとか野外で体を動かし、人と交流できる方法はないか。そんなことをfoodskole運営委員会の中でも考えて、東京八王子にある「磯沼ミルクファーム」さんへ遠足に行こう!と計画を立てました。

青空の下、しゃがんだり背伸びして汗かきながら収穫したたくさんの野菜たちを、そのままかじったり、焼いて調理して食べる。そうした体験を通して、もっと野菜作りやってみたいな!と思ったfoodskole生のみなさんや僕らは、その体温そのままにすぐに「農園部」を設立することにしました。

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農園部には、色々な人が集まっていますが、それを引っ張るのが農園部部長の下村宗大さんと、副部長の久世哲郎さん。普段はみんな「下村くん」「てつくん」と呼んでいるので、ここでもそう書きたいと思います。

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下村くんは、とにかく好奇心旺盛。農園部で何かを始める「きっかけ」をいつも持ち込んでくれます。まわりの笑顔を誘う愛されキャラでもあります。

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てつくんは、しっかりもの。部員の中では年齢が下の方にも関わらず、何か困ったことがあれば、みんながてつくんを頼ります。書くことが好きで得意なてつくんが、農園部の日誌の管理を担当してくれています。

この2人がまとめ役となって、他にも、学生さんから社会人、年齢もバラバラの個性豊かなメンバーが集まっています。いつもお子さんを連れて参加するメンバーなど、家族や友達を連れて参加する部員もいます。

そして部員の他にもうひとり、大切な方をご紹介。野菜作りに関しては素人な僕らが、ちゃんと農作業を続けられているのは、農業のプロである「畑会」のフナキショーヘイさんにイロハを教えてもらっているからです。

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フナキさんとは、同じ東京農業大学の非常勤講師として出会ったのがきっかけで、そこから色々とご一緒させてもらっています。前述の遠足を計画したときに、まっさきに相談したのがフナキさんです。いつもニコニコ、笑顔が素敵なフナキさん。僕らに農業に関する知識と、やりたいことをできるだけ叶えてくれる優しさを、いつも提供してくれています。

野菜の収穫時期には「収穫祭」と称して、採ったその場でみんなで料理して、おいしく食べるイベントをやってきました。初めてつくる野菜は収穫のタイミングを測るのがむずかしく、収穫祭の日程を決めるのさえ一苦労ですが、そんなことさえ、みんなで悩むことが楽しいです。

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・ひとりじゃないから、チャレンジできる

農園部にいる部員は、みんな畑の素人なんです。それはみんな自覚しています。野菜作りのこと、ほとんど何もわかっていません。でもだからこそ、いつも発見があるし、心動いた時に共有する仲間が近くにいます。

部活動は土曜日曜など、仕事や学校の休日に集まることが多く、集合が朝早いことも多いです。でもこれまでの活動を振り返ってみると、それを苦にするどころか、みんななんだか楽しそう。畑に集まってから、「あれ?今日やることあまりないね」なんて日もあります。これすごいと思うんです。

本来、こういういわゆるコミュニティ活動って、目的がしっかりあって、何をするか計画立てて進めていくと思います。そうあるべきなんだと思います。だけど僕ら農園部には「それ」がない。なくはないけど、ほとんどないです(笑)。

集まって活動することが無目的とも言えるのかもしれなくて、これは実は究極のコミュニティ活動なのでは?と最近感じています。ただ楽しいから、そこに参加すれば何か起きそうだから。そんなことで所属するコミュニティ。もしかして農園部ってすごい集まりなのでは。

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ひとりだとなかなか始められないことも、何人かで集まるとできることもあります。この農園部も、そんな理由ではじまりました。野菜作りをやってみたい、土に触れたいけど初心者だし自分ひとりで何から始めたらよいのかわからない。そんな人たちが今でも農園部に参加してくれています。

自分で育てた大豆できな粉を作りたい!ということで大豆を育てる計画を立てたり。自分たちで育てた野菜を使って夏にカレーを食べたいとか。結構みんな、わかりやすい理由で楽しみながら野菜を育てています。

あまりむずかしいことは考えずに、やりたいことを誰かに話してみて、じゃあやってみようか!なんて実行に移せる場所。それがfoodskole農園部だと、振り返ってみてあらためて思えました。


〇編集後記

これまでfoodskole農園部日誌の編集を担当してきた、てつです。ここまでの日誌を振り返ります。

この日誌を始めたきっかけは、興味のあった”編集”を通して農園部を盛り上げることができないか、顧問の平井さんに相談したことでした。
そこで考えたのが、ただぼくがひとりで記録していくよりも、なるべく多くの部員を巻き込んでいくほうが、おもしろいものになりそうだ、ということ。そう思ったのは、この活動が「ゆる~く楽しく食を学ぶ」というなんとも曖昧なモットーで始まったから。

明確なビジョンがあるわけではないこの曖昧さが、多様な人たちを結び付けている。参加理由もまた多様。だとしたら、それぞれが見ている農園はきっと違うことだろう!
平井さんと農園からの帰り道で編集の話をしていたときに、この”無目的性”のおもしろさを感じさせられたのです。

そのため、編集をすると言っても、誰でも書きやすくするための基本的なフォーマットを決めるのみで、文体やスタイルなどはあえて個人に任せ、それぞれの個性を引き立てられるように意識しました。

これまで半年ほど続けてきて、本当にそれぞれの日誌が、”味”のあるものになったと思っています。まるで農園で育てた野菜みたい。プロの文章ではないので、スーパーには出せないような、いびつな(だけどおいしい)野菜って感じでしょうか(笑)。けれど、どの日誌も本当に栄養満点で味わい深いんです!

21年度の活動でも、こうして個性的な野菜をじっくり育てていくように、それぞれの視点だからこその気づきを記録していきたいです。そしてそれぞれに味のある日誌が、お互いの学びにつながったら、それはまるで異なる食材を生かしておいしい料理を作ることのようですね。
そんな手助けができたら嬉しいな、との期待を込めて、これからもゆる~く、この日誌を続けていきます。

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