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夏目漱石「行人」考察

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夏目漱石「行人」考察です。「行人」はスパイファミリーである?
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#二郎

(修正)夏目漱石「行人」考察57 二郎が見た「あの女」は別人?

(※ 以前に投稿した記事の修正です)

夏目漱石の大正元年(1912年)連載開始の小説「行人」

前半、「あの女」と呼ばれる芸者が、胃を悪くして三沢と同じ大阪の病院に入院する。

この「あの女」と三沢との関係については前にも書いた。
私の推測では、三沢は「あの女」から嫌われている。二郎から借りたお金(その元手は岡田→さらに綱(長野母))で、愛嬌を買った。

つまり金で美女の愛嬌を買うしかなかったエ

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夏目漱石「行人」考察57 芸者「あの女」は実在しない?

夏目漱石「行人」考察57 芸者「あの女」は実在しない?

(※ この記事を修正しました。以下)

夏目漱石の大正元年(1912年)連載開始の小説「行人」

前半、「あの女」と呼ばれる芸者が三沢と同じ病院に入院する。
しかしここで注意すべきは、二郎は入院後の「あの女」を、一度も見てはいないのである。
しかも、二郎が病院の階段から見掛けて「あの女」だと思っている女は、「あの女」ではない可能性が高いのである。

1、入院後は一度も見ていない

1(1)二郎の目

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夏目漱石「行人」考察56 マジョリカ皿

夏目漱石「行人」考察56 マジョリカ皿

(画像はヴィクトリアアンドアルバート博物館)

夏目漱石の大正元年(1912年)連載の小説「行人」

この中で主人公兼語り手:二郎は、芸術方面について鑑識眼に乏しく、知ったかぶりをしては間違えることを繰り返している。

1、二郎の知ったかぶり
以下、二郎の知ったかぶりを列挙する。

1、和歌の浦の宿で蚊帳について

2、東京の自宅に帰ってから、長野父の朝顔いじりについて

3、「謡」に関するお重の

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夏目漱石「行人」考察(23) 物語開始以前の時系列(概要「兄」)

夏目漱石「行人」考察(23) 物語開始以前の時系列(概要「兄」)

夏目漱石「行人」のうち、「兄」における、物語の開始前の出来事や、リアルタイム進行の少し前に生じていた出来事、背景について書いておきます。

(※ 著作権切れにより引用自由です。)

1、「兄」における「物語開始以前の出来事」
・二郎が東京から発つ前に、「母の持っていた、ある場末の地面」が買い上げられる → 二郎が母(お綱)に、「じゃその金でこの夏みんなを連て旅行なさい」と勧めて、「また二郎さんのお

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夏目漱石「行人」考察(52)二郎の和歌山滞在(9日)

夏目漱石「行人」考察(52)二郎の和歌山滞在(9日)


夏目漱石の小説「行人」

前回の記事で、綱(長野母)らが合流するまでの、二郎の旅行日数を勘定した。
ちなみに23日間となった。

今回は、綱らの合流以降の宿泊数を数える。

1、大阪滞在(3日)

まず、綱らは宿に一晩泊まったと思われるが、やや曖昧である。

読み取ると、綱らが大阪に来た初日の出来事は以下のとおり

・二郎と岡田夫妻がお出迎え→ 岡田が予約しておいた宿まで案内→ 岡田夫妻一旦帰宅

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夏目漱石「行人」考察(51)二郎の大阪旅行日数(23日)

夏目漱石「行人」考察(51)二郎の大阪旅行日数(23日)



夏目漱石の大正元年(1912年)連載開始の小説「行人」。

いまさらながら二郎の旅行について、客観的事実を確認したいと思ったので勘定する。

1、大阪以前(5日間)(※ 著作権切れにより引用自由です。)

ここから考える。前提として二郎は東京在住である(この時の三沢は違うのか? 諏訪から「引返して」木曽?)。

・三沢との「約束」は一週間前。出立日が不明であるが一週間以内であることは確かか。

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夏目漱石「行人」考察(50)拝啓の啓の字

夏目漱石「行人」考察(50)拝啓の啓の字


夏目漱石の大正元年(1912年)連載開始の小説「行人」

例によってこの中に、謎の一節が出て来る。

1、拝啓の「啓」
二郎が実家を出て下宿する旨の挨拶を父親にする場面

この流れの意味がよくわからない。
二郎の書く「拝啓」の啓が間違っていると。

2、二郎の手紙
とりあえず長野父はどこで二郎の書く「拝啓」を見たのかを考えると、物語序盤、大阪で岡田宅滞在中の二郎が実家宛てに手紙を出す場面がある。

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夏目漱石「行人」考察(44)時系列(裏設定)

夏目漱石「行人」考察(44)時系列(裏設定)

これまで、「行人」に関する好き勝手な考察を書いてきた。
思いついた裏設定と書かれていることを含めて、とりあえず時系列をまとめてみる。

一、40年~35年前(この「一」はすべて私の推察)

・綱(長野母)がある男と関係を持ち、一郎を妊娠、出産
・その男とは身分差で別れる。
(その男は「精神病の娘さん」の家族か親族、「築地」つながり)

・綱が男と別れてしばらくした後に、長野父と結婚
・長野父は長野

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夏目漱石「行人」考察(43)長野父の名は「一郎」

夏目漱石「行人」考察(43)長野父の名は「一郎」



大正元年(1912年)連載開始の夏目漱石「行人」

主人公:長野二郎の父親は、何故か下の名が示されない。
これについて考察していきたい。

1、「平吉」ですら名前がある

父以外の長野家の人間は全員名前がある、綱・一郎・直・二郎・重・芳江。下女も貞である。芳江以外は名に意味がありそうな漢字である。

ついでに言えば一度だけ、しかもいきなり登場する下男らしき人物ですら名が明かされている。

(※

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夏目漱石「行人」考察(42)直は二郎と再婚?

夏目漱石「行人」考察(42)直は二郎と再婚?

1、手法は「坊っちゃん」「こころ」と同じ

夏目漱石の大正元年(1912年)連載開始の小説「行人」。

この小説の語り手:長野二郎はリアルタイムでの感想を述べているのではなく、物語記載の出来事がすべて終わり、そこから数か月~数年経過した後の述懐であることは、何度か述べた。
かつ、その回想は第三者に公開もしくは他者に見せる前提で記されていることや、二郎は「信頼できない語り手」であることも述べた。

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夏目漱石「行人」考察(41)二郎と直は共犯

夏目漱石「行人」考察(41)二郎と直は共犯


夏目漱石「行人」。和歌山で一郎が二郎にやらせた直と二人での外出。
これについて、直も二郎も、色々と見切っていたと思える。

1、二郎と直の共同制作?
一郎と綱が出掛け、二郎と直が二人きりになって最初の会話

(※ 著作権切れにより引用自由です。)

元々出掛ける予定であるところにいきなり、「どうです出掛ける勇気がありますか」と聞いている。今から危険を伴う探索にでも出るかのようだ。

一応当日の天

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夏目漱石「行人」考察(40)二本目の敷島

夏目漱石「行人」考察(40)二本目の敷島



夏目漱石「行人」。和歌山の夜で嫂:直と二人きりになった二郎。

前回の記事で、「翻弄されてるように見せかけて実は二郎は冷静では」と推察した。

そう思うますます二郎が冷静に見えて来る。

1、煙草のけむり

1(1)折れた敷島の吸殻で二郎のうそはわからない

蚊帳の中で直が再度、死について語る。より自殺願望めいたものを強めに出す。

(※ 著作権切れにより引用自由です。)

私は前に、自死をめ

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夏目漱石「行人」考察(39)「大抵の男は意気地なしね」は強がり

夏目漱石「行人」考察(39)「大抵の男は意気地なしね」は強がり



夏目漱石「行人」。主人公:長野二郎の嫂(兄嫁)である「直」。

二郎と二人きりで泊まることになった暴風雨の和歌山の夜。
どうも二郎が直に翻弄されているように見せかけているが、実は落ち付いているのではと思い始めた。

1、実は二郎は冷静?
暴風雨の夜、宿が停電する。それが一瞬直って明るくなり、と思ったらまた停電で暗くなる。

ここで「白粉(おしろい)」と「クリーム」との取違えはなんなのだろうか。

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夏目漱石「行人」考察(28)直は綱の親族

夏目漱石「行人」考察(28)直は綱の親族

夏目漱石「行人」、長野家に嫁いできた嫁である直。
私は前回の記事で、以下の推察をした。
・長野家よりも直の実家のほうが勢力が強い
・あるいは長野家が分家、直の実家がその本家

今回はそれに加えて、さらに次の推察をしたい。
・直と長野母(綱)とは、元々親族

1、不満が強いのに嫁いびりをしない姑・お綱1(1)綱の直への不満

一郎と直との夫婦関係が不仲・対立的であることについて、綱は直に向けての不満

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